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中国のコロナ政策大転換と混乱の春節
2022年12月7日、中国政府はコロナ政策の大幅な緩和を発表しました。感染者の強制隔離、PCR検査を廃止しました。強権的ゼロコロナ政策の180度転換です。今年1月8日には入国時の隔離義務も廃止されました。3年近い監禁苦渋生活に耐えた市民の抗議デモの声が政府を動かしたのでしょうか?ゼロコロナ政策が破綻したため集団免疫獲得に舵を切ったのでしょうか?その両方が政府の政策転換に影響を与えたに違いないでしょう!
1月22日から始まる春節、その前後40日間で延べ21億人の帰省客、観光客の大移動が起こると言われています。今まで動けなかったタガが外れ、中国国民14億人のエネルギーが大きなうねりとなって動き出しています。中国のコンテナ工場は旧正月前の輸出ラッシュも今年はあまり期待できないと判断したのか?事務系は早々と1月1日から、工場は1月10日から2月19日まで旧正月連休にしています。一方、大都市で流行しているCOVID-19の感染力のスピードが速く、既に6億人が感染しているのではないかと言われています。医療施設が乏しい農村地区での拡散で混乱、収拾がつかなくなる可能性はどうでしょうか?各国は中国からの訪問者による変異株持ち込みの恐れに自己防衛せざるを得ません。日本のコロナ感染第8波で死亡者数が毎日数百人を超えている現状では神経質すぎることは無いと考えます。過去3年間の強権的“ゼロコロナ政策”による製造業、サプライチェーンの混乱、及び不動産不況による鋼材の冷え込みで中国経済の減速は、国民が集団免疫を得るまでの間、避けることができないのではないでしょうか?
米国、欧州の経済回復への期待
米労働省が6日発表した2022年12月雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から22万3000人増加し、市場予想の20万人を上回りました。失業率は11月より0.2%低下して、昨年の9月以来の低さとなる3.5%を記録しました。平均時給は11月から0.3%上昇しましたが、市場予測の0.4%を下回りました。米国労働市場では相変わらず人手不足が深刻で、それが所得を押し上げ、購買力を上げて、良い景気上昇スパイラルになることを期待したいと思います。
それを証明するように住宅ローン金利の高止まりの中、米新築住宅の販売が少し活気づいているようです。米商務省が発表した11月の新築戸建て住宅販売件数は64万戸で前月から5.8%増加しました。2カ月連続、前月比プラスとなりました。中古住宅の供給が少ない一方、住宅メーカーが過剰在庫処分のため価格を下げて販売していることが要因であるとの見方もあります。いずれにしても、それに付随する家具、家電製品、装飾品等の需要が増えることが予想されます。
欧州各国はロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー(石油、ガス、電力等)高騰で潤ったエネルギー企業に対して課税し、インフレで苦しむ家計支援財源を確保する動きに出ています。ウインドフォール課税と呼ばれます。北海ブレント原油価格は、2022年末に比べ一時6割高、天然ガス指標のオランダTTFの価格は5倍まで高騰しました。その利益をインフレに苦しむ国民に還元しようとしています。一方、欧州各国産業、企業組合はストライキを通して賃上げを獲得しています。それがインフレを助長する部分もありますが、一時の10%越えのインフレ率を下げることに成功しています。こうした動きの中、欧州経済復活は早いと考えられます。
スポット運賃の急激な落ち込み
Drewry Maritime Research(英国)が1月5日に発表した航路別スポット運賃によると、上海から欧州・北米の往航は、北米向けは下落が続いているものの、欧州向けは下げ止まりの様相です。
上海――>Rotterdam $ 1,874 per FEU 前週比10% up ($ 168)
上海――>Genoa $ 2.926 per FEU 前週比 2% up ($ 47)
上海――>Los Angeles $ 1,964 per FEU 前週比 1% down ($ 28)
上海――>New York $ 3,788 per FEU 前週比 3% down ($ 117)
欧州・北米から上海の復航は、実入りコンテナの獲得競争でしょうか?引き続き下落しています。
Rotterdamーー>上海 $ 785 per FEU 前週比 1% down ($ 4)
