【市況レポート】コンテナ業界の2023年を総括「リース会社大手2社が買収されたことが意味するもの」他 2023年12月

  • by 中尾 治美

2023年、戦争が世界経済の回復を遅らせている

 2023年もあと数週間を残すだけとなりました。2023年はどんな年であったのでしょうか?

 世界各国は2020年から2022年までの3年間続いたCOVID-19パンデミックを克服し、混乱した自国産業の立て直しに取り組み、サプライチェーンの復活に努力した年であったと言えると思います。しかしながら世界経済回復はまだ道半ばと言わざるを得ません。それは今もって世界で戦争が行われているという現実です。2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻、今年10月、中東で起こったパレスチナ武装勢力ハマスのイスラエル攻撃に対するイスラエル軍によるハマス掃討作戦は今も続いています。世界を二分化し、その上、エネルギー危機、穀物不足等の混乱をもたらしています。

FRBの利上げ終了?米経済は軟着陸できるか?

 米労働省が8日発表した11月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から19万9000人増となりました。失業率は3.7%です。雇用増加は雇用全体の3割を占めるレジャー及びサービス分野に支えられています。一方、11月の地区連銀経済報告は一部企業が製品需要の落ち込みをレイオフでしのいでいると報告しています。米連邦準備制度理事会(FRB)は既に利上げを終えたとみられ、米国経済をどう軟着陸させるかに注目が集まっています。
 FRBがインフレ対策で、2022年3月にゼロ金利政策を解除し、その後1年2か月の間に10度の利上げをし、2023年5月に金利を5.50%としました。主要各国も米国に追随し金利を上げて対応してきました。その結果、物価上昇、ストライキ、賃上げの流れが起こりました。一方、あまりの急激な金利上昇が世界の銀行を始め企業の資金繰りに影響を与え、多くの会社を倒産に追い込み企業経営を苦しめています。

欧州不動産大手シグナの破産が波紋を広げる

 ユーロ圏の7~9月期の実質域内総生産(GDP)は改定値で前期比▲0.1%、3四半期振りにマイナス成長となりました。インフレと利上げが企業と家計の節約志向を高めています。欧州で不動産事業を展開するシグナ・ホールディングが11月29日にオーストリアの裁判所に破産手続きを申請しました。ニューヨークのクライスラービルを保有、ドイツの老舗百貨店、ガレリア・カウホフなどを運営し、不動産の総資産は200億ユーロ(約3.2兆円)を超える規模と言われています。その影響は欧州各国の銀行・保険会社にかなりの損失を与えるのではないかと波紋を広げています。

中国経済の回復に暗雲。不動産不況と「融資平台」の巨額債務問題。

 世界物流はサプライチェーンによって支えられています。“世界の工場”と言われた中国の動きが “ゼロコロナ政策”終了後、今一つ調子が良くありません。3年間もCOVID-19パンデミックをいかなる国より徹底的にコントロールしてきた国だからこそ、その痛手は大きいと言えるのかもしれません。2023年5月の若年層(16~24歳)失業率は、過去最高の20.8%、約600万人が影響を受けています。その上、GNPの約3割を占める不動産関連業界の不況が深刻です。今年6月現在、経営再建中の恒大産業の2兆2882億元(45兆7640億円)、碧桂園の1兆3642億元(約27兆9000億円)という巨大な負債が目立っています。一方、政府の公式統計に計上されない地方政府が発行する隠れ資産、“融資平台”が問題になっています。IMFは地方政府が公式に発表している債務は35兆元(約700兆円)、”融資平台”の「隠れ債務」については56兆元(約1100兆円)、合計1800兆円にものぼるとみていますので、中国経済の復活には時間がかかりそうです。

コンテナ余剰は解消せず。パナマ運河の水不足で運航コスト増加。

 船会社は昨年末、北米で430万本の余剰コンテナを抱えていると言われていました。リース会社に返却できるものは返却し、古いコンテナで売却できるコンテナは処分してきましたが、1年余り経過しましたがまだ余剰感は拭えません。
 パナマ運河の水不足で通航隻数制限による運航コストの上昇に対してコンテナ船社は課徴金の導入を検討しています。パナマ運河の混雑を避けるためにスエズ運河経由に変更していますが、スエズ運河庁は11月19日発効で係留サービスなどに14%の付加価値税(VAT)を導入しました。一方、米国東岸からの復航では、アジアの仕向地での混雑を避けるため、航海日数が余計に掛かるものの喜望峰経由のルートも利用しています。

