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黒田日銀総裁の10年間、異次元の金融緩和がもたらしたもの
黒田東彦氏が2013年から10年間勤め上げられた日本銀行総裁を今月8日に退任されました。デフレ脱却のために異次元の金融緩和を打ち出し、マイナス金利政策を採用しましたが景気を浮揚することはできませんでした。400万人の雇用を増やしたと言っても、増加したのは女性と高齢者が中心でした。
老後資金として最低2000万円が必要であると言われ、多くの国民が老後生活に大きな不安を感じました。その資金を確保するため、子育て主婦も定年退職者も求職に動きました。それが雇用拡大の真実のところかと思いますが、それでは給与は上がらない訳ですね。
黒田総裁が就任した翌年、2014年4月に消費税は5%から8%に引き上げられました。それから最終的に2019年10月に10%へ引き上げられました。その上、定年退職した老人の限られた年金からも容赦なく介護保険料も天引きされています。
黒田総裁が最後までこだわった2%の物価安定目標が達成できなかった要因は強い円だと思います。円ドル為替水準、$1.00=Yen 115~120の円高が輸入価格を押し下げ、消費物価を安定させていたと考えられます。雇用の流動化も給与上昇を抑えた一因です。
国は2022年度末、1029兆円の国債残高をかかえ、GDPの2倍を超えています。異次元緩和のために日銀が政府発行の国債の半分を引き受け、現金を市中にばら撒いた結果です。今後インフレ対策として金利を本格的に上げていかざるを得ない時、日銀はかなり高額の利払いに追い込まれ、国債価格低下に陥ることになります。
2022年3月、米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記録的なインフレを抑えるために2年間続けてきたゼロ金利政策を解除し、政策金利を0.25%引き上げることを決めました。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇を見込み、世界経済がインフレ圧力懸念を強めたためです。主要各国も米国に追随し金利を上げました。それは自国通貨を守るための自衛策でもありました。
しかし金融緩和に固守する黒田総裁は金利を上げませんでした。その結果、日本は史上空前の円安に見舞われました。2022年3月の$1.00=Yen 115から10月後半には$1.00=Yen148と29%もの円安に振れました。この結果、貿易収支は2022年3月以降2023年2月まで4000億円から2兆7000億円の幅で各月赤字を計上しています。一方、この急激で、記録的な円安は企業に円安によるコスト上昇を販売価格に転嫁するお墨付きを与えました。消費者も受け入れるほかありません。
黒田日銀総裁のバズーカ砲は最後には玉切れで国に大赤字をもたらし、国民を生活苦に追い込みました。経済政策には限界があります。景気は字のごとく、最終的に国民の気持ちを明るくする材料を提供することが景気を良くする一番の得策であると考えます。後任の植田和男総裁にその修正を速やかにお願いしたいと思います。
内部留保活用で日本経済を再生せよ
企業は2021年度に500兆円を超える内部留保を達成しました。10年連続で過去最高を記録しました。業種別で製造業が10.9%増。非製造業は4.4%増でした。規模別では資本金10億円以上が5.9%増に対し、1千万円未満は3.6%減で、円安恩恵を受けやすい大企業製造業に偏っています。内部留保を抱えている企業には、是非、日本を過去30年間の眠りから覚ますためにも内部留保を人的資源に投資し、イノベーションを創造し、日本を成長戦略の軌道に戻してもらいたいと切に期待しています。
米国経済、雇用・貿易ともに回復基調
米労働省が7日発表した3月の雇用統計の非農業部門の就業者数は前月から23万6000人増加し、失業率は2月の3.6%から3.5%に低下しました。平均時給は前月比0.3%上がりました。2月の0.2%からやや加速し、前年同月比の伸び率は4.2%となりました。米国経済は力強く感じます。
米国小売業協会(NRF)は7日米国主要港におけるコンテナ輸入貨物の最新予想を公表しました。2月輸入量は155万TEU(前年同月比26.8%減)、3月168万TEU(同比28.2%減)、4月186万TEU(同比18.0%減)、5月191万TEU(同比20.1%減)、6月199万TEU(同比11.8%減)、7月210万TEU(同比39%減)、8月213万TEU(同比5.9%減)と予想しています。7月には200万TEU超えを見込んでおり、年後半に向かって回復基調にあると言えます。
待機船とコンテナ運賃の動向
