【市況レポート】「世界情勢が海運を直撃!山積する課題と日本の針路」他 2025年1月

  • by 中尾 治美

円安21%で物価高騰!深まる生活危機も政府の対策見えず

一年の計は元旦にあり!
 例年、元旦に神社にお参りし、一年の無病息災、家庭円満、商売繁盛、世界平和を祈願しています。昨年は1月1日に能登半島地震が起き、多くの人々が被災され、まだ完全な復興には至っていません。被害に遭われた方々のご苦労を考えると、早急な復興・復旧を願わずにはいられません。

 今年はどんな年になるのでしょうか?
 個人でやれることは責任をもって結果を出していきたいと考えています。しかし、個人で解決できない問題は政府に努力してもらいたいです。

 帝国データバンクによると今年の1月からの食品値上げは1万5000~2万品目に上ります。それには円ドル為替問題が大きく関わっています。2022年1月のドル円為替がUS$1.00=Yen130であったものが、2022年3月、米連邦準備制度理事会(FRD)がCOVID-19で過熱したインフレ圧力を押さえるために金利を0.5%上げました。その後の追加利上げで2023年7月には5.5%まで上げました。欧州各国、カナダ等は自国通貨を守るためにFRBの利上げに追随しましたが、日本はゼロ金利政策に固執したため、円投機で売られ、現在、円はUS$1.00=Yen157で2022年1月から21%の円安となっています。

 日本の食料自給率はカロリー単位で38%となり、62%を輸入に頼っています。その上、エネルギー供給の約4割を占める石油は100%近く輸入に頼っています。円ドル為替が弱いということは輸入物価が上がるだけでなく、海外で他の国に買い負けして必要な物が思うように買えないということが起こっています。それは我々の死活問題に関わってきます。その上、残念ながら1990年初めにバブル経済が弾けて以来、失われた30年と言われて、賃金の上昇が思うように伸びていないという事実が有ります。この現実を見ると円がドルに対して21%も下がることは無視できません。それでなくても年金受給者は年金が年々目減りしている現状が有ります。これは政府の問題です。政府がこの日本をどのような国にしようとしているのか見えてきません。

世界情勢が海運を直撃!山積する課題と日本の針路

 2025年は海運業界に取り不確定要素の多い年となりそうです。

コンテナ船及びコンテナの余剰・不足による海上運賃行方

1)1月15日に米国東岸のストライキがどうなるか?
 昨年10月、77年振りに3日間のストライキが実施され、6年間で60%以上の賃上げて一時的に合意に至りましたが、自動化・半自動化問題で1月15日まで延長されました。現・新両大統領が港湾労働者を支持しているため、ストライキの現実味が増しています。

2)1月20日、米国大統領ドナルド・トランプ氏の誕生。
 America FirstでTaxmanのトランプ氏の高関税は実行されるのか?

3)喜望峰周りの欧州航路はどうなるか?何時スエズ運河が安全に通行できるのか?

地政学的な観点

4)ロシア・ウクライナ戦争が何時終わるか?

5)イスラエルとハマスの戦争はどうなるのか?

6)アサド政権崩壊後のシリアはどうなるのか?

7)欧州政治の右傾化問題?

8)米国・欧州移民問題?

主要国の経済問題の観点

9)中国の不動産バブル崩壊後の経済はどうなるのか?

10)中国の補助金による世界への輸出攻勢?

11)中国の米国に対する報復関税競争の行方は?

12)好調な米国経済、インフレ再発か?米連邦準備理事会(FRB)が金利の再値上げ?

13)ドイツのエネルギー政策の失敗?原子力発電を廃止し、自然エネルギーに舵を切った。

地球温暖化問題対策

14)ドイツ・米国の自動車EV化の失敗の行方は?

15)新米大統領トランプ氏の脱炭素化離脱による気候変動対策の行方?

 色々問題を上げるときりが有りません。しかし日本がやることは日本の持ち味を活かし、人々の和の重要性を全面に出し、お互いを尊重し助け合って良い国を創ることです。そして、各国のお手本になるような国として世界平和に貢献してもらいたいと期待しています。

【146万人の可能性】多様な人材が切り拓く日本の未来

 現在、人手不足が叫ばれていますが、日本はまだまだ若者、女性、年寄の力を活かしきっていないと思います。人手不足の問題点は、社会が必要とする職業に対して必要・十分な対価を払っていないことに尽きると思います。特に中小企業がもっと従業員に対して魅力ある給与を払うことができれば、生産性を更に上げる事ができます。その中小企業を国が税負担軽減で応援していけば、結果として税収入は増えると思います。若者は自分の仕事に自信、誇りを持つことができ、今騒がれている若者の闇バイト問題も解決できるはずです。

