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米国経済の堅調さを示す雇用増加と旅行需要
米労働省が6日発表した11月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から22万7000人増加。失業率は4.2%で、10月の4.1%から0.1ポイント悪化しました。9月末から10月初めにはフロリダ州南部に大型ハリケーンが上陸し、9月から11月初旬まで2ヶ月近く続いた16年振りの米航空機大手ボーイングの大規模ストライキは一時金と4年間で38%の賃上げ幅で解決しました。このような一時的な混乱要因が落ち着き、平均時給は前年同月比で4.0%、前月比で0.4%上昇しました。米国の雇用情勢が底堅さを保っていることが示されました。
全米自動車協会(AAA)の予測によると、11月26日~12月2日の期間の旅行者数はおよそ7986万人で2023年の実績より2.1%増加すると見ています。11月28日の感謝祭の休みを利用して旅行する人が多く、約90%、7174万人が自動車を利用し、前年より130万人増加し、2019年の7060万人を上回るとしています。飛行機による国内移動は584万人と2%増を見込み、国内線の予約は前年から23%増加するとしています。バス・電車、クルーズ船を利用する旅行者も9%増え、クルーズ船は人気があり20%増加を見込んでいます。
欧州EV戦略の誤算!競争力低下で大規模な人員削減へ
欧州自動車産業は2024年に入り5万人の従業員削減に動いています。その主な原因はロシアからの天然ガス供給の停止に伴うエネルギーコストの上昇です。その影響は部品メーカーにも及びます。EUの自動車産業規模は1兆ユーロ(約161兆円)超で、域内国内総生産(GDP)の7%を占めています。日本の3%より依存度は高いです。自動車産業従事者は1300万人に達します。
ドイツ経済研究所によると、2023年の自動車産業の電気代は1メガワット時あたり190ユーロで、中国の2倍超、米国の3倍弱となっています。更に欧州はEV振興策として、各国、購入補助金、減税を打ち出しましたが、2023年後半から補助金の停止・縮小で一気に減速しました。フォルクスワーゲンは2022年までの5年間でEV化のために300億ユーロを投資、BMWは2024年1~9月の研究開発費は66億ユーロを超え、前年同月比で27%増加となりました。
11月25日ドイツ鉄鋼・機械大手のティッセン・クルップは、鉄鋼子会社のティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパ(TKSE)の従業員の4割に当たる1万1000人を削減すると発表しました。欧州は早急にEV化に舵を切った結果、脱炭素に伴うコスト増加で、売上減速及び高コスト体質が基幹産業、製造業の競争力を弱めることになりました。
中国は製造業PMI 50超で回復傾向も地方政府は財政危機
中国国家統計局が11月30日発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.3でした。前月より0.2ポイント高く、2ヶ月連続で改善、景気の拡大縮小の境目である50を超えました。新規受注は前月より0.8ポイント上昇し、50.8で生産は0.4ポイント高い52.4、3ヶ月連続で50を超えました。海外からの新規受注は0.8ポイント上昇しましたが、48.1となり、50を下回りました。
一方、地方政府の財政難が加速してきました。中国財政省によると1~10月の土地使用権の売却収入は2兆6971億元(約56兆円)で前年同期比、23%減、2022年以降3年連続で前年を下回りました。売却収入が最も多かった2021年同期から55%減となりました。地方政府は借金返済や利払いの原資となる売却収入の低迷で将来の返済が見通せない状況にあります。
米東岸港湾労使交渉が難航!自動化vs雇用保護の攻防
来年1月15日に延長期限を迎える北米東岸港湾の労使交渉が難航しているようです。港湾労働者側であるILAは半自動化・自動化が進むことで雇用が失われる可能性を懸念して、自動化技術の導入に反対しています。一方、使用者団体のUSMXは、ターミナルを高密度化し、多くの貨物を処理し、効率性、安全性、処理能力、生産性を高めることは双方に利益をもたらすという考えが多くの支持を得ることは間違いないと考えているようです。東岸港湾の動向次第ではサプライチェーンが大きく混乱する懸念もあり、何とか期限内に解決しストライキが回避できるよう期待しています。
