【市況レポート】「原発処理水放出に対する中国の過剰反応」「シーフードショーに初出展、大盛況」他 2023年9月

  • by 中尾 治美

原発処理水放出に対する中国の過剰反応と今我々にできること

 8月24日、東京電力が福島第一原子力発電所にたまる処理水を海に放出し始めました。中国が同日をもって、日本からの水産物の輸入を完全に停止しました。しかしその停止した根拠は説得力に欠けています。それは国際原子力機関(IAEA)が東電処理水の海洋放出は“国際的な安全基準に合致する”という調査報告を公表しているからです。東電は処理水を海水で薄め、トリチウム濃度を国の基準の40分の1となる1リットル当たり1500ベクレル未満にして原発沖約1キロの海底から放出しています。
 福島原子力発電所から排出されるトリチウムの排出量は、事故前の福島第一原子力発電所の放出管理値である年間22兆ベクレルが上限となっています。中国浙江省の秦山原子力発電所が年間約143兆ベクレル、福島の6.5倍です。韓国の月城原発は3.2倍の71兆ベクレル、カナダのブルースA・B原発が54倍の1,190兆ベクレル、フランスのアーグ再処理施設は455倍の10,000兆ベクレルです。反対している中国も、日本と同様に、原子力施設からトリチウム等の放射性核種を含む廃水を、IAEAが定める国際基準に従って海洋排出しているということです。東電の処理水海洋放出問題に対する中国の過剰反応については、このことを正しく理解してもらうことが大切です。我々は冷静に対応すべきです。一方、日本は根気よくこの現状を全世界に粛々と訴えていく必要があります。
 2022年の日本産水産物の主な輸出国・地域は第一位中国が22.5%、第二位香港が19.5%、第三位米国が13.9%の順で、中国は日本水産物の最大の輸出先で、輸出額は871億円に達します。中国の誤った理解による禁輸入被害額871億円の水産物については日本国内で消費すれば解決出来ます。これを良い機会にし、我々の食生活の見直しをしたらどうでしょうか?もっと健康に暮らせるのではないでしょうか?
 水産物の冷凍・冷蔵保存、加工技術の向上に努め、付加価値を付け、日本の安全な水産物・加工物に対して輸出先の拡大を図る必要があると感じます。

日米中の経済事情:中国は低迷が長期化する懸念

 米労働省の8月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から18万7000人増となりましたが、失業者数も増加した結果、失業率は3.8%に上昇しました。平均時給の伸びは前月比で0.2%、前年同月比で4.3%となり、賃上げ圧力は和らいでいます。7月の企業求人件数は882万7000件でピーク時の7割程度になっています。求人の勢いは2022年のような過熱感は薄まってきています。労働市場の鎮静化がこのまま進めばFRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利の引上げは必要ないと考えます。 
 一方、現在の円通貨$1.00=Yen150の極端な円安に対して、非常に日本経済の危うさを感じます。“どうした?植田和男日銀総裁!”と問いたいと思います。
 中国の8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.7、5か月連続で50を下回りました。国内の不動産市場の低迷に加え、輸出の停滞が響いています。米中貿易戦争による景気減速で2019年10月まで6か月間50を下回って以来のことです。レアメタル(希少金属)バナジウムはおよそ9ヵ月ぶりの安値圏となっています。世界の粗鋼生産の過半数を占める中国経済の停滞が始まり、需要が減退しているようです。一方、供給過剰も足かせとなっています。中国の経済低迷が長期化すると、世界経済の重荷になると見られています。

コンテナ運賃は引き続き下落もコロナ前よりは依然高水準

Drewryが7日に発表したコンテナ船運賃指標(WCI)によると、2021年9月のピーク時と比較すると84%減、過去10年平均の2681ドルと比べて37%の下落です。しかし、コロナ前の2019年の平均水準と比較すると依然として18%高いレベルとなっています。各航路の運賃水準は下記の通りで、今後数週間は安定するとみています。

コンテナ船運賃指標(WCI) 9月7日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数1,641-3%-69%
上海/ロッテルダム1,449-10%-81%
上海/ロサンゼルス2,2542%-53%
上海/ニューヨーク3,398-1%-62%

パナマ運河通行規制の中、ILWUは新協定に踏み出す

 アジアと北米東岸の大動脈であるパナマ運河では干ばつによる水不足で通行規制が実施されていますが、危惧されたサプライチェーンの混乱には至らないようです。米国西岸港湾労組・ILWUは8月31日、太平洋海事協会・PMAと、2028年7月1日に失効となる、6年間の新協定に踏み出しました。新協定には6年間で32%の賃上げと組合員全体に合計7,000万ドルの特別ボーナス支給が盛り込まれたと報じています。

