【市況レポート】「トランプ関税政策が招く経済秩序の崩壊」「日本は自国防衛の時代へ」他 ~2025年4月

  • by 中尾 治美

世界同時株安と510兆円消失!トランプ関税政策が招く経済秩序の崩壊

 3月26日、トランプ米大統領は日本からの輸入自動車に25%の追加関税をかけると発表しました。4月3日から関税の徴収が始まります。米国は新たな関税により年1000億ドル(約15兆円)の税収が見込めるとしています。現在、乗用車に2.5%、トラックに25%の関税がかかっていますので、新たな税率は乗用車が27.5%、トラックには50%の関税がかかることになります。2024年の日本から米国への自動車の輸出額は約6兆円と対米輸出総額の3割を占めます。日本にとり死活問題です。

 4月2日トランプ米大統領は、全世界を対象に相互関税をかけると発表しました。各国一律に10%の関税を課し、国・地域ごとに違う税率を上乗せするとしています。日本24%、欧州20%、英国10%、中国34%で、中国には既に20%の追加関税が課されていますので合計54%となります。4月9日から発動します。お互いに関税の掛け合いの報復関税バトルが始まる可能性もあります。但し、まだ個別交渉で下げることは可能なようです。

 一方、輸入関税は米国の輸入価格を大幅に上昇させますが、既に、米国では1月、2月の貿易赤字額が増加しています。それはトランプ米政権の関税引き上げ前の駆け込み輸入がもたらしたものです。日本車メーカーの2025年1月~3月の米新車販売台数は前年同月比5%増の約149万7800台で、特にハイブリッド(HV)車の駆け込み需要が発生しています。その結果、赤字額は1月1307億ドル、2月1227億ドルと過去に例がない異常な増え方です。

 トランプ米大統領の相互関税で世界の同時株安が止まらなくなっています。米株式市場でダウ工業株30種平均は4月3日1679ドル安、4日に2231ドル安の3万8314ドルで引けました。1日の下げ幅としては史上3番目に大きなものとなりました。日米欧の上場企業の時価総額は4月3日だけで約3兆5000億ドル(約510兆円)が消失したと言われています。まさに“トランプ不況”が現実化しています。貿易戦争の激化に米国市場参加者がリスク回避を始めています。米国への投資の呼び込を狙った高関税政策が逆に米国株から投資マネーの流出を招いています。

 原油価格の米国指標のWTI先物は4日、一時、前日比10%安い1バレル60.45ドルまで下落しました。新型コロナウイルス禍の2021年4月以来、4年ぶりの安値をつけました。米国と中国の貿易戦争により世界経済が減速し、原油の需要が減るとの懸念が押し下げ圧力となったようです。

 日本貿易振興機構(JETRO)は自動車関税と相互関税で世界のGDPを0.6%押し下げると予想しています。国際通貨基金(IMF)は2027年の世界のGDPは127兆ドルと予想していますので単純計算で7600億ドル(約114兆円)が消失すると言われています。今回の措置により米国が戦後掲げてきた自由貿易体制は崩壊し、世界経済秩序は大きな転機を迎えます。

米雇用増加も景気懸念、欧州再軍備、中国投資激減の世界情勢

 米労働省が4日発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から22万8000人増加。失業率は4.2%で、2月の4.1%から0.1%悪化しました。平均時給は前月比で0.3%上昇、前年同月比で3.8%となりました。3月の非製造業景況感指数は50.8で、2月の53.5から悪化しています。関税に伴う米消費者の購買力の低下と景気先行きの不透明さが高まり企業も採用を手控えています。

 欧州連合(EU)はトランプ米大統領の欧州防衛に消極的な態度、プーチンロシア政権に対する融和的な姿勢に対抗し、3月6日再軍備に約8000億ユーロ(約130兆円)を投じる合意に達しました。ドイツは3月18日、憲法改正で国防費の増強を図り、国際法に反して攻撃を受ける国への支援を盛り込みました。またEUは加盟国の国民に、食料や水の生活必需品を最低3日分備蓄するように推奨しています。EUは時代錯誤のプーチンロシア大統領のソ連時代の領土回復と彼の権威主義体制維持に対抗し自己防衛に立ち上がっています。

