日銀黒田総裁に進言
日銀の黒田総裁に物申したいと思います。諸外国がインフレ対策のために金利を上げている中、”ゼロ金利“政策という無策を続けることはやめてほしいと思います。そのために急激な円安の影響に見舞われている庶民生活をどう思われているのですか?輸入製品、ガソリン、電気代、小麦粉に始まる生活必需品の毎月の価格上昇は庶民生活を圧迫し続けています。円安効果は、既に円高対策を立て海外に工場移転をしたところには、ほとんど影響がありません。輸出産業はほとんどが大手企業で円為替の変動にびくともしません。日本経済新聞は50社を超える上場企業の純利益の上方修正は1兆円に迫ると報告しています。また大企業社員は高額所得者です。一方、中小企業は日本全体の雇用数約70%を占めています。そのほとんどの人がインフレの被害者です。コロナ禍ではボーナスどころか昇給も望めないと思います。
円ドル為替は少なくとも2017年11の$1.00=Yen114の安値から2020年1月の高値、$1.00=Yen103の間を2021年6月まで上下していました。ところが2021年6月を境に急激な円安に振れています。2022年7月15日には$1.00=Yen138を記録、現在は$1.00=Yen135です。約一年で25~28円、22~25%の円安です。それは輸入製品高、輸入原料高に反映されて庶民を苦しめています。一般庶民の所得を22~25%減額したに等しいと言えます。日銀が米国の金利値上げ政策に合わせて金利を上げていればこのような急激な円安は防げたと思います。多分、今頃は$1.00=Yen120前後に抑えることは可能だったと思います。少なくとも円投機筋に対してここまで円売りを浴びせられることは無かったかと思います。日本の力からいって、円ドル為替を$1.00=Yen110前後に維持することは問題ないと思います。為替は国の力です。日銀総裁、黒田さんには、是非早急に強い円に戻して庶民を守ってもらいたいと願っています。
世界のサプライチェーンにおけるさらなる混乱の懸念
8月5日に米労働省が発表した7月の雇用統計の非農業部門の就業者数は前月より52万8000人増加、市場予想の24万9000人を大幅に上回りました。失業率も市場予想は3.6%としていましたが、3.5%と下がりました。2020年2月以来の低水準に戻しました。その結果、多くの専門家は景気後退に入っていないと判断しています。
北米西岸港湾のILWU/PMAは7月1日以降も労使交渉を続けていますが港湾作業に大きな遅れは出ていません。しかしカリフォルニア州の“ギグワーカー”(AB5)法施行に反対するオーナー・オぺレーター型ドライバーに同調するILWU労働者がピケットラインを超えるのを拒否しているため、LA・LB両港の鉄道接続が今後悪化することが見込まれ、繁忙期の夏場に向かって深刻さが増して来るのが懸念されます。
今、欧州では、ドイツのハンブルグ、ブレーマーハーフェン、オランダのロッテルダム、ベルギーの主要港、英国のフェリクストウ、リバプールで、高いインフレ率に対しての賃上げストライキが多発しています。その結果、欧州の主要港で混乱が発生しており、その上、中国発の、上海ロックダウン後のカーゴラッシュが、今後、欧州港混乱に影響を与え、ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁の影響下にあるサプライチェーンの更なる混迷をもたらすことが心配されています。コンテナ船運航会社にとって定時運航比率がさらに低下することが懸念されます。中国経済成長は国内土地バブル崩壊問題を孕み、”ゼロコロナ“政策の徹底で伸び悩み、スポット海上運賃は低下していくとみられます。一方、北米・欧州経済もインフレが消費意欲を抑え込み、金利高が投資意欲にボディーブローのように効いて来ると考えられるので注意する必要があります。
独自路線を進み始めたONEに期待
日本経済新聞が8月6日(土)Ocean Network Express(ONE)が世界最大のコンテナ船主・シースパンを傘下に持つ米社アトラスの大手株主3社(アトラスの株式を68%所有)とコンソーシアムを設立し、同社の残り株式32%に対してTOB提案したと報じています。業界各紙は8日(月)の一面トップでこのことを扱っています。アトラスはNYSEに上場している主要な世界的アセットマネージメント会社です。シースパンはアトラスが全株所有している子会社で、2022年3月末時点で、132隻の船舶を所有し、その総船腹量は約1,147,980 TEUを保有する世界最大のコンテナ船主です。その後の新造船発注を加えると195万TEUの船腹量を有します。ONEも同社よりコンテナ船を28隻チャーターしています。