Los Angelesーー>上海 $1,138 per FEU 前週比 3% down ($ 31)
但し、Drewryは今後数週間も運賃下落を予想しています。
スポット運賃は上海からLos Angeles向けは2021年8月に$11,730 per FEU、上海からNew Yorkは2021年8月に$15,000 per FEU、上海からRotterdamは2021年10月に$14,990 per FEUと、夫々、最高価格を付けましたが、2022年に入り徐々に下落し、10月には各航路35~47%幅で急激に落ち込みました。その速さに驚きを隠せません。そして、ILWU/PMAの労使交渉も今年に持ち越され、まだ解決されていません。不安が残ります。
コンテナ余剰問題は中国にシフト、それに伴う船会社の秘策
船会社は運賃低下問題以外にコンテナ余剰問題を抱えています。使用中の半分以上はリースコンテナです。そのほとんどが長期リースですので、満期が来ないと返却できません。また満期が来ても毎月、返却場所、量が制限されています。リース会社が確保している北米Depotのコンテナ蔵置規模は10年前とほとんど変わっていないと考えられます。一方、船会社はMega-carrier化し、使用量は2倍、3倍になっています。物理的に船会社からの返却量を北米で受けることは不可能です。各主要港のOff Dock事情は、却って悪化していると考えられます。市街地域が港にせまり、コンテナ修理で火器を使用するためには、コンテナの蔵置場所はターミナルから遠く離れた場所に確保せざるを得ないのが現状です。
北米430万TEU余剰問題は、北米主要港湾での混雑が緩和され、コンテナの空回送がスムースに行われた結果、中国にシフトし、現在では中国主要港でコンテナ蔵置問題を引き起こしています。中国といえども主要港Off dockにも限度があり、一方、中国旧正月前の駆け込み輸出は空振りに終わりました。船会社は欠便で対応していますが、その中で”ゼロコロナ政策“の突然の中止が、港湾荷役に混乱、遅れを引き起こし、到着した船が1カ月近く待たされる滞船問題が発生しています。
その結果、船会社はその解消のために欧州航路の復航便の一部を通常のスエズ経由から喜望峰経由に変更して、コンテナ戻しに時間をかけて中国側での滞船問題、コンテナ蔵置問題解決策の一つとしています。一石二鳥の秘策と言えるのではないでしょうか?
2022年12月の新造コンテナ情報
12月新造価格は$2,000 per 20fで、11月より$50、2.4%の値下がりとなりました。2021年12月$3,550 per 20fと比較し、$1550、44%価格低下となりました。新造コンテナ生産数は177,150 TEU (Dry: 156,111 TEU, Reefer: 21,039 TEU)。12月末新造コンテナ工場残は、1,042,374 TEU (Dry: 969,384 TEU, Reefer: 72,990 TEU)です。12月工場出荷数は、178,552 TEU (Dry: 155,877 TEU, Reefer: 22,675 TEU)でした。2022年1年間の新造コンテナ数は、3,693,359 TEU (Dry: 3,410,110 TEU, Reefer: 283,249 TEU)となり、過去10年間で2021年、2018年について3番目に多く製造された年となりました。一方、12月に工場から引き取られた新造コンテナは178,552 TEU (Dry: 155,877 TEU, Reefer: 22,675 TEU)でした。そのほとんどが船会社に引き取られたと考えられます。船会社自身が過剰・余剰コンテナを抱えている中、リースコンテナをいくらかでもコストの掛からない自社コンテナに置き換えコスト軽減に努めると考えられます。中国では鋼材価格が下がっていますので、今年はコンテナ価格の更なる低下が予想されます。
日本の魅力が世界平和につながる
岸田首相は現在G7国を歴訪中です。岸田首相は、今年、重要な役割を担います。それは5月に広島で開催されるG7で議長を務めるのに加え、ウクライナのゼレンスキー大統領からウクライナへの招待を受けていることです。是非ウクライナに行き、世界に日本をアピールしてほしいと思います。世界の多くの人に日本を知ってもらう良い機会と考えます。ロシアの非人道的な蛮行に断固たる態度を示し、2度の原爆を経験している日本として核廃絶を訴えてほしいと思います。これは月面に1歩踏み出すくらい大変重要なインパクトを持っています。ひいては平和な日本・日本人を理解してもらうことに他なりません。日本・日本人をもっと知ってもらえれば全世界が平和に向かって歩み出すことを確信します。