今では少し古い話になってしまいましたが、今年4月中旬、小生の自宅に米国政府から2通の封筒が届きました。いつもの米国年金関係の手紙かなと思い開けてみると、小生と妻あてに$1,400ドルの小切手がそれぞれ同封されていました。何の説明の手紙も無く、只々、米国を象徴する自由の女神を背景に、薄い、細長い小切手に我々の名前と住所、それに金額が$****1,400*00と表示されているだけでした。直ぐに、これはバイデン大統領が発表した米国民を救済する小切手であると分かりました。しかし何故、米国民でない我々がもらえるのかと大変驚きました。翌週、小生宛に、その翌々週、妻宛にホワイトハウスのLetter headを使用し、バイデン大統領の署名付きの手紙が送られてきました。その内容は、3月11日にバイデン大統領がAmerican Rescue Planに署名したので$1,400の小切手を受け取っていないなら直接IRSに請求するようにとの連絡でした。
米国政府が、如何に急いで$1,400の小切手を米国国民に届けたかったか分かります。そのために説明文は後からの郵送になったのだと思います。バイデン大統領の熱意、誠意ある手紙の内容が国民に伝わらないはずはないと確信しました。この話は、如何に米国政府がCOVID-19対策に真剣に向き合っているか?国内経済立て直しを早急に目指しているか?同時に所得の少ない人の救済に対して手を尽くしているか考えさせられました。結局はこの小切手は我々にとって幻に終わったのですが、バイデン大統領から我々あてに届いた手紙は我が家の大切な宝となりました。
6月4日の米労働省が発表した5月雇用統計によると非農業部門の就業者数は前月に比べ55万9,000人増加。失業率は5.8%、前月から0.3%低下。コロナワクチン接種が進み、米国全体で経済活動への規制が減ったことが上げられます。しかし、一方では雇用のミスマッチによる労働力不足が原因で、雇用が十分伸びていないとの見方もあります。事実、COVID-19パンデミック前の雇用者数にはまだ760万人少ない状況です。今後は長期に影響を受けているサービス部門でのワクチン接種が進むことで労働市場は徐々に改善されていくものと期待されています。米国でワクチンを少なくとも1回接種した人の割合は、6月7日現在、50.91%とのことです。現在のCOVID-19ワクチンでは集団免疫ができるか否か不明ですが、ワクチン接種率が上がれば感染率は減少していくはずですので、より多くの人ができるだけ早く接種することが望ましいことは言うまでも有りません。その上で、バイデン政権の迅速かつ手厚い米国市民への経済援助が、米国経済に回復をもたらしていることは疑いありません。
5月末の新造コンテナ価格は$3,900 per 20f、前月比9.6%増、$215の値上がりです。トン当たりの鋼材の値上がりは、前月比14%Up。5月の新造コンテナ製造数は、617,349 TEU (Dry: 574,431 TEU, Reefer: 42,918 TEU)。4月に続いて今年二番目に大きい生産本数となっています。新造コンテナの工場在庫数は、376,736 TEU (Dry: 291,570 TEU, Reefer: 85,166 TEU)。
Shipping Guideが、Drewry Maritime Researchが3日に発表した運賃指数を引用しています。米国、欧州、アジア発着主要8航路の世界コンテナ指数(WCI)の総合指数は、$6,463.78 per FEUと前週比3.3%($207)上昇、過去最高を更新し続け前年同期の水準を310.1%上回り、年初からの平均は$5,299 per FEUで過去5年平均の$3,382 per FEUに比べ$1,917高くなっています。航路別の数値は下記のとおりです。
AA) アジア/欧州航路
上海――>ロッテルダム $10,462 per FEU「前週比3%($288)上昇」
上海――>ジェノア $9,900 per FEU 「前週比2%($238)上昇」
BB) アジア/太平洋航路
上海――>ニューヨーク $7,559 per FEU 「前週比6%($412)上昇」
上海――>ロサンゼルス $5,952 per FEU 「前週比4%($210)上昇」
CC) 欧州/大西洋航路
ロッテルダム――>ニューヨーク $3,720 per FEU 「前週比1%($50)上昇」
各航路過去最高を更新し、高値圏で推移すると予想しています。
Tritonの新造コンテナの発注数が5月末までで50万TEUを超えました。この分で行くと記録的な発注数になると思われます。ちなみに発注量の多いTop 5は次の通りです。(unit: TEU)
|
Name |
G.Total |
Dry |
Reefer |
No. 1 |
Triton |
526,180 |
504,570 |
21,610 |
No. 2 |
Textainer |
331,690 |
317,990 |
13,700 |
No. 3 |
Florens |
201,298 |
165,730 |
35,568 |
No. 4 |
Seaco |
124,300 |
89,740 |
34,560 |
No. 5 |
CAI |
86,990 |
76,990 |
10,000 |
船会社は1年前のCOVID-19パンデミックによるロックダウンで北米・欧州の主要港での深刻なコンテナ船滞船に加え、港湾地区の労働者不足、トラックドライバー不足のために北米・欧州からの空コンテナ回送が思うようにできない状態が今まで続いています。その上、世界的な巣ごもり需要で冬場のコンテナ不稼働期にもかかわらず、中国・アジアからの輸出が旺盛で、中国・アジア側での慢性的なコンテナ不足により船会社は引き続きリース会社の新造コンテナを必要としています。一方、コンテナリース条件は通常の5年長期リースが10年以上と長くなっているようです。これは船会社とリース会社の利益が一致しているからです。船会社は船型の大型化、サービス航路増加、COVID-19のような世界の人・物の流れを変える災難、スエズ運河座礁事故、サプライチェーンによるコンテナの偏在を考えた時、10年以上の長期リースのリース料金の低下は魅力が出てきます。その上、リース会社は5年リースする船会社より10年リースする船会社に対して優先権を与えます。2020年後半から今年に入り船会社は10年以上の長期リースでリース会社からコンテナを確保したのではないでしょうか。このことは今までのオペレーション・リース会社からファイナンス・リース会社に彼らの性格を変えたと言えるかもしれません。
最後に、6月5日、主要7カ国(G7)財務相会議は最低法人税率を15%にすることで一致したと報じています。本年4月、イエレン米財務長官が法人税率下げ競争をやめるように世界に呼びかけました。それに呼応して最低法人税率が15%に決まったようです。これは国同士の談合ではないのでしょうか?船会社同士で運賃を打ち合わせたら独禁法違反で訴えられます。コンテナ船定期運航会社は運賃競争の連続です。現在の高い運賃水準もコンテナ船の運航が通常に戻り、コンテナが余剰地から中国・アジアに順調に空回送され始めたら、また運賃の過当競争に戻ってしまうのではないでしょうか?自由競争という美名のもと船会社同士が採算割れで破綻をきたし、船会社がなくなったらどうなるのでしょうか?こんな不合理なことがあって良いのでしょうか?反対にこれ以上運賃を下げてはいけないというルールを作ったら良いのではないでしょうか?勿論、だからといって船会社から積んでくれた荷主に対して、キックバック、リベートは禁止です。本当に良いサービスで競争したら更に良い次元で競争ができると思います。それが最終的に消費者にとっても大きな利益に繋がるのではないかと考えます。