大手定期船運航会社、MSC, マースク、CMA CGM等は、2017年8月の韓進海運倒産を契機に今までの熾烈な規模拡大路線を見直し、事業多角化に動き出しました。従来の海上運送だけを請け負う海上運送会社から抜け出し、ロジスティクスに軸足を移し始めました。それとは反対に邦船3社はそれぞれの定航部門を統合して、2017年7月にOcean Network Express(ONE)を設立し、競争力をつけるため、規模拡大のMega-Carrier化に動いてきました。2022年8月現在その運航規模150隻、1,503,759 TEUを誇り、世界で7番目に大きい定期船運航会社です。現在発注している積載量20,000 TEU以上の巨大コンテナ船35隻とその他の発注船数を加えると、ONEの運航規模は205隻を誇ります。
2019年末、中国武漢に発生したCOVID-19は、世界各国にパンデミック拡散防止のロックダウンを余儀なくさせました。その結果、Supply Chainの寸断、物流混乱、各国の港湾作業麻痺、特に米国LA/LB港のコンテナ船の長期滞船問題は世界経済に大きなダメイジを与えました。それが世界の製造工場である中国からの輸出用コンテナ船スペース不足、消費地北米からの空コンテナ回送の大遅延を引き起こし、海上運賃の歴史的高騰を招きました。定期運航ができず不定期船社と揶揄されている現状ですが、COVID-19は定期船運航会社の重要性を再認識させたと思います。
邦船3社の定航部門を統合したONEは世界のMega-Carrierとの動きを比較すると反対の動きをしているように見えます。MSC、マースク、CMA CGM等のMega-CarrierはONE統合前の邦船3社、NYK、MOL、K Lineが、それぞれが目指していたコンテナ定航船事業以外での事業多角化路線に力を入れようとしているようです。実際、邦船3社はコンテナ定航船事業が悪い時はPCC(自動車船)、ドライバルク、タンカー、LNG, ターミナル、客船、ロジスティクス等のいずれかの事業が好調で船会社として非常に安定していました。その反対にONEはコンテナ定航船事業に特化しています。現在、他Mega-Carrierはコンテナ定期船会社離れを起こしているように見えます。ONEは他Mega-Carrierに比べ、周回遅れの船会社でしょうか?私はそうは思いません。事業多角化はある意味で、コンテナ定航船事業に専念できなくなる機会もでてくるでしょうし、その会社の優秀さ、集中力が分散される可能性は否定できません。今後はONEのような専業定期船運航会社が海上物流のハードウエアとソフトウエアを上手く駆使して最上のサービスを荷主に提供できると確信しています。
ONEがシースパンと関連を持つことを考えていたとは少し驚かされたニュースでしたが、私にとっては、やっとONEも来たかという印象を受けました。遅ればせながら船腹拡大に動きだしていましたが、稼ぎ出した利益を投資家に還元することだけでなく、将来の自分にために投資することも必要なことです。動きの遅いONEの動きに対して少し心配していました。ONEがアトラスの大手株主と組んでアトラスに資本参加することは、世界最大のコンテナ船主、シースパンと相乗効果を作り出せると思います。ONEが船舶所有事業に乗り出すことはシースパンだけでなく、ONEにとっても大きな力になると確信します。他Mega-Carrierがコンテナ定航船事業以外のロジスティクス等の事業多角化を進めている中で、やっとONEも定期船運航会社として独自性を打ち出したことの意義は大きいと言えます。そのことはONEの将来の飛躍的な事業拡大に期待ができると思います。
7月のコンテナ市況
新造価格は$2,700 per 20f。前月に比べ、$100、3.57%下がりました。新造コンテナは398,735 TEU(Dry: 374,212 TEU, Reefer: 24,523 TEU)、新造コンテナ工場残は967,646 TEU(Dry: 882,136 TEU, Reefer: 85,510 TEU)で前月より、233 TEU減となりました。