 中国政府が外資企業の中国離れに歯止めをかけようと動いています。中国国家外貨管理局によると、2024年の対中国直接投資は186億ドル(約2兆8000億円)の流入超過となりましたが、ピーク時の2021年から95%減少で、2023年と比べ6割以上減っています。その背景は中国企業との競争激化、不動産バブルの崩壊による中国経済の減速や、2023年7月に施行した改正反スパイ法の不透明さです。これでは中国での自由な経済活動が阻害されてしまいます。反スパイ法の定義を明確に示さない限り、中国投資は細ってしまうこと間違い無いと思います。中国政府はどうやって外資を再び国内投資に呼び込むことができるのかが中国経済復興のカギとなります。

太平洋航路運賃上昇!トランプ関税で更なる波乱も

コンテナ船運賃指標(WCI) 2025年4月3日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数2,2082%-22%
上海/ロッテルダム2,304-3%-25%
上海/ロサンゼルス2,72610%-26%
上海/ニューヨーク3,8948%-20%

 太平洋航路は、最近の欠便の増加で、スポット運賃が数カ月にわたる下落傾向から上昇に転じましたが、トランプ米大統領が発表した相互関税の導入で、スポット運賃の変動性が高まると予想しています。

世界最大コンテナリース会社の戦略転換!三井住友F&Lとの提携の真意

 コンテナ所有本数世界No. 1のTriton(700万TEU)が3月10日にバミューダ諸島登記のGlobal Container International(GCI)を買収すると発表しました。2018年に設立されたGCIが所有する約50万TEUは大した数では有りませんが、フリート自体の平均年齢が4~5年と新しく買収金額もそれなりに魅力的であったのかもしれません。

 もう一つの興味あるコンテナリース業界の話題は、三井住友ファイナンス&リースがTritonの親会社、カナダの投資会社、ブルックフィールドと合弁会社を立ち上げTritonのフリートの20%(140万TEU?)を運用するとしています。実質的にはTritonが運用してその利益の20%分のシェアを合弁会社が享受するということになると思います。三井住友ファイナンス&リースは運用の仕方を習得し、将来独自運用をするコンテナリース会社を目指しています。

 現在のコンテナリース市場を見たとき、果たしてTritonが運用する750万TEU規模のリース会社が今後、問題無く高い利益率を達成できるのか疑問符がつきます。但し、Tritonの親会社であるブルックフィールドにとり、140万TEUのフリートを切り離し、600万TEUにサイズダウンすることで運用リスク軽減する狙いであるのかもしれません。三井住友ファイナンス&リースが貧乏くじを引かないことを祈りたいと思います。

CIMC Group、純利益606%増!コンテナ製造が牽引

 世界最最大手のコンテナメーカー、CIMC Groupが2024年度の連結業績を発表しました。売上高は前年比39%増加、1,777億元(3兆5,540億円)営業利益が131.39%増、76.5億元(1,530億円)当期純利益、605.6%増、29.7億元(594億円)と大幅な増収増益を記録しました。コンテナ製造事業はDryコンテナの販売量が417%増、3,433,600 TEU、Reefer Containerの販売量は49.8%増、13万8,600 TEUと過去最高を記録し、売上高622億元(1兆2,440億円)となり、総売り上高の35%を占めました。

2025年3月の新造コンテナ情報

 3月のコンテナ新造価格は$1750 per 20fで、先月より―5.4%、$100下がりました。床材の値下がりが主な原因です。1月の$1,900 per 20f より―7.9%、$150の値下がりとなりました。中国コンテナメーカーで生産ライン縮小の動きが出ていると聞いています。今後、需要期の夏に向かい受注状況次第ではまだ値下がりの傾向が続く可能性があります。

 2月の新造コンテナ生産量は、535,105 TEU(Dry: 500,440 TEU, Reefer: 34,665 TEU)でした。新造コンテナの工場残は、1,5331,467 TEU(Dry: 1,467,632 TEU, Reefer: 63,835 TEU)となりました。前月と比較して、総数95,379 TEU(Dry: 84,396 TEU, Reefer: 10,983 TEU)となり、総数で6.6%(Dry: 6%, Reefer; 21%)増加しました。工場出荷数は、総数439,726TEU(Dry: 416,044TEU、Reefer: 23,682 TEU)で、関税が上がる前の駆け込み出荷が3月も続いたこと言えます。それでも前月から95,379TEU在庫が増加しました。

