中国経済の揺るぎない成長と冷凍コンテナの未来 / コンテナ市況レポート 2018年2月

  • by 中尾 治美

 1月中旬、弊社パートナー会社の年次総会に出席のため上海に飛んだ。二泊三日の短い日程であったが、上海は以前からすると更に進化していた。入国審査で顔写真、指紋検査が徹底されていた。指紋検査機械の精度が低いのか、何度もやり直しをさせられ閉口した。高速道路、一般道路の混雑は相変わらずであったが、以前のような騒々しいクラクションの騒音を聞く事は無かった。人々の身なり、マナーは格段に良くなり、その表情は明るく、活気がある。日本国内運送業大手の上海駐在総経理A氏のコメント、“中国は3年一昔”で変化している、と言っていたが同感である。中国の政策である“一帯一路”がアジア、中央アジア、欧州を絡めて中国内陸で着実に動き始めている。日本でメディア報道だけを聞いていると中国の実像を正確に把握することは難しい。

 今年の中国の旧正月(春節)休みは2月15日(大晦日)から2月21日の7日間である。但し、中国ではこの春節の前後を挟む1ケ月間に29億7000万人の民族大移動を見込む。その桁違いのエネルギーが想像もつかない国内消費を生み出し、日本をはじめ世界の投資先である中国の存在を再認識させる。2017年の中国の実質経済成長率は6.9%。2016年の6.7%を上回った。中国の世界に対する経済効果は中国の輸出力だけでない。海外からの国内投資、内需のための輸入も無視できない。
 国民一人当たりの購買力平価GDP(USドル)は、IMFの2017年10月の推計では中国が$16,624で、日本は$42,658で、中国はまだ日本の約40%である。然しながら、上海で見かける若者たちのファッションは東京以上に華やいでいる。その上、食文化は東京が及ばないほどに多岐にわたり質が高い。物の値段は、上海でコカ・コーラ(500ml)が約60円、 日本約100円、ミネラルウオーター(500ml)約30円、日本で約100円、ビックマックが約280円、日本で390円、タクシー代は上海のDown Townから浦東国際飛行場まで約1,400円、多分日本で50~60分乗ると1.5万円前後かかる。物価の価格差を考えると、上海では、日本人との実質的給与の違いは感覚的にあまりないのではないか。経済成長が早く毎年賃金が上がる中国人の方が感覚的に、日本人より生活が豊かになっていることを実感しているに違いない?

 中国が2017年9月から自動車をガソリン車、軽油車からEV(電気自動車)にシフトする政策を発表した。2019年から中国生産のEV(電気自動車)製造数を一定数量義務化した。これによって大手自動車メーカーの中国での電気自動車生産に火が付いた。中国の年間自動車生産は2800万台(2016年)。世界自動車生産数の3割を占める量は無視できない。ノールウエー、オランダがガソリン車、軽油車の販売を2025年から禁止、フランス、イギリスは2040年までに販売を停止する。自動車のガソリン車、軽油車から電気自動車への流を日本の自動車メーカーはどう捉えていくのか? 2018年3月期の純利益過去最高の2兆4000億円を記録するトヨタ自動車の地位は10年後、盤石か?日産自動車は、2022年までに中国に1兆円投資し、2025年までに全ての車種を電動車に切り替える。日本の自動車産業は大丈夫か?
 日本の上場企業の2018年3月期の純利益は、前期比27%増、27兆9615億円、2年連続で過去最高を記録した。その中で、ソニーは2018年3月期4800億円の連結純利益の見通しを発表した。これで間違いなく復活したのか?日本企業は、動きの速い世界需要についていけるのか?それとも積極的に世界の需要を予測し手を打っていくことができるのか?現在の日本企業は過去の遺産を食いつぶして生き残っているだけではないのか?日本は既に世界の競争から周回遅れではないのか?グローバリゼーションは世界との違いの認識ではなかったのか?日本企業の再生、復興は自分の立ち位置をしっかり把握することからの出発だと考える。

 1月末の新造コンテナ価格は,$2200 per 20f。中国の新造コンテナの在庫は80万TEUを維持している。現状の強いコンテナ需要(旧正月前)と旧正月明け後の需要を受けて中国コンテナメーカーからコンテナ価格値上げの圧力がかかっている。3月まで工場スペールは埋まっている。またコンテナメーカーは2シフト体制(2交代制)で対応し始めている。今年の新造コンテナ需要の強さを反映しての対策である。
 邦船3社(NYK, MOL, Kline)の定航統括会社、ONE (Ocean Network Express)が2月から集荷活動を始めた。業界紙もONE関連記事で賑わっている。4月からONEが運航するコンテナ船が動き出す。ONEは3社合計、1+1+1=3を狙ってはいない。コスト的には3社合計の2分の1か3分の2、生産性おいては、3社合計の1.5倍か2倍を期待されている。弊社が代理店を引き受けているリース会社、UESが、ONEの初めての長期リース、10,000x40fHCを昨年の9月に大手リース会社を押さえて獲得した。また、今年1月末のONEの第2回目5万本の長期リースのうち15,000x40fを獲得することができた。これで2回続けてUESはONE長期リースを獲得することができた。

 一方、ONEは現在、100本近いThermo King製のMagnum PlusをK Lineより引き継ぐ。そのためにThermo King社の海上部門代理店を引き受けている弊社は、ONE Japanの協力を得て、2月始に、神戸六甲ターミナルと東京大井ターミナルで、ONE のReeferコンテナ取扱業社の方、それぞれ数十人に参加いただき、午前座学、午後現物取り扱いのMagnum Plusのセミナーを開かせてもらった。ONEのThe Allianceの他2社メンバー、Hapag-Lloyd、陽明海運も既にMagnum Plusを大量に使用している関係上、ONEにも取り扱いに慣れてもらう必要がある。
 他冷凍機メーカー3社に比べマイナス40℃まで冷やす冷凍能力を持つMagnum Plusは、それだけでMagnum Plusを使用していない船会社に対して荷主の厚い信頼を勝ち取ることができる。一方、Magnum Plusは、他3社より15㎏軽量ということは、その分貨物を多く詰めると言う事である。その上、繊細な温度管理、急速冷凍能力はMagnum Plus特徴である。どんな外気温にあってもMagnum Plusの強さが発揮される。Magnum Plusの採用はReefer営業の強い味方となることを確信している。冷凍貨物は冷えれば冷えるほど品質保持が高くなる。鶏が先か、卵が先かの話ではないが、マイナス40℃冷える冷凍能力があるMagnum Plusは冷凍貨物の幅、機会を今後、ONEが広げていくことは間違いない。冷凍能力、マイナス40℃まで冷えるMagnum Plusを使用することによって、荷主を満足させることができ冷凍貨物が増えていく時代が来ていると確信している。

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