【市況レポート】「米国東岸港湾スト、2週間なら年末まで混乱」「新アライアンスで直航サービス拡充」他 2024年9月

  • by 中尾 治美

米国の消費関連企業の倒産が増加、FRBに大幅利下げを期待

  米労働省が6日発表した8月雇用統計によると非農業部門の就業者数は前月から14万2000人増加、予想を下回りました。但し、失業率は4.2%、7月の4.3%から改善しました。平均時給は前月比、0.4%上昇、市場予想の0.3%を上回りました。米雇用の急減速懸念は避けられたようです。米連邦準備理事会(FRB)は“労働市場は軟化を続けていますが、悪化はしていない”との見解をとっていますが果たしてそうでしょうか?
 9月9日には、米ディスカウント店大手のビッグ・ロッツが、米連邦破産方第11条(チャプター11)を申請しました。負債総額は約30億ドル(約4200億円)です。米国の消費関連企業の経営破綻は足もとで増加しています。4月に99センツ・オンリー(1ドルショップチェーン)が破産申請、5月レッドロブスター(海鮮レストランチェーン)が経営破綻。米S&Pグローバルによると今年1~7月半ばの消費関連企業の倒産は21社となり、同期間では2020年以来の多さとなっています。低所得消費者は支出を切り詰めて自己防衛を図っていますので、小売業者は価格競争で経営悪化になっているのが現状のようです。FRBに早急に大幅な利下げ、0.5%のカンフル剤を期待したいです。

北米向け小売コンテナ輸出量増加、リスク回避の在庫積み増しが要因

 全米小売業協会(NFR)は、9日、米国主要港における小売関連の輸入コンテナの取り扱い実績と最新予想を公表しました。

8月の実績見通しは前年同月比20.9%増、237万TEU。
9月は14%増の231万TEU、8月予想から15万TEUの上方修正。
10月は1.3%増、208万TEU、8月予想から1万TEUの下振れ。
11月は1.6%増、192万TEU、8月予想から6万TEUの下振れ。
12月は0.9%増、189万TEU、8月予想から5万TEUの下振れ。

 2024年通年(1~12月)では、前年比12.3%増、2498万TEUとなり、過去3番目の水準になると予想し、2025年1月は0.3%減、196万TEUと予想しています。
 今年の北米向け小売コンテナ輸出量増加要因として、下記リスク回避のための在庫積み増しが考えられます。

  • 喜望峰迂回航路によるリードタイムの長期化
  • 北米東岸港湾の労使交渉決裂による10月以降スト突入の可能性
  • 米大統領選挙後の関税引き上げ等によるサプライチェーン混乱

 北米向けの荷動きはかなり力強いものがありますが、FRBの利下げ幅、回数次第で2025年以降の景気回復のスピードに影響を与えると思われます。

欧州中央銀行、米中に対抗するため大規模投資を提起

 欧州景気にも減速感が出ています。6日発表のユーロ圏4~6月期の実質域内総生産(GDP)が改定値で前月比0.2%と速報値の0.3%増から0.1ポイント低下しました。9月11日午前、1ユーロ=155.71円。ユーロが対円で下落しています。7月10日の1ユーロ=175.09円からすると11%の円高となっています。欧州中央銀行(ECB)の更なる利下げ観測が出ているためです。9日、欧州委員会は欧州の競争力強化のためにデジタルやクリーン技術、防衛産業等の分野で米国、中国に対抗するため、年間8000億ユーロ(約127兆円)の追加投資が必要であると提起しました。今後の欧州の景気回復に大いに期待できると思います。

中国製造業PMI4カ月連続50割れ、景気減速感強まる

 中国税関総署が10日に発表した8月の貿易統計によると、輸入は前年同月比0.5%増の2176億ドル(約31兆円)。2か月連続でプラスとなりましたが、伸びは7月から縮小しました。内需不足を受けて海外からの資源調達も鈍りました。最大の輸入品目は集積回路で1割増加です。欧米の輸入規制前の駆け込み増加となりました。資源関連は減少が目立っています。原油は前年同月比で4%減、鉄鉱石も同、9%減、素材関連のプラスチック類が前年同月比4%減、国内の需要低迷が輸入減速の一因で、長引く不動産不況の立て直しが急務と言えます。但し、8月の輸出は8.7%増の3086億ドル、伸び率も7月から拡大しました。品目別にみると電気自動車(EV)を含む自動車、携帯電話、パソコン及部品などが好調でした。
 8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は4カ月連続で50を下回りました。また、海外から新規受注を示す指数も5月以降4ヶ月連続で50を下回りました。一方、米国、カナダは8月から中国製EVの関税引き上げています。ブラジルなど中南米各国も中国製鉄鋼関税を引き上げました。2024年下半期は中国の輸出減速の可能性があります。

米国東岸港湾スト、2週間なら年末まで混乱続くと予想

 現在、荷主・海運業界で一番の話題、注目を浴びているのは北米東岸港労使交渉の行方でしょう。今年は6年に1回の労働協約改定年で、9月末に期限を迎えます。北米東岸港湾の労働組合である国際港湾労働者協会(ILA)は使用者団体の米国海洋連合(USMX)に対して、昨年、北米西岸港湾の労働組合(ILWU)が勝ち取った労働条件改善(賃上げを含む)を最低限要求してくると考えられるため、かなり厳しい交渉になることが予想されます。
 デンマークの海運調査会社、Sea-Intelligenceはストライキが行われた場合の影響を試算しています。10月の米国東岸諸港のコンテナ取扱量は230万TEUと推定、1日当たり合計7万4,000TEU、その内輸入が3万6,000TEU、輸出が3万8,000TEUとなり、空コンテナに限っても毎日約2万TEUの積み込みができなくなるとしています。1週間のストが実施されたら11月中旬まで港湾教務は通常に戻らず、もし2週間であれば2025年に入るまで港湾は通常業務に戻れないと試算しています。その為、全米小売業協会は両者に対して9月3日、ストライキの回避要請の声明を発表しました。米国サプライチェーン関連業界団体は6月にバイデン大統領に政府支援要請する共同書簡を提出しています。