コンテナ運賃は上昇の機運

 イギリスの海運コンサルタント会社、Drewryが7日発表したコンテナ船運賃指標(WCI)によると上海発ロッテルダム向けなどのスポット運賃が続伸しました。12月1日付けの各コンテナ船社の運賃値上げを受けて、前週比で増加となりました。また、15日付けで再度の値上げを予定している船会社もあります。パナマ運河の通航隻数制限、北米東岸航路ではスエズ運河経由、喜望峰経由などルート変更やサーチャージの課徴の動きが出ており、今後、運賃上昇の可能性を示唆しています。

コンテナ船運賃指標(WCI) 12月7日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数1,4616%-32%
上海/ロッテルダム1,34315%-20%
上海/ロサンゼルス1,939-2%-3%
上海/ニューヨーク2,7477%-31%

コンテナリース会社大手2社が買収されたことが意味するもの

 リース会社は積極的に古いコンテナを売却に回しています。その結果かもしれませんが、厳しい現状下でコンテナ稼働率、95~97%という高い数字を維持しているようです。リース会社の強い粘り腰が表れています。今年驚いたことは、リース会社大手2社がそれぞれ買収されたことです。コンテナ保有数世界No.1(710万TEU)を誇るTritonが4月にカナダの投資会社Brookfield Infrastructure Corporation (BIPC)に、10月には保有数世界No. 2(440万TEU)のTextainerが米国の投資会社Stonepeakにそれぞれ買収されました。これはコンテナリース業が世界的投資会社に投資対象として認知されたためと考えております。

2023年11月の新造コンテナ情報

 11月の新造コンテナ価格は$1,800 per 20fで、前月より10%、$200下がりました。新造コンテナ製造本数は243,919 TEU (Dry: 227,684 TEU, Reefer: 16,235 TEU) で、前月比より全体で32%、59,800 TEU増(Dry: 32%, 55,607 TEU増、Reefer: 35%, 4,193 TEU増)となりました。新造コンテナ工場在庫、854,701 TEU (Dry: 798,438 TEU, 56,263 TEU)で、全体で2.2%、18,790 TEU増(Dry: 1.7%、13,323 TEU増、Reefer: 11%, 5,467 TEU増)となりました。11月の出庫数は全体が225,129 TEU(Dry: 214,361 TEU, Reefer: 10,768 TEU)となりました。2023年の年間新造コンテナ製造本数は190万TEU前後の見通しとなりそうです。昨年370万TEUに比較すると半分の規模となります。 

今年はロシア特需で20fコンテナ製造ブーム

 今年3月頃、”ロシア特需“と呼ばれる中国からロシア向けの輸出が増え、特に20fコンテナ需要が6月を頂点にありました。重量物を運ぶのに20fが適していたと思われます。また、基本的に全世界で使われている20fの割合は40fHCに比べ少ないと言えます。それは、40fHCは一度に大量のものを運ぶことができ、コスト的にも割安なので需要が高いためです。しかし20fに適した重量勝ちの荷物もあり、全体的に20f需要はそれなりに強いものがあります。そのために今年は相対的に減少した20fの代替需要が強いと言えると思います。今年は40fHCの倍の20f新造コンテナが製造されています。

日本政府、日銀には適正な円ドル為替を目指してほしい

 日銀のマイナス金利解除の思惑で、12月7日のニューヨーク市場で、一時、$1.00=141円台まで上昇しました。為替は国のステイタスです。日本国民の生活を守るため、また日本を魅力的な国にするためにも、日本政府、日本銀行に対して円ドル為替の適正水準維持($1.00=100~120円を目標)をお願いしたいと思います。

15周年を迎えるEFIの成長と展望

 一年が経つのが早く感じるこの頃です。EFIも来年3月で15周年を迎えます。売り上げも毎年順調に増え、社員数も27名を超え現在の事務所も手狭になってきていますので次の飛躍のためにより広いスペースを確保する必要が出てきました。そのために近い将来、移転を考えざるを得ない状況です。これも皆様方の温かいご支援のおかげであると深く感謝しております。さらに来年も皆様の御期待に沿えるよう、社員一同一丸となり、より良いサービスを皆様に提供し、さらに強い信頼を皆様から獲得し、皆様に喜んで頂きたいと願っております。引き続きご指導・ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

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