産業構造が劇的に変わる中、求められる企業の思考改革 / 2017年12月

  • by 中尾 治美

 世界景気の回復は底堅い。国際通貨基金(IMF)は2017年の世界貿易伸び率を4.2%と予測。但し世界の成長率は3.6%で、3年ぶりに貿易伸び率が成長率を上回るとみている。米国の11月の雇用統計は、米国非農業部門の雇用者数が前月比22万8千人増加。失業率は4.1%で前月と同じ。平均時給は26.55ドルで前年同月比2.5%増。欧州はユーロ圏の今年の成長率は2%を上回ると言われている。ドイツ、フランスを始めユーロ圏諸国の景気が上向いている。中国の年間自動車販売台数、2800万台(米国は1700万台)を見れば、製造業の拡大は続く。それが電気自動車に置き換わるとなると大変である。
 日本の内閣府が発表した7~9月期GDPは、年換算率で2.5%増。プラス成長は7四半期連続となる。財務省が発表した10月の国際収支は2兆1764億円の黒字。前年同月比、40.7%増。経常収支の黒字は40カ月連増。上場会社の2017年度の配当総額は前年度比7%増、12兆8000億円で過去最高額を更新する。日本企業が2016年末で保有する現金・預金は200兆円である。

 一方、世界はグローバル化とAIとIoT活用の生産性革命に直面し、産業構造の地殻変動が起こっている。いろいろな分野で、従来の主役が交代の危機にある。主役たちも時代に乗り遅れまいとして変革に取り組んでいる。例を挙げればきりがないが、再生可能エネルギー への移行が進む中、火力発電に使用されるガスタービンの需要減で、ジェネラル・エレクトリック(GE)、独シーメンスは電力部門で1万2,000人、6,900人をそれぞれ削減する。米玩具小売大手トイザラスの連邦破産法11条の申請。米国で最大の百貨店、メーシーズは728店の中で100店舗を閉鎖した。乗り遅れたところは買収されるか市場から退場を余儀なくされる。

 小売業革命を起こしたIT企業のアマゾン、電子取引(EC)企業のアリババは、商品の同日、翌日配達で消費と決済を取り込む。今年の中国の“独身の日”、11月11日の1日だけで、アリババは2兆8,500億円の売り上げを上げた。これは2016年の同じ日の売り上げの4割増。中国ではクレジットカード普及の遅れがスマホ利用電子決済を支えている。インターネット普及で、新聞、雑誌、テレビの存在意義が薄れ、グーグル、フェイスブックによるネット広告が既存の広告業界に与えた影響は計り知れない。デジタル化に乗り遅れた100年の歴史を誇る世界的な雑誌会社、フォーブスを始め、英エコノミスト、タイム誌もオーナーを変える。人手不足解消のための省力化投資が注目される。中国で人件費高騰、生産性を上げるために、ロボット需要が大いに伸びている。IoTとAIの活用は新たな需要を創造する。

 保守的企業の最先端を行く日本3大メガ銀行も例外ではない。原因は日銀のマイナス金利が重い腰を上げさせた。銀行店舗の削減、それに伴い行員の削減。三菱UFJ フィナンシャル・グループが9,500人。三井住友銀行が4,000人、みずほ銀行は1.9万人を削減する。日銀のマイナス金利により本業の銀行部門の儲けの減少。その上、電子マネーの普及と世界の電子商取引の拡大。世界的な余剰資金の存在。投資先を求めて世界を駆け巡る。その上、フィンテック(金融とITの融合)が異業種の参入を呼び込み、競争が激しくなっている。石橋を叩いても渡らない企業風土に将来はない。企業は、今までの枠にとらわれない思考改革が求められる。ITを活用し、生産性拡大を図り、目の前にある膨大な生Dataの中からIoTとAIで必要な情報を選別のうえ活用し、他社と差別化を図ることが必要である。

 11月末の中国の新造コンテナ工場残は630,000TEU。新造価格は$2,350 per 20f。
先月に比べ100,000TEU増えている。船会社、リース会社が2月16日(金)から始まる旧正月前の需要に備えての発注がある。

 もう師走である。後、数週間で今年も終わる。あっという間の一年であった。どれだけの結果を残せたか?納得できる一年であったか?いろいろあったが終わってみると全てが、現在への通過点である。今、この一瞬一瞬の充実した、悔いのない時間を過ごすこと。その積み重ねに重みがあることを自覚している。来年はどんな年になるのか?この充実した時間が自信を与えてくれることを確信する。2018年もワクワクする年になるに違いない。勿論それなりの苦難、苦労がある。それをエネルギーに変え挑戦をしていく。その分、充実感、喜びが増幅する。その飽くなき挑戦意欲は年齢に関係は無い。

 

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