新型コロナウイルスによる経済ダメージとコンテナ業界への影響、日本の課題 / テレワークによる会社の変化 | コンテナ市況レポート 2020年5月

  • by 中尾 治美

              新型コロナウイルス(COVID-19)の世界の感染者数が5月10日時点で400万人を超えた。米国の130万人を筆頭に、スペインが223,000人、イタリアは218,000人、英国が217,000人と続く。ロシアも199,000人に達した。世界の死者数は278,000人を超え、米国が78,000人、英国、イタリアもそれぞれ3万人を超えている。4月上旬から新興・発展途上国の感染が拡大している。特にアフリカの急増が懸念されている。この感染症は貧弱な医療体制地域を襲い、上下水道が完備されていないインフラ整備の遅れた地域・国に、今後、拡散していくことは間違いない。

              米労働省が8日に発表した4月雇用統計は、失業率は14.7%。戦後最悪である。失業者数は714万人から2,308万人に急増。2008年から09年の金融危機の最悪時10.0%、第2次世界大戦後の10.8%を超えた。歴史上80年ぶりの最悪を記録した。パートタイム労働者を含めると20%を超えていると言われている。非農業部門の就業者数も過去最大の減少となり、前月から2,050万人減った。1~3月期の成長率はマイナス4.8%。4~6期成長率は前期比11.8%減、年率換算はマイナス39.6%に落ち込むと予想されている。
              米国では5月8日までに全米の6割以上の人口を占める31州(カリフォルニア州を含む)で一部業種の経済活動が再開された。欧州、アジアと世界各地で、5月に入り、経済や社会活動の制限緩和に動き始めた。感染第2波のリスクを承知の上で、これ以上の経済的ダメージを避けるためと、できるだけ早い経済回復を期待しての緩和政策である。但し出口戦略の見えない再開である。民主主義政治がいかにポピュリズム的政治に走らざるを得ないかを象徴しているように思える。

              米国に限らず、全世界であらゆる産業が雇用の持続力を失ってきている。産業によってダメージの受ける度合いには違いが出る。外出制限。消費活動の停滞。物流減少。自動車販売不振。原油価格の下落。第一次産業、第二次産業は消費の落ち込みで生産調整を余儀なくされる。第三次産業の飲食店、観光、旅行、ホテル業、航空会社は人の移動が無いために致命的なダメージを受けている。
              雇用の確保無くして会社の存続はあり得ない。我が国も欧米の国と同じように、まず、雇用を守るために中小企業への無利子融資手続きの簡素化を図ってほしい。日本に住む人一律に10万円を給付する“特別定額給付金”が5月1日から実施された。それも各自に書類の通知が来てから申請をして自分の口座に振り込まれる。時間がかかりすぎる。日本の場合は何時もtoo little too lateで問題である。後から幾らでもやり方は修正ができる。今は非常事態であるので政治家の皆さんにもっと時間を意識してほしい。

              船会社も例外ではないが基本的に生活物資、産業資材・部品はサプライチェーンに組み込まれてベースとなる荷物は今でも動いている。しかしバルク船・貨物船、タンカー、自動車船は消費の落ち込みの影響で数量が限られてくる。また、船を受け入れる港側で港湾労働者の確保、また港で感染症予防に対する下船船員の待機時間、交代要員の確保の困難さも出ている。コンテナ船も感染国からの船は出航してから2週間たたない船は沖待ちを余儀なくさせられている。コンテナ貨物も都市封鎖のために引き取り制限、配送遅延で輸入地に滞留している。船会社は相変わらず余剰地から需要地への自社コンテナの回送に追われている。
              4月の船腹量を9%減らしたために、米国、欧州、アジア発着主要8航路の世界コンテナ運賃指数(WCI)は1,492.10ドル/FEUと前年同期比11%上がっている。今年のコンテナ荷動きが10%減少した場合大手船会社全体で8億ドルの損失を被り、リーマンショック時と同じ運賃下落の場合は、全コンテナ船業界で230億ドルの利益を失うと予測している。

              我々が毎日目にしているこの感染者数、死亡数も何処か我々とはかけ離れたところで起こっているように思えて、徐々に現実味が無くなってきているように見受けられる。自分だけはかからないと言う意識があるのか?一方、日本政府は、今、世界から批判を浴びているPCR検査数量の少なさを指摘されている。実際にどのくらいの人が感染しているのか把握できていない。その数字無くして対策を打ち出すことはできない。自覚症状があってもPCR検査ができないため、自宅待機中に急速に容体が悪化し亡くなる事例が出ている。PCR検査を行う保健所は、人手不足であるなら人材を確保すべきである?防御服、医療マスク等が不足なら予算を確保すべきである。今必要なことは明らかである。医療崩壊を防ぐために危険従事者にはそれなりの手厚い補償が必要である。国民に早く安心を与えるためにも、国民の多くの人をカバーするPCR検査数の実施を、少しでも早くお願いしたい。466億円の税金を「安倍のマスク」に使うなら、PCR検査に使うか、医療従事者の働く環境改善に使うべきではないのか?

              4月末の新造コンテナの価格は$2,050 per 20f。中国の新造コンテナの工場在庫は968,210TEU(Dry: 923,094TEU, Reefer; 45,116TEU)である。新造価格は先月と変わらない。DryもReeferも若干増えている。

              今は、個人レベルでできる感染予防、外出を控え、手洗い、うがいの励行、睡眠を十分取り、自分で自分を守るしか方法は無い。我社も慣れないTeleworkを4月1日より実施している。3月に一部実験的に遠方通勤者から始めたが、我社でも問題なく取り入れられることが分かった。ITの活用。会社に出なくても、お客さんと面と向かわなくても、物の売り買い、サービスの提供は問題なくできる。新型コロナウイルスは我々日常の仕事のスタイルも変えようとしている。将来、事務所はいらないかもしれない?全員が集まる大きな本社事務所は必要ない。事務所経費を浮かすことが出来るのではないか?それを社員に還元すればもっと生産性が上がるのではないか?社員はTelework時代に合った仕事の成果の上げ方、自己アピールを考える必要がある。また、会社はそれを適切に評価することが要求されている。もちろん会社の仕事は一人の人間でできる訳では無い。皆の協力が必要である。それを公平に評価できれば良い。

              できるだけ早く新型コロナウイルスに効くワクチンが開発され、今まで通りの経済活動ができるようになることを望まざるを得ない。今後も、新型コロナウイルスは世界の産業に影響を与え続けるに違いない。仕事の質を変えると考える。また我々が変わらなければならないと考える。今回の新型コロナウイルスを始め、SARS, MERSなどのウイルスの感染症は、自然が人間の傲慢さに対しての警告と受け取れないだろうか?

              5月の連休中、外出を控え、ゴロゴロと3食昼寝付きで体重が5kgも増えてしまった。これは自分で解決すべき問題である。ウイルス問題の目途が付いたら体重を減らす挑戦だ。

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