定期船社は大幅減益、HMM株式の売却先は韓国3社に絞られる

 主要定期船社の2023年4-6月期の業績は、運賃水準が大きく下落し、各社大幅減益となりました。それでもMaersk, Hapag Lloyd, COSCO, ONEは4-6月期でも2桁台の利益を確保しました。一方、ZIM, Wan Haiは赤字に転落し、HMMの利益率は1桁台と厳しい状況となりました。
 この状況を受け、韓国の最大手海運会社、HMMの筆頭株主である韓国産業銀行(KDB)と韓国海洋振興公社(KOBC)はHMM株式の売却に関する予備入札を7月に実施しました。入札にHapag Lloydが参加しましたが、最終的に売却候補から外されました。最終候補として韓国3社に絞られ、年内に売却先が決定される見通しです。
 船会社は相変わらず過剰在庫を抱え、在庫調整に時間がかるとみられています。また、荷動きの回復は年後半から来年になる模様との見方が大勢を占めています。

ONEは5周年、世界をリードする定期船社へ

 Ocean Network Express(ONE)は今年の4月で5周年を迎えました。邦船3社の定期船事業部門を集約し、コンテナ定期船専門会社という使命を背負って頑張ってきた5年間でした。出だしのシステムのつまずき、そしてCOVID-19パンデミック後の物流混乱による運賃高騰で天と地の業績を経験したONEは、他の主要船社の多角化と違う次元に立っています。自社の独自性を発揮して世界をリードする定航船社の中の定航船社を目指してほしいと願っています。ONEの栄光に対して、日本酒で乾杯!

2023年8月の新造コンテナ情報

 8月の新造コンテナ製造数は203,525 TEU (Dry: 186,092 TEU, Reefer: 17,433 TEU)。新造コンテナ工場蔵置数は907,820 TEU (Dry: 843,268 TEU, Reefer: 64,552 TEU)。前月から825 TEU減(Dry: 8,937TEU増、Reefer: 9,762 TEU減)となり、新造コンテナ204,350 TEU (Dry: 177,155 TEU, Reefer: 27,195 TEU)が工場から出荷されました。

Thermo King社と協力してシーフードショーに初出展、大盛況

 弊社、EFインターナショナルは、弊社が代理店を務めているThermo King(TK)社の協力を得て、8月23日から25日に東京ビックサイトで開かれた第25回ジャパン・インターナショナル・シーフードショーに初めて出展しましました。1年前に弊社TK社担当者が見学に行ったのがきっかけでした。その担当者が上司を説得し、来年はEFIも出展したいという提案に対して、私はまだ力不足ではないかと、始めは少し躊躇していましたが、担当者の熱意が出展を決意させてくれました。今は出展して良かったと考えています。TK社担当はじめ関係者の緻密な出展計画がTK社を動かし、アジア責任者であるJJ Foo氏を派遣してくれました。我々、EFIの関係先に案内状でご連絡させていただきました。その準備に全社員が一丸となって取り組み、その団結力は大きな成果となりました。お陰様で、TKブースには126社以上の方が立ち寄られました。
 事務局のプレスリリースによると、開催規模は約600社、1300小間(ブース)の規模で、前年度比約30%以上に拡大。なんと出展募集小間が完売となったそうです。驚いたのは中国から参加されている会社もあり、出展社は37社で昨年度より13社増加とのことです。来場者は3日間で23,394名、前年度比、1.24倍の盛況となりました。

冷蔵倉庫の需給逼迫の中、Thermo King製品がお役に立てます

 最後にThermo Kingの宣伝になりますが、中国で日本水産物の輸入が全面禁止されている現状、水産物を保管する冷凍倉庫が不足することは目に見えています。それでマイナス40℃まで冷やせて、急速冷凍ができるPowerfulなMagnaum Plus、マイナス70℃まで冷やせるSuper Freezerは冷凍倉庫代わりに使うことができます。また電源がない場所、離島、僻地で電源供給できるThermo KingのGenerator(発電機)は大いにお役に立つと考えます。
 野村総合研究所によると、冷蔵倉庫事業者の約9割が中小企業で、新規倉庫への投資余力が無く、古い倉庫を利用しています。全国の冷蔵倉庫の約34%が、建て替えが必要とされる築年数40年を超え、建て替えに至っていません。一方で、冷蔵・冷凍食品市場は成長しており、今後も冷蔵倉庫の需給逼迫が続くとみられています。Thermo King製品の使用を検討していただいては如何でしょうか?

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