内閣府が、11月9日に現在の景気が9月で58ケ月間を超え、戦後2番目に長い“いざなぎ景気”(57ケ月間)を超えたと発表した。2012年12月から始まったこの景気回復は、2019年1月まで続くと戦後最長記録となる。しかし、実感として、あまり景気の熱気を感じない。但し、土日、祭日のデパートの混雑、主要鉄道駅の人込み、平日、アフター5の繁華街はいつも老若男女で賑やかなので、景気回復が少しずつ着実に進んでいるのを感じる。2時間飲み放題何千円という広告が目立ち、11月半ばになるが、一時期のような華やかなクリスマス商戦は影を潜めている。一方、デパートでも、一年中何か安売りをしている。100円ショップも一時の物珍しさは無くなり、ほとんど手元に有り、ほしい物を探すのが難しい。物の価値が下がっている?この感覚はかなり以前から変わりがない。
米労働省の10月雇用統計は失業率が先月から0.1%下がり、4.1%となり、16年10カ月ぶりの低水準。米国の景気回復は2009年7月から8年を過ぎている。欧州連合(EU)は実質経済成長率の見通しを、2017年が2.2%、18年は2.1%、19年を1.9%としている。欧州経済は、既に5年間にわたって緩やかに回復して来ている。
中国最大の貿易商談会、広州交易会が11月4日に閉幕した。年2回開催される。今年の契約額は前年度比8.2%増、301億6千万ドル。前年実績を4期連続で上回った。契約金額がこれからの半年間の中国の輸出を占う指標となると言われている。
中国コンテナメーカー最大手、CIMCの今年1月から9月までの業績をShipping Guide が伝えている。世界的な荷動き回復によるコンテナ不足、代替需要でDry Container生産が、前年同期の41万9,000TEUから96万9,300TEU、Reefer Container生産は4万5,300TEUから6万7,000TEUを記録した。
現在の新造価格は、$2,300~2,350 per 20f。10月末までの新造コンテナの製造個数は260万TEUを超え、10月末の新造コンテナ工場在庫は約530,000TEUである。今年、2017年の新造コンテナ総数は300万TEUを超えることが確実視されている。
その中、業界最大手のリース会社の今年発注量が、10月末現在、70万TEU弱ととてつもなく大きい量に驚かされる。このままでいくと80万TEUを超えるのではないかと考える。その理由は何なのか?サウジの王室の対立、イラクのクルド問題など産油国の政治リスクによる石油価格の値上がり、鋼材値上がりによるコンテナ価格の大幅値上がりを見越しての大量発注?世界経済の回復拡大?それに伴う巨大船会社のメガコンテナ船の発注競争?2万TEUコンテナ船は欧州航路だけに投入される。年間1500万TEUの荷動き量がある欧州航路は実質、2万TEU船200隻を受け入れられるとすると、現在はまだ100隻強であるのでまだまだメガコンテナ船が出てくる可能性はある。それを見越しているのか?いずれにしても世界経済回復、貿易量の拡大、発展途上国の経済発展は海上コンテナ増加に繋がる。コンテナ価格にかかわらず、その数は右肩上がりでこれから増えていくことは間違いない。リース会社としては少なくともその需要が保証されているのであれば、コンテナ価格が安いうちに大量に仕込むことができれば競争力がでてくる。他社との差別化を付けることができる。一方、コンテナリース会社業界2番手、3番手のリース会社の今年の発注量は、5万~15万TEUである。業界最大手のリース会社にはるかに及ばない。
勿論500万TEUレベルのリース会社が毎年成長していくためには、少なくともその1割が経年劣化で入れ替える必要があるとすると、毎年50万TEU以上を購入していく必要がある。それでなければリース会社のコンテナの品質問題で荷主の評判を失うばかりか、修理費用がかさみ経営の足を引っ張ることになる。現在のコンテナリース会社のコンテナ稼働率は95~97%を維持している。もしコンテナ市場が少しでも悪くなると大手のリース会社は簡単に大きな痛手を被ることになる。船会社に貸し出しているコンテナの返却を全て同時に大量に受け入れられないからである。それは世界主要港のコンテナ蔵置場所、コンテナデポの世界的なスペース不足があげられる。その上、コンテナ修理業社の数か限られ、コンテナ修理の質の問題も見逃せない。
果たして巨大コンテナリース会社は船会社、利用者にとってプラスなのかマイナスなのか?コンテナリース市況は白黒がはっきりつけやすい。船会社は必要とするコンテナが無ければ、リース条件が割高になってもリースせざるを得ない。売り手市場か買い手市場かによってリース条件が違ってくる。但し、貸し手であるリース会社が多いと、船会社はそれなりに自分に合ったリース会社からコンテナの調達ができる。リース条件も多彩である。船会社にとってリース会社に対する選択が少ないと言う事は他船社との競争、差別化も図りにくい。まだまだ中小リース会社が生き残る道があるように思う。