東西航路の欠航率13%、中国国慶節対応で89便欠航(Week37~41)

 Drewryが9月5日公表したコンテナ船運賃指標WCIによると、運賃の総合指標は前週比8%減の$4775 per FEUで、7週連続の下落。7週連続の下落となりました。総合指標は、コロナ期の2021年9月時点に比べると54%低くなっていますが、2019年の平均水準に比べると約3.4倍となります。

コンテナ船運賃指標(WCI) 2024年9月5日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数4,775-8%184%
上海/ロッテルダム6,219-14%329%
上海/ロサンゼルス6,030-3%168%
上海/ニューヨーク8,451-2%149%

 Dreweryが発表したCancelled Sailings Trackerによると、Week37(9月9日~15日)からWeek41(10月7日~13日)までの東西航路(太平洋航路、大西洋航路、アジア・欧州・地中海航路)往航全体の欠航は89便となり、欠航率は13%となり、国慶節に対応したものです。航路別の内訳は、太平洋航路の東航が66%、アジア・欧州・地中海航路が26%、大西洋航路の西航が8%となっています。Dreweryは今後数週間の間にアジア発欧州向けの運賃は下落が続くと予想しています。

ONE、陽明、HMM、新アライアンスで直航サービス拡充

 9月9日、Ocean Network Express(ONE)、陽明海運(YML)、旧・現代商船(HMM)の3社は、来年2月から今までの“The Alliance(TA)”の名称を改め、新名称“プレミア・アライアンス”で新サービス(5年間)を開始します。一方、アジア・欧州航路では、スイス船社MSCとの間でスロット交換を行い、Hapag Lloydが抜けた穴をカバーします。新サービスの特徴は日本を基点に北米と欧州を振り子で配船(FP1)。アジア・欧州航路“FN2”で東京港と神戸港に寄港。北米西岸PSWサービスでは“PS3”で東京港、“PS5”で神戸港、北米西岸PNWサービスでは“PN1”で名古屋港、東京港、神戸港、“FN2”で東京港、神戸港に寄港を予定しています。欧州直航便が2便増加するので日本の荷主の方々にとっては良いニュースであると思います。

2024年8月の新造コンテナ情報

 8月の新造コンテナ価格は$2,200 per 20fです。今月も先月同様$50、2.2%の値下がりとなりました。鉄の値下がりと床材の値下がりが大きく値下げの要因となりました。新造コンテナ総数は830,905 TEU(Dry: 804,188 TEU, Reefer: 26,717 TEU)です。前月からの変化は、生産総数 -2.4%(Dry: -1.4%、Reefer: -26%)でした。発注は大きく伸びず、ほぼ先月並みでしたが、Reeferの発注が大きく下がりました。その結果、新造コンテナ工場残は、961,413 TEU(Dry: 901,183 TEU, Reefer: 60,230 TEU)と増加しました。前月からの変化は、総数は+7.2%(Dry: +7.5%, Reefer: +1.2%)と若干増加傾向にあります。8月に工場から出荷された本数は、総数766,480 TEU(Dry: 741,081 TEU, Reefer: 25,399 TEU)となりました。この調子で発注が入ると2024年の新造本数は700万TEUを超えます。Dryは700万TEU弱、Reeferは27万TEUを超える見込みです。これは過去コロナ禍の2021年の製造700万TEUに匹敵します。それを超える新造コンテナ製造となります。

Reefer Container活用で冷凍倉庫建て替え不要に

 第26回“ジャパン・インターナショナル・シーフードショー”に今年もEFIはThermo Kingのブースを出展しました。シーフードショーも今年は昨年より盛り上がり、8月21日(水)から23日(金)の3日間で前回より1,628名多い25,022名の来場者がありました。EFIのブースも初日から多くの人に来て頂き、全社員が曜日を分けて対応いたしました。その反響は大きく現在もその対応に追われております。
 大きな話題の一つは、73年ぶりに捕鯨大手の共同船舶が、積み込みはRORO方式、船内はLOLO方式を採用し、電気推進、捕鯨母船“関鯨丸”(全長:112.6m、総トン数:9,299t)を建造し、今年の3月に旭洋造船で竣工したことです。最大の特徴は、マイナス40℃まで冷やすことができるThermo KingのReefer Container Magnum Plusを41基購入いただき、40基を冷艙として使用することで肉を小分けに冷凍ができ、温度管理が容易、品質向上、省エネで経済性が高まり喜んで頂いています。Reefer Containerを上手く活用された例として多くの方々の注目を集めています。
 EFIはThermo Kingの正式代理店としてMagnum Plus以外にもマイナス60℃まで冷やすことができるSuper Freezerも販売しております。現在首都圏で冷凍倉庫のスペース不足が叫ばれています。98%が満庫状態、その上、50%近くが築40~50年以上で建て替えの時期に来ています。Thermo Kingのマイナス40℃、マイナス60℃まで冷やすことができるReefer Containerを冷凍倉庫代わりに使用されては如何でしょうか?建て替費用・時間、効率性から言っても、冷凍倉庫を造る代わりにReefer Containerを使用することを真剣に検討されては如何でしょうか?EFIは皆様と一緒に考え、皆様に喜んで頂ける結果を提案できると自負しています。

関連記事

TOP