 2022年に内閣府が行った調査によると、引きこもりの割合は15歳~39歳までの若者が2.05%、40歳~64歳の中高年の2.2%で、日本の引きこもり人数は146万人と推計されています。この人材を活用しない手はないと思います。

トランプ次期大統領就任の影響:港湾スト&関税引上げで海運市場は混乱か

コンテナ船運賃指標(WCI) 2025年1月2日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数3,9013%46%
上海/ロッテルダム4,774-1%33%
上海/ロサンゼルス4,8297%77%
上海/ニューヨーク6,4456%67%

 北米東岸港湾ストライキを懸念、トランプ次期米国大統領の関税引き上げに備えた前倒し需要が運賃を押し上げるとしています。Drewry が1月3日に発表したCancelled Sailings Trackerによると、Week 1(12月30日~1月5日)からWeek 5(1月27日~2月2日)までの東西航路(太平洋航路、大西洋航路、アジア/欧州・地中海航路)往航全体の欠航率は12%の見通しとしています。航路別の内訳は、太平洋航路の東航が56%、大西洋航路の西航航路が21%となっています。

ONE主導の新連合始動!4大船社アライアンスが描く航路戦略

 今年2月、船会社のAllianceの組替えが行われ、今までの3つのAllianceが4つのAllianceになります。

  1. MSC ― MSC単独運行
  2. Gemini ― Maersk、Hapag Lloyd
  3. Ocean Alliance ― CMA-CGM, COSCO, Evergreen, OOCL
  4. Premier Alliance ― ONE, HMM, Yang Ming

 但し、上記の中で部分的に共同運航をするAllianceが出てきています。それは、1)MSCと4)Premier Allianceは欧州航路でスロット交換を行います。また、4)Premier Allianceは3)Ocean Allianceと大西洋航路で船腹共有協定を結びます。ONEが音頭を取ってHapag Lloydが抜けた穴を他のAllianceと協調し、それぞれの航路で競争力を維持したことが想像できます。ONEはWan Haiとの北米航路での提携を継続します。

過去10年で最高!コンテナ生産量が大記録

 12月の新造コンテナ価格は$1950 per 20fでした。先月より$150, 7%の値下がりとなりました。これは鉄の値下がりが要因です。12月の新造コンテナ生産量は892,445 TEU (Dry: 863,334 TEU, Reefer: 29,111 TEU)でした。新造コンテナ量は対前月増減数で比較すると、総数は137,399 TEU(Dry:+130,542 TEU, Reefer: +6,857 TEU)といずれも増加で、前月比でみると、生産新造コンテナ総数、+18%(Dry:+18%、Reefer: +31%)となりました。これは予想以上の生産増加となりました。それだけ中国からの関税値上げ前の輸出、在庫積み上げ輸入、1月29日から始まる中国旧正月前の駆け込み輸出が引き起こしたと考えます。

 2024年の中国コンテナ製造総数は8,141,386 TEU(Dry: 7,854,534 TEU, Reefer: 286,852 TEU)となり、過去10年で一番の大記録を創ることになりました。Dryだけ見ても過去10年で最高の生産量となりました。Reeferは過去3番目の生産量でした。欧州航路の船が喜望峰回ることによって、船会社は2023年のデポ余剰在庫をリース会社から掻き集め、過去10年で最も新造コンテナ生産量が多い年にしたということが言えると思います。特にMSCは2024年の1年で100万TEUを超える新造Dryコンテナを発注しました。この数には驚かずにはいられません。2番目に多いのがHapag LloydでDryを64万TEU、3番目がONEで37万TEU、Maerskは4番目で23万TEUでした。コンテナリース会社では2024年で一番多かったのはCAIでDryを64万TEU、Tritonが2番めで51万TEU、3番目がTextainerで43万TEUでした。

横浜の朝焼けが描く希望、2025年への新たな決意

 半年前に新事務所、横浜クリエーションスクエアに引っ越して、初めての正月を迎えました。18階のオフィスからの横浜市街の眺めと遥か遠くに見える東京のビル群、薄っすらと霞む浅草のスカイツリーは毎日見ていても飽きが来ません。疲れた心を癒してくれます。

 今年の仕事始めは、朝6時半過ぎ、まだ朝陽が上る前の薄暗く静まり返った横浜市街のビル群を眺め今年一年の行く末に思い耽っていると、やがて昇ってきた朝日が高層ビルの窓ガラスに照りかえり、ビル群が燃えているような景色は筆舌に尽くし難いものがあります。それは私の心に強いエネルギーを与えてくれました。これからの一年もお客様に喜んで頂ける製品の販売・サービスを提供出来るように挑戦していきたいと心を新たにいたしました。

 今年も引き続きご指導・ご鞭撻をいただけますよう宜しくお願い申し上げます。

関連記事

TOP