2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻してから、200万人の避難民がポーランドはじめ近隣諸国に着の身着のまま、雪の降るなか避難して来ています。一説には700万人以上の避難民が出るのではないかと予想されています。其の影響たるや想像を絶するものがあると思われます。ロシアの一方的な理不尽なウクライナ侵攻は全世界から非難を浴びています。プーチン大統領は核兵器使用可能性の恐怖も与えています。ウクライナを無理に自国陣営に留めて置くのは止めて、ウクライナ人が喜んでロシア陣営に入りたいと思わせる魅力あるロシアにしたらどうでしょうか?一つの救いはロシア国民からも戦争反対の声が上がっています。ロシア各地でデモが起こっています。しかし、デモ参加者で1万3千人以上の人が拘束されています。ロシアは軍事活動に関して虚偽の情報を広げると最大15年の懲役や禁錮を科す改正法を成立させました。ロシア当局が発表する以外の情報は発信できなくなります。ロシア憲法では思想及び言論の自由や情報伝達の自由は保障され、検閲も禁止されています。
国際社会は、ロシアに戦争を止めさせるために、制裁措置として国家間で国際金融取引を行うSWIFTからロシアを締め出しました。ロシアは輸出・輸入が実質的に難しくなります。ロシアは世界の約4%原油産出国ですが、その原油輸出にも制約がでています。国際市場に其の影響が出始めています。米国市場のWTI取引で原油価格が14年ぶりに高騰し、1バレル$130台をつけました。国際経済に与える影響も甚大です。民間企業もロシアとの取引から手を引き始めました。欧州連合(EU)の税関がロシア向け貨物の取り扱いを停止しました。通常、アジアからロシア向け貨物を積んだ超大型コンテナ船はロッテルダム港やハンブルグ港で中小型船に積み替えられてロシアに運ばれます。それができなくなりましたので、欧州各港での滞船、コンテナ滞留が、さらなる混乱をもたらす可能性が出てきました。其の上、アジアから欧州への迂回路的なユーラシア大陸横断鉄道、シベリア・ランドブリジ(SLB), チャイナ・ランドブリジ(CLB)も流れが止まっています。
COVID-19がやっと収まりかけ、世界経済も回りだした現状、ロシアのウクライナ侵攻はまた、我々の生活を迷路に追い込んでいくのでしょうか?
米労働省が3月4日発表した2月の雇用統計は非農業部門の就業者数が前月から67万8,000人増加しました。失業率は3.8%で、1月より0.2%下がりました。COVID-19の感染拡大もピークを過ぎて、消費を筆頭に米国経済が相変わらず力強く回復しています。
Shipping GuideがDrewry Maritimeが3日に発表した運賃指数を引用しています。アジア・北米航路、アジア・欧州航路、大西洋航路における主要8ルートの世界運賃指数(WCI)の総合指数は$9,279.46 per FEUです。前週から2.1%下落、2週間ぶりの落ち込みであるとのことです。しかし、前年同期比ではまだ81%高く、年初からの平均は$9,438 per FEUで、過去5年間の平均$3,071 per FEUより依然高水準を維持しているとしています。
2月の新造価格は$3,300 per 20f。1月の$3,400 per 20fより$100、2.9%の値下がりとなりました。2月の新造コンテナ生産は108,526TEU(Dry: 97,577TEU, Reefer: 10,949TEU)。1月生産個数より、358,325TEU少なく、77%の減少です。1月の生産が如何に異常であったか理解できると思います。中国の新造コンテナ工場残は654,840TEU(Dry: 592,628TEU, Reefer: 62,212TEU)で157,796TEU減りました。
デンマークの海運調査会社、Sea Intelligenceが北米での空コンテナが2023年2月に350万TEU積み上がると予想しています。太平洋航路往航の輸送日数が2月中旬の112日から今年末に45日まで短縮すると仮定し、太平洋航路往航の荷動きが年間1,900万TEUと1日毎の貨物フローモデルと合わせると、今年7月から北米ではアジア向けに積みきれない空コンテナが増加し続け、その結果、アジア向けに回送可能な船舶量を30%上回る350万TEUに達するとしています。しかし現実は、ロスアンゼルス港・ロングピーチ港の混雑は未だ解決されていません。そして7月にILWU/PMAの労働協約の更新があります。話し合いは今も続けられていますが、話し合いが決裂し、ストに突入、長期化することとなると、船会社の運賃は高止まりし、中国・アジアでのコンテナ不足が再現することになります。これ以上の混乱は避けたいものです。
Ocean Network Express (ONE)は4日、親会社である邦船3社(NYK, MOL, K Line)に配当金、41億3,200万ドル(約4,770億円)を15日に実施すると発表しました。2021年11月に実施した16億8,700万ドル(約1,466億円)の中間配当に続くものです。もちろん他各船会社も好決算を出しています。
米国バイデン大統領は2月28日に司法省や連邦海事委員会(FMC)と連携しコンテナ船社間の競争促進と海上運賃の低下に取り組むと発表しました。80%のシェアを持つ3つのアライアンスが運賃を大幅に上げていると批判しました。これも大きな誤解であると思います。定期船社は昔から運賃競争にさらされてきました。其の結果、1987年US Lineが倒産。1997年NOLがAPLを買収。1999年Maersk LineがSea-Landを買収してアメリカ船社は市場から消えました。その後も多くの定期船社が戦線離脱、合併されて現状に至っています。邦船社も例外ではありません。1964年の邦船6社体制から1999年の邦船3社体制後、規模拡大で生き残りを図り、2017年7月に3社定期船部門をOcean Network Express (ONE) に集約するに至った経緯があります。海上運賃の上昇は、2020年後半から始まりました。COVID-19の都市封鎖の反動需要、“巣ごもり需要”と“リベンジ消費”からです。まだ1年半しか経っていません。米国港湾のコンテナ船滞留問題が片付けば自然に解決する問題であると考えます。
日本経済新聞が3月8日に東南アジア鉄鋼最大手、ベトナムのホアファットが2兆4千ドン(約120億円)を投じ、年間能力で最大50万TEUのコンテナ製造工場を新設し、今年10~12月に生産を始め、23年中にフル生産に入ると報じています。自社で生産した鋼材を使用するので生産コストを低減できるとしています。事業の多角化を図ると同時にコンテナ不足に対応する狙いがあるようです。コンテナ供給場所の多様化が始まりました。
日本国憲法が施行されたのは1947年5月3日。その後、74年間、日本では一度も憲法改正が有りません。戦後、米国で6回、フランス27回、ドイツ59回の改定が行われています。日本国憲法の9条で戦争をしない、戦力を持つことを放棄しています。其の9条の平和主義があったから今まで戦争がなかったと考えている人もいます。また、米国の核の傘の下にいたからと言う人もいます。ロシアのウクライナ侵攻を見るにつけ、他国の軍隊が日本侵攻をしてきた時、日本憲法の平和主義で自国を守れますか?日本は平和憲法を持っているので攻めないでくださいとお願いできますか?日本人が自国を守らず米国に助けてくださいとお願いできますか?それとも“話せばわかる”と訴えますか?どのようにして自国を守りますか?自国を自国で守れない国は存在できません。それは歴史が証明しています。平和ボケの日本はロシアのウクライナ侵攻を他山の石とすべきではないのでしょうか!