この一年を通して、喜望峰ルートの迂回路の継続使用、悪天候による欠便・抜港が世界的にハブ港でのVessels Bunching(数珠繋ぎ状態)を発生させ、本来であれば余剰となる筈の船腹スペースが追加投入され、コンテナ不足をもたらしました。バイデン政権の中国に対する報復関税の課徴前、10月の米国東岸ストライキ前の駆け込み輸入、及び11月4日の米国大統領選挙における“Tax man”と言われるトランプ次期大統領の勝利が、第4四半期(10~12月)の米国輸入に拍車をかけているようです。
コンテナ船社が脅威の増益!リース会社も活況維持
主要コンテナ船社の2024年第3四半期(7~9月)業績は、前年同月比に対して大幅な増益となっています。各社の利益額は、Maerskが前年同期比3.5倍、CMA-CGAが2.8倍、Hapag Lloydが2.2倍、ONEは5.5倍と大きく前年同期を上回り、各社とも2024年の通期予想を上方修正する動きが相次いでいます。ONEも2024年度通期の税引き後利益を前回発表の27億4500万ドルから30億9500万ドルに上方修正しました。
リース会社は、船会社の喜望峰迂回、世界のハブ港の混乱、関税前・ストライキ前の駆け込み需要により既存の長期リースは更新され、新造コンテナの長期リース需要を享受し、相変わらず高い98%前後のコンテナ稼働率を維持しているようです。リース会社にとっては、今年も投機的に発注した新造コンテナを余りなくリースできる良い年となりました。
新造コンテナ生産量が過去10年で最大に!2024年11月の新造コンテナ情報
11月の新造コンテナ価格は$2,200 per 20f、先月と同じでした。11月の新造コンテナ生産量は755,046 TEU (Dry: 732,792 TEU, Reefer: 22,254 TEU)です。新造コンテナ量は対前月増減数で比較すると、総数は、-69,905 TEU(Dry:-70,930 TEU, Reefer: +1,025 TEU)となり、前月比、-8.5%(Dry:-8.8%、Reefer: +4.8%)となりました。やはり10月までの勢いと比べると落ち込みとなりましたが、それはDryの落ち込みが大きく、反対にReeferは+4.8%と伸びたためです。2024年通年の新造コンテナのDryの総数は7.6 Million TEUを超え、Reeferも含めた総数となると7.9 Million TEUに迫る勢いです。過去10年で新造コンテナが一番多く製造された年となります。
新造コンテナ工場在庫数、1,260,252 TEU (Dry: 1,211,884 TEU, Reefer: 48,368 TEU)となりました。Dry が120万TEUを超えました。一方、Reeferは減少しました。新造コンテナの前月増減数でみると、総数、+179,412 TEU (Dry: +181,200 TEU, Reefer: ―1,788 TEU)となりました。前月比、+16.6%(Dry: +17.6%, Reefer: ―3.6%)になりました。Dryの在庫がかなり増加しました。Reeferは大きく在庫を減らしました。11月に工場から出荷された数量は、総数、575,634 TEU (Dry: 551,592 TEU, Reefer: 24,042 TEU)となりました。前月比、Dryは+24%、Reeferは-19%の落ち込みとなりました。
今年も船会社、リース会社、コンテナメーカーにとって良い年となりました。来年、2025年はどのような年になるのでしょうか?
OECD予測:2025年の世界成長率3.3%に、日本もプラス転換へ
経済協力開発機構(OECD)は12月4日、2025年の世界の実質成長率を3.3%と予測をしています。9月の時点から0.1%引き上げました。因みに2024年は3.2%の成長を見込んでいます。国別では、米国が2.4%成長とし、9月時点から0.8ポイント引き上げました。ユーロ圏は1.3%と前回の予測値を据え置きました。中国については前回から0.2ポイント引き上げ、4.7%成長としました。2024年の4.9%から小幅下方修正となりました。日本は2024年の-0.3成長から2025年は1.5%とプラス成長に修正されました。
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