【市況レポート】「世界の気温が史上最高」「米国の二度目の利上げは不要」「日本のYCC修正等で円高調整に進むか」他 2023年8月

  • by 中尾 治美

世界平均気温が観測史上最高。無視できない自然的要因。

 毎日、最高気温が35度Cを超える異常な暑さに閉口しています。沖縄の気温が札幌の気温より低く、シンガポールの気温が東京の気温より低い。避暑地に沖縄、シンガポールを勧めると言う冗談ともつかない話をするこの頃です?
 世界気象機関(WMO)と欧州連合(EU)の気象情報機関“コペルニクス気候変動サービス”は、2023年7月の世界平均気温が観測史上で最高となる見通しで、古気候学者によると現在の地球は2つの氷河期の間に位置する間氷期の状態にあり、地球が最も温暖になる時期に当たり、この7月に地球が12万年ぶりの最高気温を記録したとしています。
 地球の温暖化要因は石炭・石油製品の化石燃料燃焼によるCO2発生より、自然が関わっている要因も無視できないのではないでしょうか?地上・海底火山活動、森林火災、海水温上昇によるサンゴ礁の白化現象・死滅、淡水・海水藻の減少・死滅、砂漠化拡大等々。一方、工業化以外でいえば、牛などの反芻動物のゲップにはルーメン内発酵で産生する温室効果ガスであるメタンが含まれ、牛1頭から1日当たり、200~800Lのメタンガスがゲップとして放出されると言われています。その上、焼き畑農業、農地開拓等も影響を与えていることは間違いがありません。

米国の二度目の利上げは不要。会社倒産の連鎖で世界経済が混乱する。

 米労働省が4日に発表した7月雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から18万7000人増加。失業率は3.5%で6月から0.1%改善。平均時給は前年同月から4.4%上昇。人手不足が賃金上昇の要因となっています。特に運送業、倉庫業、サービス業で人手不足が顕著ですが、移民の国である米国にとってこの問題は時間が解決してくれると考えます。FRBのパウエル議長が示唆している年末までの2度目の利上げは必要ないと考えます。早々に利上げを止めて利下げを真剣に考える必要があります。直近の破産例として、7月31日に1929年創業の老舗トラック企業、イエローコーポレーションが2024年半ばに返済期限がくる債務計13億ドルなどの借り換えが不調に終わり、事業停止に追い込まれました。米国不動産はこの5年間で返済満期を迎えるローンが400兆円あり、米国各地の大都市で、オフィスビル向けローンの延滞、不履行が頻発しています。返済不履行予備軍の物件は膨らんでいると言われています。パウエル議長には、これ以上、不必要な倒産劇を創り出し、米国経済だけでなく世界経済を混乱に陥れないでほしいと思います。

中国経済不振は長引くと予想

 中国の2023年7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が4ヶ月連続で50を割り込んでいます。米中貿易戦争の影響で景気が減速した2019年5月~10月以来の長さとなっています。不動産市場の低迷、輸出の停滞が重荷となっているようです。中国政府は7月31日に消費回復を促す施策を打ち出し、購入制限の緩和や税優遇で自動車販売をテコ入れし、ネットにつながる家電”スマート家電”などへの買い替えも支援するとしていますが、経済不振は長引くと見られています。

日本のYCC修正と米国債格下げで円高調整が現実味

 日銀の植田和男総裁は7月28日にイールド・カーブコントロール(YCC)、長短金利操作修正に踏み切りました。一時、$1.00=Yen140を切る円高に振れましたが、その本気度を見抜かれて、また円安、$1.00=Yen143まで戻りました。日銀が日本の長期金利の変動許容幅の上限を事実上1%に引き上げたことで、日本の国債利回りが上昇基調に戻り、米国外で最大の米国債投資家である日本マネーが米国から日本に流出し、米国債の需要悪化につながる可能性があります。日本の投資家が過去10年間の異次元のマイナス金利政策で海外流失した証券投資額は2022年末、531兆円に達しています。また、格付け大手フィッチ・レーティングは8月1日、米国債の格下げに動きました。最上位の”AAA”から1段階低い”AA+”に引き下げました。直ぐにその影響は出にくいと考えますが、植田総裁が日本の金利正常化に本格的に舵を切り、日本投資家の米国証券投資への投資金額が日本回帰を図ったなら、ドル円為替は早急に円高調整されること間違いありません。それこそ日本の年金生活者、弱者救済政策の即効薬に繋がると期待するところです。植田総裁にエールを送りたいと思います。