米中露パワーゲームの裏側!日本は自国防衛の時代へ

 プーチンロシア大統領の専制国家と化したロシアが、ソ連時代の領土ウクライナを、ロシア人が多く住んでいるという理由で、力ずくで領土占有を正当化しています。希少な鉱物資源の確保、さらなる領土拡大の野望が見えてきます。共産主義国家、中国も昔、支配地域であったと言う屁理屈で9段線を設定し、自国大陸棚を含め、南シナ海の島々の領有権を主張し、人工島を建設し、実行支配しています。豊富な漁場、石油・天然ガスの地下資源および船舶交通要所の支配など海洋権益獲得が目的と言われています。

 一方、民主主義を建前とする米国、トランプ大統領はそうした世界の情勢の中、自国の力の衰えを棚に上げ、他国が力をつけてきたのは今まで米国が支援したおかげだから米国と商売をしたかったら米国に投資をしろ!そうでなければ法外な高輸入関税を払え!とガキ大将が一方的に難癖をつけているようです。戦後、我々の憧れの米国が、一番、栄華繁栄を享受してきたのではないでしょうか?自分で遊び方を仕切り、一番楽しんだ米国が、今になって一方的にちゃぶ台をひっくり返している姿は、他国からの信用を失い孤立することになることは間違いありません。

 この現状を鑑みるに、米国は有事のときに日本防衛をしてくれないことがはっきりしました。人間は愚かです。既に85年前の戦争の悲惨さを忘れているかのようです。日本軍のアジア侵略による戦死者を含め、米軍による東京を始め日本主要都市への空襲、広島・長崎への原爆投下で終結した太平洋戦争で何百万人もの人が亡くなった事を忘れています。戦争はやるべきではありませんが、自国は自国で守らなければならないことは歴史が証明しています。

英語教育と政治システムの抜本改革で日本再生へ!

 日本の現状はあまりにもお粗末であると言わざるを得ません。戦後の目覚ましい復興でGDP世界第二位の国まで登り詰めた日本は、昔の遺産、栄光に頼り、甘んじ、既得権益を守ることで国を変える意欲を無くしてしまっています。

 まずは英語教育を変えなければなりません。英語教育は読み書き中心から、聞く話す教育に至急変更すべきです。海外で人とコミュニケーションを図るのに英語は必須です。我々が中学・高校で読み書き英語に使うエネルギーは半端ではありません。しかし、ほとんどの人が読み書き英語に自信を無くし、結果として全般の学業にも興味を失っている可能性があります。社会人になってもあまり役立たない英語。ほとんどの人がその英語を活かしきれていない現実。何故そんな役に立たない読み書き英語を営々と続けているのですか?小学校から聞く話す英語をまず始めると多くの子供達がもっと意欲的に語学、学業に取り組むのではないでしょうか?聞く話す英語を小さなときに学ぶと一生忘れません。読み書きはそれからでも十分間に合います。これでもっと日本人の生産性が向上します。

 所得制限も設けないで自民、公明、日本維新の会が合意した授業料無償化。私立高校も含め年4000億円の支出を政治決定しました。この決定をするために国会議員の貴重な時間を何カ月も費やしています。何かおかしいと思います。それよりも、小・中学校での聞く話す英語教育に年4000億円使う方が、日本の将来を背負う若者を育てるのに大いに役立つと思います。Web会議やInternetを駆使した学習方法は先生の負担も減らしてくれるはずです。Net世代にぴったりの教育方法であると思います。落ちこぼれの生徒も少なくなり、社会人になって日本人として自信を持って海外に出て、外国人と丁々発止と渡り合うことができます。これからの日本に要求されることは、まずそのような人材を育てることであると思います。これからは日本人及び日本企業は日本という小さな島国だけを見て物事を考えるのではなく、世界の日本という視点で物事を見ることが必要であると思います。ガラパゴス化を避けるべきです。

 世界のリーダーとやり会える資質を備えたリーダーを排出できる日本にしていく必要があります。現状の日本政治体制ではいかに優秀な人でもその優秀さを活かしきれず、優れた個性を潰してしまっています。政治家が一つの職業と化しているのは最悪です。商家の3代目が店を潰すと言われるような、ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)の金がかかる政治を改め、真の政治家を育てるシステムを構築する必要があります。

 世界は日本が変わることを期待しています。これに日本の政治、官僚、財界はどう応えていくのか?既得権益にしがみつかず、常に自ら発展成長し、世界で競争できる力をつけていく人材、組織を創る必要があります。今の世界情勢からみて時間はあまり残されていないと思います。我々も真剣に選挙で国民の意思をはっきり示す必要があります。

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