ある中堅コンテナリース会社の役員が、彼らのコンテナ稼働率が現状97%であり、中国・アジアのデポにはコンテナが払底していて、新造コンテナの工場在庫は、ほとんどが長期リースで予約が入っている現状を説明してくれた。この状態は他のリース会社にとっても同じ状況であることは想像に難くない。今年、積極的に新造コンテナの発注をしているある大手リース会社は、既に今年だけで50万TEUの新造コンテナの発注をしていると言われている。一方、韓進海運問題でかなりの損失を出して、その回収にかなりのコストをかけざるを得ない大手リース会社、また親会社の事情で新造コンテナの発注に慎重であったある大手リース会社も、現状のコンテナ需要の強さに重い腰をあげざるを得なくなり、新造コンテナの発注をし出した。中国の新造コンテナの価格は、$2,200 per 20Fで、新造コンテナの工場残高は、41万TEU レベルを維持している。
Shipping Guideを引用すると、7月中旬に、全米小売業協会(NRF)が、7,8月の小売り関連コンテナ輸入量について、7月171万TEU, 8月175万TEUの見通しを出した。そして8月の輸入量が、2000年以降の単月輸入量として過去最高を更新すると予想している。また、荷動きは10月にも170万TEUに達するとみている。雇用、所得の改善、債務の削減が消費拡大を後押ししていると分析している。一方、米国の景気の好調さを証明する数値が、8月4日に米労働省から発表された。それは7月の非農業部門の雇用者数が、前月比20万9千人増。失業率は、前月から0.1ポイント改善して4.3%となった。
日本海事センターの発表によると、アジア発北米向け6月の荷動きは、130.6万TEU、前年同月比2.0%減であった。しかし、1~6月荷動き累計は、775.5万TEU (前年同期比、4.7%増)。一方、アジア発欧州向け5月の荷動きは、143万845 TEU (前年同月比7.5%増)、3カ月連続増加となった。アジア発欧州向け1~5月の荷動き累計は、655万240TEU (前年同期比、4.9%増)で5月単月とともに過去最高を記録した。
韓国唯一の遠洋コンテナ船社、現代商船の7月末のアジア発北米向けのコンテナ船の平均消席率が100%を超えている。スポット運賃は、7月末に比べ、$500 per FEU以上値上がった。韓国積み貨物は、8月中旬から10月にピークを迎える。そのため、8月中旬以降のPeak Season Surcharge (PSS)の上乗せで、更に運賃が上がることが期待される。外航コンテナ船の、アジアから米国西岸向けの運賃は、約$1690 per FEU、6月下旬から50%以上の値上がり。北米東岸向けは、約$2690 per FEUで30%値上がりしている。船の消席率は95%でほぼ満船状態とのこと。
邦船3社(NYK, MOL, Kline)が発表した4~6月期経常損益は、NYKが102億円の黒字(前年同期は 99億円の赤字)、MOLは58億円の黒字(同7億円の黒字)、K Lineが60億円の黒字(同225億円の赤字)で全社黒字となった。定期船部門だけで見ると、NYKが57億円黒字(前年同期は88億円の赤字)、MOLは62億円の赤字(同116億円の赤字)、K Lineは61億円の黒字(同123億円の赤字)と大幅に改善した。
邦船3社の定航部門の統合会社、Ocean Network Express (ONE)は、来年4月からの事業開始に向かって順調に準備が進められている。シンガポールに資本金、2億米ドルの事業運営会社が設立され、運航規模は、約144隻、144万TEUで、世界6位。今後2年間で運航規模は新造船投入により、約175万TEUに増加し、世界5位へと躍進する。
来年4月以降、世界のコンテナ船業界は、大手6社 (マースクライン、MSC、COSC+OOCL、CMA-CGM、Hapag-Llyd, ONE(邦船3社))で世界の63%のシャアを占めることになる。
コンテナリース会社も寡占化が進み、上位5社(Triton, