コンテナ船社の寡占化と運賃競争の課題、上海Intermordal Show / コンテナ市況レポート 2018年4月

  • by 中尾 治美

  日本で4月は学校の新学期の始まりと同時に、新卒者の就職のスタート月でもある。そのためこの時期の通勤電車の込み具合はさらに激しくなる。都心へ向かう新入生、新就職者による朝の通勤ラッシュ時間の電車の混雑は日本の風物詩である。昔は主要な駅で駅員がお客さんのお尻を押して、電車に詰め込んでいた時代があった。現在はそこまでいかないが、通勤地獄の状態に変わりはない。日本の上場企業の約7割の会社の会計年度が、4月始まりである。その意味でも4月は我々にとって何か新しい挑戦月でもある。大きな希望に胸膨らませて、心地よい春のそよ風の中、日本国の象徴の花、桜が咲き誇る時期に、人生の新たな門出を迎えるのはそれなりに意義がある。

  Ocean Network Express (ONE)が4月1日に正式にスタートした。今まで邦船3社(出資比率、NYK38% MOL31%, K Line31%)が別々に定期船部門を運行していたものを、定期船専門会社、ONE、一社に集約したものである。コンテナ船運航隻数140隻、運航規模約146万TEU業界6位、世界シェア7%、全世界を85サービスルートで200以上の寄港地を網羅する。今まで各社独自の競争力アップ、コスト削減に努めてきたが、ONEに統合することで規模拡大によるスケールメリットの追求ができる。ONEは適正人員、世界各地のオフィスの統合、ターミナル統合、北米の鉄道会社集約等による効果で年間1100億円の統合効果を見込む。ONEには是非、邦船3社の良い処取りのONEになってほしいと切に祈っている。邦船3社の定期船統合会社、ONEにより、世界は100万TEU以上のコンテナ船運航規模の会社は世界で7社だけとなり、この7社で世界コンテナ船腹の90%を支配する寡占化が進む。

 中国コンテナメーカーの業績が改善している。世界最大手、CIMCの2017年コンテナ製造に限定する(CIMCはコンテナ製造以外の生産もしている)と、売り上げ前年比2.2倍の42億ドル、最終利益4倍、2.4億ドル、コンテナ生産量、ドライコンテナ前年比2.2倍の1,308,900TEU、冷凍コンテナは36%増、109,100TEU。世界2番目のシンガマスは、売上高、61%増、14億7667万ドル。43.44millionドルの黒字。コンテナ生産量、31.6%増、715,733TEU。今年も同じような需要増を見越している。中国コンテナメーカーは、全世界のコンテナ供給の95%以上を占める。3月末現在の新造コンテナ価格は、$2,200 per 20f, 新造コンテナの工場在庫は、780,000TEUである。

  世界で2番目にコンテナ保有数の大きなTextainerの2017年の業績は、運用コンテナ数、前年比4.4%増の328万TEU、売上高は、前年比1.1%減の4億4,490万ドル、営業利益、450%増の1億4,390万ドルで、当期損益は前年、5,280万ドルの赤字から1940万ドルの黒字に転換。2018年もコンテナ荷動きによるリース需要拡大を予想している。世界一のコンテナ保有数、500万TEUを誇るトライトンは、2017年の単年で、800,000TEUの新造コンテナを手当てした。ほとんどのコンテナを長期リースで供給し、売り手市場の為、返却条件もアジア返しの条件を受けてもらっているようである。彼らの中古コンテナの売却価格は、中古市況のコンテナ不足を反映し、買値の半値の高値で売却されるまでに値上がりしている。大手リース会社の収支は引き続き大きく改善してきている。
  Shipping GuideがDrewry運賃指数を引用している。それによると4月1日発効の値上げで、上海からNew Yorkが前週から$335(17%)上がり$2,354 per FEU, 上海からLos Angels は、$185(18%)上がり$1,230 per FEUに大幅上昇した。一方、新造大型船のデリバリーの予定の3分の2が第一四半期(1-3月)に集中するため、欧州航路の上海からRotterdam向けは、$190(14%)下落して$1,201 per FEUとなった。その影響で太平洋航路運賃も弱含みにならざるを得ないという見方が強い。船会社7社で世界コンテナ船腹の90%を支配する寡占化でもまだ多いとマーケットは見ているのか?それとも相変わらず懲りない不毛の運賃競争を最前線の営業部隊は良かれとしているのか?本来得るべく利益を無駄にしてまで、旧態依然の営業、単に巨大コンテナ船のスペースを埋めることを優先し、本船当たりのコスト削減を達成すると言う本末転倒なことを何時まででやっていくのだろうか?大手船会社がある一定の運賃以下での荷物の集荷を止めたら、運賃修復はいとも簡単に達成できるようにおもうが?スペースが先か?収益重視か?この命題を大手船会社は、真剣に考える必要がる。

  3月19日(月)から22日(木)まで上海で開かれたIntermodal showに参加した。弊社から小生も含んで4名の大勢で乗り込んだ。それは弊社が代理店を引き受けている4社の会社が此の度のIntermodalにBoothを出したこととも関係している。

Future Box Corporation
Kukdong MES/JJ MES
Thermo King
UES International (HK) Holdings Ltd.
(アルファベット順)

今年のIntermodal Showは、全体的に、活気に欠け、規模が小さくなっているように感じた。それは船会社、リース会社が統合、合併で少なくなっていくのと関係しているのか? 然しながら、新造、中古コンテナコンテナの必要性、活用性、汎用性は年毎、盛んになっているのを実感する。一方、小生は、弊社のスタッフに極力海外に出てもらいたいと考えている。一年に一度アジア(上海)で開かれる大きな展覧会、という意味合いから言いても、上海で開かれるIntermodalに極力優秀なスタッフに参加させるようにしている。コンテナに関わる仕事をしている業者の祭典の生の雰囲気を感じてほしいと思っている。日頃メールでやり取りしているコンテナメーカー、リース会社、いろいろな会社の担当と直接、顔を合わせることにより人的繋がりを深め、さらにコンテナの奥深さに興味を持ってもらいたい。そして更に高い次元の取引関係を目指してほしいと願っている。今我々に足りないものは流行のITの活用と、同時に従来通り国内国外問わず、出来るだけ多くの良い人と知り合いその人達と切磋琢磨し良い関係を築くことであると確信する。

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