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中国の現状からゼロコロナ政策を振り返る
中国は3月5日に北京で開催された全国人民代表大会で2023年の実質経済成長率目標を5.0%前後に設定しました。2022年の経済成長が3%にとどまり5.5%の目標を達成できませんでした。”ゼロコロナ“政策で雇用が悪化、若年失業率は2022年17.6%となり、2021年より3ポイント以上悪化しました。税収も3.5%減りました。その為、中国政府は2023年から財政出動規模拡大を図り経済活性化をはかっています。財政赤字の対GDP比率の目標を2022年の2.8%から2023年は3.0%に引き上げました。
1月半ばには中国全人口の9億人がCOVID-19に感染したという報告が上がっていましたが、2022年12月7日に“ゼロコロナ”政策の大転換をして既に3ヵ月が過ぎています。集団免疫獲得を狙ったと言われていますが、実質的に地方政府の財政が枯渇し”ゼロコロナ“政策を実施することが難しくなったとも言われています。春節の国民大移動も21億人の移動が期待されましたが、国民が感染することを恐れた結果、実質16億人の移動にとどまった模様です。それが功を奏したのか?新たな爆発的感染は報告されていないようです。
もし今の状況が事実なら、言葉を換えれば、集団免疫が短期間にでき国民をCOVID-19から守ることができるなら、あの強権的”ゼロコロナ“政策は何だったのか?世界経済をここまで混乱させずに済んだのではないでしょうか?国際通貨基金(IMF)は、現状を好感し、1月30日に中国の2023年の経済成長率を4.4%から5.2%に引き上げました。中国の今後の動きに注目したいと思います。
米の高金利政策に異議
米サプライマネジメント協会(ISM)によると2月の非製造業景況感指数(サービス業)は55.1でした。これは市場予想、54.5を上回っています。2022年12月に2年7か月続いた50越えが一時途絶えましたが、今年の1月からまた50を超えて、この2月で2か月連続50を超えています。不動産、運輸・倉庫、宿泊・飲食等で好況感が出ています。サービス業の人出不足が賃金高をもたらしています。国内消費を高め、米国経済を支えている現状が見えてきます。今年に入り消費が順調に回復していると言えます。一方、製造業景況感指数は47.7とまだ4ヶ月連続で50を下回っています。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続の影響をまともに受けている現状があります。FRBが心配している高インフレも、理論的に間違っているかもしれませんが、高金利政策を取りやめる逆療法で意外と早く克服もできるのではないでしょうか?米連邦準備理事会(FRB)に対し、世界に影響を及ぼしている高金利政策への異議を唱えたいと思います。
米国西岸港湾労使交渉が妥結
米国西岸港湾労使である国際港湾倉庫労働組合(ILWU)と太平洋海事協会(PMA)とは交渉が妥結の見込みであると2月27日に共同声明を発表しました。それはアジアからの輸入ルートが西岸経由から東岸経由にシフトしていることに関係者が危機感を持ったことが挙げられています。現に米国西岸上げの比率は2021年61.5%から2022年58.8%と2.7%減っています。日本海事センターによると1月のアジア18ヵ国・地域発米国向け往航のコンテナ輸送量は前年同月比20%減の146.8万TEUで、4ヶ月連続で2桁減少を記録しました。一方、全米小売業協会(NRG)は港湾混乱を見込み、かなり前倒しで輸入した商品の過剰在問題が解決していないため輸入量が減り、それが西岸取扱量の減少に影響していることも否定できません。米国西岸港湾労使交渉は、焦らず、それなりに時間をかけたことで上手くいった例であると思います。もしも2022年7月1日に失効した労働協約が今回まとまらず、米国西岸でストが数週間行われたとすると100隻を超えるコンテナ船滞船、コンテナ不足、コンテナ運賃高騰、西岸から東岸にシフトされる貨物で米国東岸港湾混雑が引き起こされることが予想されます。COVID-19で引き起こされたサプライチェーン混乱が一時的に再現されることが考えられます。とにかく無事に収束しそうで何よりであると思います。
コンテナ運賃下落で待機船増加に拍車
英海事コンサルタント会社、Drewryが2日に発表したコンテナ船運賃指標は前週比2%減となり、8週連続の下落となりました。