日刊カーゴによると(海事調査会社アルファーライナーより引用)、3月27日現在の待機船の状況は、コンテナ船299隻、船舶量ベースで145万9107TEU、全運航船復量に占める待機コンテナ船は5.5%で、3月13日時点から0.5ポイント下落しています。待機コンテナ船は2月末をピークに、3月に入って減少傾向にあります。春節が明け、サービス再開に伴いコンテナ船が再投入されていることが主要因であるとみています。商業的に不稼働状態の待機コンテナ船は120隻、60万6943TEU、修理メンテナンス中の船は179隻、85万2164TEUとなっています。
英国海事コンサルタント会社Drewryが4月6日に発表した運賃指数によるとアジア/太平洋航路、アジア/欧州航路、大西洋航路の主要8ルートの運賃指数は先週からは横ばい、しかし、依然としてCOVID-19前、2019年の平均値, $1,420 per FEUより20%高い水準を維持しています。今後数週間安定して推移するとみています。
コンテナ運賃指標 by Drewry | |||
航路名 | April 6, 2023(US$/FEU) | 前週比 | 前年比 |
総合指標 | $1,710 | 0% | -79% |
上海/ロッテルダム | $1,532 | 4% | -86% |
上海/ロスアンゼルス | $1,736 | -2% | -80% |
上海/ニューヨーク | $2,500 | 0% | -78% |
北米航路の今年度のService Contract (SC)更改交渉は終盤に来ているようです。船会社とNVOCCの競合が激しく、SC運賃が前年から50%以上下落するケースもあり、荷主は好条件を確保しているようです。アジアから北米西岸向けで$1,200 per FEUを確保した荷主もおり、海上運賃を前年から1,000万~2億ドル削減した荷主もいるとのことで、船会社にとって、現状はまだまだ価格交渉には厳しいものがあるようです。
2023年3月の新造コンテナ価格
3月の新造コンテナ生産数は151,027 TEU (Dry: 128,400 TEU, Reefer: 22,627 TEU)を記録しました。工場残は953,401 TEU (Dry: 883,765 TEU, Reefer: 69,636 TEU)で、工場からの出荷数は、130, 335 TEU (Dry: 114,925 TEU, Reefer: 15,410 TEU)となりました。3月の製造価格ついては、多くの発注者がコンテナを少量購入しているため、コンテナ価格の集計が遅れており、3月の製造価格は5月の報告になるかと思います。
船会社が苦悩する余剰コンテナ問題
現在、船会社の過剰在庫問題はまだまだ解決していません。多分、今年いっぱいあるいは、その後も暫く続くと思われます。多くの船会社が余剰リースコンテナの返却に苦労しているようです。世界各地のリース会社の蔵置場所はリース会社が貸し出した本数全量受け取るだけのスペースを確保していません。この問題は、北米、欧州で深刻です。その為、船会社は輸出地である中国、アジア、日本向けに空回送しています。現在、中国港湾地区のoff-dock spaceに7段積みで保管されているようですが、90%以上の空きスペースを既に使用していると言われています。
コロナ禍の3年間(2020、2021、2022)、船会社が北米・欧州から需要地である中国に空回送できなかった本数、言い換えると船会社が中国から新造コンテナを使用した総数は12 Million TEUを超えています。全量と言わないまでも、その半分以上は高運賃確保のために過剰に取り込んだ本数と言えます。特にリースコンテナの返却場所が限定される現状、船会社の余剰コンテナ問題解決にはかなりの時間がかかると思われます。
中国で20fコンテナが不足!その背景と今後の展望
一方、現在、中国でかなりの20fコンテナの需要が出ています。中国からの輸出貨物の小口化、重量勝ちな貨物が増えているせいであると言えるかもしれません。20fはもともと船会社もリース会社も発注量を、過去、控えてきましたから絶対量が40fHCに比べかなり少なくなっています。勿論、欧米からの空回送についても優先権は低いため、その影響が出ているものと思われます。中国からの輸出が低迷している中、中国での20fコンテナ不足のニュースは大変喜ばしいと思います。そうなると船会社、リース会社もその穴を埋めるために欧米、あるいは近場の日本からの空回送に力を入れることになります。新造コンテナの発注も増えます。しかし、それが一斉に市場に出回ると市場価格が需給バランスにより低下してしまいます。できれば、そのような同じような過ちは避けるべきであると思います。
私の記憶では、2008年9月に起こったリーマン・ショックの1年後に、船会社から上海で20f2000本の長期リースの注文が入り、その後、リーマン・ショックからの景気の立ち直りは早かったと思います。そのことを考えると、今回の中国での20f需要拡大はCOVID-19パンデミック、中国の“ゼロコロナ政策”解除の反動後、世界経済が持ち直している証となるのか?できれはそうあってほしいと祈るばかりです。