船舶金融市場で日本が躍進、欧州系銀行は後退

 ギリシャの船舶金融調査会社ペトロフィン・リサーチによると、船舶融資を手掛ける世界主要40行の2022年末の船舶融資残高は前年比0.3%減の2893億9000万ドル(約41兆円)となったと報告しています。ドイツ、北欧の金融機関の残高が縮小する一方、ギリシャ銀行が躍進、アジア勢のシェアが上昇し、上位40行に邦銀11行(2021年8行)がランクインし“日本が世界船舶金融において存在感を増している”としています。全世界の銀行の船舶融資残高は3500億ドル(約50兆円)とされ、リースや株式市場を含めた船舶ファイナンスは総額5250億ドル(約75兆円)に達していると言われています。船舶融資市場における欧州系銀行シェアは前年比4.7ポイント減で49.5%に低下し、初めて50%を下回りました。ロシアのウクライナ侵攻が影響を与えているのは間違いありません。

コンテナ運賃は前週比大幅上昇

 Drewryが3日に発表したコンテナ運賃指標WCIによりますと、総合指数は前週比11.8%増加の1761.33ドル/FEUと大幅に上昇しました。上海発ロッテルダム向け運賃が25%と大幅に急伸し、上海発北米コンテナ運賃、西岸・東岸ともに5週連続の上昇となりました。
これは主要コンテナ船社による運賃値上げの結果としています。

コンテナ船運賃指標(WCI) 8月3日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数1,76112%-73%
上海/ロッテルダム1,62025%-82%
上海/ロサンゼルス2,32211%-67%
上海/ニューヨーク3,3309%-66%

ONEは業績低下も利益確保で世界6位に躍進

 邦船3社の定期コンテナ船事業統合会社、Ocean Network Express (ONE)の2023年4-6月期業績は、税引き後利益が前年同月比91%減、5億1300万ドル(約730億円)となりました。荷物需要減少、船腹供給量増加それに伴い運賃競争激化の現状で利益確保できたことは大きいと言えます。また、ONEは通期見通しを未定としましたが、親会社の1社であるMOLは、年末から来年以降の荷物需要回復を見込み、通期税引き後利益を11億ドル(上期6億ドル、下期5億ドル)と見込んでいます。邦船3社の定航部門を引き継いで、コンテナ船事業に徹底するONEに対する期待は大きいと言えます。
 Alphalinerによると、8月7日現在、ONEの運航船隊は213隻、167万3600TEUとなり、世界6位のコンテナ船社となったと報じています。また、発注残は36隻、46万9,768TEUを抱えています。毎年、年間15万TEU規模の新造船投資を継続していくとしています。一方、2020年以降中古船購入促進と今年上期に2万4000TEU型新造船を加え、516万1,074TEUで断然1位を占めているMSCのTopは変わりません。また発注残、117隻、121万1371TEUを抱えています。2位のMaerskが船舶量を当面、維持していく方針のため、発注残119隻122万TEUを抱えるCMA-CGMがMaerskに変わり、将来2位に浮上すると予想しています。

2023年7月の新造コンテナ情報

 7月新造コンテナは180,546 TEU (Dry: 156,421 TEU, Reefer: 24,125 TEU)で、前月比、全体で、プラス5.1%、8,751 TEU増(Dry: プラス7.6%、11,002 TEU増、Reefer: マイナス8.5%、2,251 TEU減)でした。工場在庫は908,645 TEU (Dry: 834,331 TEU, Reefer: 74,314 TEU)で、前月比、全体で、マイナス5.7%、49,897 TEU減(Dry: マイナス4.7%、41,525 TEU減、Reefer: マイナス10%、8,372 TEU減)でした。6月とは違ってDryの注文が増え、Reeferの生産が減りましたが、工場から前月比、Dry5%、Reefer10%が搬出され、減りました。

戦争の反省と平和への祈り。ロシアの暴挙を許してはならない。

 8月は日本にとって暑い日が続きます。8月6日の広島、9日の長崎の原爆投下と15日の終戦記念日です。両市の原爆投下で亡くなった人は24万人以上といわれています。日本人は太平洋戦争を起こした責任と世界から戦争をなくす責任があります。国際連合安全保障理事会常任理事国の5ヵ国のロシアが2022年2月24日に武力でウクライナに侵攻し、いまだ占領・戦闘を続けているのを許すことはできません。ロシアのプーチン大統領の時代錯誤は甚だしいと思います。核兵器の使用をほのめかし、ウクライナ市民だけでなく自国民をも死の恐怖にさらしています。ロシアの指導者として失格です。世界の指導者は世界から戦争を無くし、自国民だけでなく、全人類を幸福にすることが求められています。

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