朝5時起き、6時15分にホテルでタクシーを頼んで7時前にターミナルONEに到着した。とりあえず飛行機会社のカウンターに急いだ。と言うのは往復とも座席が3列席の真ん中で、二日前シンガポールに来る時、二人の大柄な若者に挟まれて身動きが取れず閉口したため、何とか帰りの便は通路側の席を確保したいと考えたためである。ところが残念ながら成田への帰りも満席で座席の変更不可。であるならせめて隣が女性であるなら座る座席も余裕が出てくるのでカウンターでそのお願いをしてみたが断られてしまった。ところがいざ搭乗が開始され小生の座席番号の所に行ってみると若い女性が両隣にいるではないか?これはラッキーと心弾ませていざ座ろうとすると、脇から“そこは私の席ですが?”と言う男の声、ひと座席見間違えてしまった大失敗であった。苦難の6時間後の成田は、午後5時で気温、6度Cの冷たい冬であった。あの別天地のシンガポールが恋しい。敢えて言うなら、小父さんのような乗客の少々無理な要望を聞いてくれる飛行機会社が出てきても良いのではないか?
一方、シンガポールのOcean Network Express(ONE)にお邪魔した。新本社事務社は、新開発地区のマリナーベイのMarina ONEの東棟16・17階を使用している。これ以上のセキュリティーは無いと思われるくらいセキュリティーは完璧である。受付でONEへ、何名と伝えてカードをもらい、エレベーター乗り込むと、エレベーターの中にはそれぞれの階のボタンは無く、カードを差し込むとその階に自動的に止まる。初めての経験である。ONEのビルの周りはまだいくつかの高層ビルが建築の最中であった。ONE事務所からはマーライオンがあるマリナー湾、シンガポールで一番の繁華街が見渡せる絶景の場所である。4月からの本格的活動のためにONEの社内は活気と熱気を感じた。3社の社員がONEと言う会社に合流し、今まで違う企業文化で培ってきた力を発揮し、それを一つの力強いうねりに昇華させる大きな試みである。ゆくゆくは合計で700名の陣容で、そのうち100名前後の日本人が働く。NYK, MOL, K Lineの3社からの混成チームのため日本人を始め現地スタッフについても知り合いがいる。是非3社の英知をこのONEのために生かして、既存にある物に対しての継続でなく、革新的な考えで全世界に飛躍してほしいと願っている。
現在、海運大手船社 10社( Maersk, MSC, CMA-CGM, COSCO, Hapag-Lloyd, Evergreen, Yang Ming, NYK, MOL, K Line)で全世界コンテナ運航67船社の運航船腹量の87%を占める。但し、4月以降邦船3社の定期船部門がONEに移行すると海運大手8社で90%近いシェアを占めることになる。大手船会社は、巨大コンテナ船の建造でしのぎを削っている。コンテナ船の大型化によってOne Slot当たりのコストを安くすることで価格競争力をつけるように動いている。
しかし現状のコンテナの動きは、荷物の生産地から消費地に動き、余剰コンテナはそこに溜まる。これはコンテナ化の宿命でもある。ある世界的な調査会社のデーターによると、全世界の2017年コンテナ輸送量、1億6231万TEUに対して、世界の滞留するコンテナの数は、3,466万TEUで全体の21%を占める。アジア・北米航路でアジアからの入超は、1067万TEU、アジア・欧州航路でアジアからの入超は、798万TEUである。そのため、船会社はそこの滞留している場所から、コンテナを空回送で需要地に戻す必要がある。そのための空回送費用は、コンテナ会社の運航費用の5~8%に及ぶ。その費用は、150億~200億ドルと言う試算もある。
その為、いかに少ないコストでコンテナを需要地に戻すか?その意義は大きい。一つは、消費地、或いはその近くからその空コンテナを使用して、需要地に戻す荷物を見つけること。古紙、廃プラスチック、鉄くず等。消費地は多くの古紙、廃プラ、鉄くずが出るには間違いない。その意味で、コンテナの需要地である中国が廃プラの輸入を昨年末に制限したのは各船会社にとって大きな痛手である。廃プラの品質に問題があれば、中国の規制に会う品質にして輸出する手も打てるわけである。官民挙げてやる価値はある。
一方、コンビニ、各家庭から出る食べ残しを家畜の飼料に再生、廃家の廃材、間伐材から燃えやすい販売可能なWood chipに替え使用あるいは輸出する品目に再生する。野菜の豊作、魚介類の大漁の余剰物に手を加え、保存がきく製品に作り替え、余れば輸出に回すか、輸出を目的に販売販路を官民一体となって余分な物、厄介視されていた物を活用する知恵を絞りだす事が次に要求されているのではないか?世界のどこかでそれを必要としている人がいるかもしれない。今までできなかったものが、時代の変わり目のいくつかの要素が絡み合い実現できるかもしれない。日本から毎年100万台を超える廃車が他国に輸出されている。ほとんどが自動車専用船を使用されているが、一部は古いコンテナを使用して輸出されている。これも日本からの余剰コンテナの解決に役立っている。
見方を変えて、ISOコンテナをいっそ折り畳みすることによって余剰コンテナ問題の解決を図ることも真剣に考える必要があるのではないか。コンテナリゼイションが出てきて半世紀が経とうとしている。現在も折り畳みコンテナについては試行錯誤の試みがなされているが、コンテナ運用の宿命を少しでも解決するために新たな箱、革新的なコンテナが出てきてもよさそうである。
2月末の新造コンテナ価格は$2,200 per 20f, 工場在庫は約700,000TEUである。今年の好調な荷動きに対して、コンテナリース会社、コンテナメーカーも船会社を支援する対応できる十分な体制は整っている。