コンテナ運賃指標 by Drewry Mar.2,2023 | |||
航路名 | US$/FEU | 前月比 | 前年比 |
総合指標 | $1,859 | -2% | -80% |
上海/ロッテルダム | $1,593 | -2% | -88% |
上海/ロサンゼルス | $1,948 | -1% | -82% |
上海/ニューヨーク | $2,772 | -4% | -79% |
海事調査会社AXS-Alphaliner(仏)によると今年2万3000TEU以上のコンテナ船32隻が就航します。コンテナ船復量上位11船社は今年、7000TEU以上のコンテナ船を計89隻就航させる見通しであるとしています。また、同社によると世界のコンテナ待機船腹量は366隻、161万6,569TEUで全コンテナ船隊の6.2%まで増加し、商業上の待機船は前年同期比21%から倍以上増加しています。にもかかわらず、スペースに余裕が出てきて消席率低下が懸念されるため、更に運賃競争が激しくなると予想しています。
ロシア特需による新造中古コンテナ価格とCLB運賃の上昇。中古車市場にも影響。
先日、TVニュースでロシアのスーパーマーケットの現状を報道し、今までと変わらず多くの商品が陳列され品不足はないと説明していました。それもそのはず中国からロシア向けに大量の一般消費財が輸出され、ロシア特需が出ているようです。欧州企業が抜けた後を中国企業が肩代わりし、必要な物資を上海からコンテナを使用してChina Land Bridgeで運んでいる現実が見えてきます。船会社、大手コンテナリース会社は欧米の制裁の手前、コンテナは提供できません。China Land Bridge鉄道輸送はコンテナに年齢制限を設けているため、第三セクターが新造コンテナを提供しているようです。その結果、世界的にコンテナが余っている現状においても、中国コンテナメーカーに注文があり、製造ラインはある程度埋まり新造コンテナ価格も上がっています。一方、ロシア特需で沸いている中央アジア地域では鉄道輸送混雑で、多くのコンテナが滞留しているようです。一説によると中国からロシアまで鉄道輸送費用が$13,000/40f、トラック輸送で$9,000/40fと言われています。ロシア特需で運賃高騰がみられます。
現在、関東で売却用の古いコンテナ需要が出ており、不足しコンテナ価格も上がっています。それはロシア向けの中古自動車輸出用の需要が出ているためと思われます。国際自動車流通協議会(iATA)によると、2022年の日本から輸出された中古車輸出台数は前年比1.0%増の123万7814台で、ロシア向けが213,526台、全体の17%を占めています。ここでもロシア特需が出ていました。中古自動車価格が高くなっている原因です。ロシア特需が無くても中古日本車の人気は高いのでロシア向けの輸出を止める英断が欲しいものです。
2023年2月の新造コンテナ価格
2023年2月の新造コンテナ価格は$50値上がりして、$2,150 per 20f。2月の新造コンテナ数は69,917 TEU (Dry: 58,580 TEU, Reefer: 11,337 TEU)。新造コンテナ工場残は932,709 TEU (Dry: 870,290 TEU, Reefer: 62,419 TEU)。先月から33,897 TEU減りました。2月に工場から出荷した本数は、103,814 TEU (Dry: 91,164 TEU, Reefer: 12,650 TEU)でした。
ノーマスク解禁で消費が活発になることを期待
コロナ禍で長い間外出を控えていた人間心理が屋内から屋外を渇望する現実は、人間行動学として世界万国共通のようです。不景気な日本でもマスクを着用した多くの人でデパート、ショッピングモール、テーマパークは賑わっています。スポーツ観戦に熱中して声援を上げるのはストレス解消に欠かせません。厚生労働省は来週3月13日からマスク着用は個人判断にゆだねることしています。幾つかのケースでマスク着用推奨をしていますが、強制ではありません。
COVID-19感染の恐れが薄れ、多くの人が安心して外出する喜びを取り戻し、友達と大いに語り、飲食を楽しむ時間を取り戻すことができることは人間の精神状態に非常に良いと言えます。ファッション需要、新車購入、外食増加で消費活動が盛んになることを期待したいと思います。但し、私の場合は、花粉症が先週から顕著でクシャミ、鼻水、涙が止まらず、鼻をかみ過ぎ、鼻血まで出てきて最悪の状態のためしばらくはマスクが離せません。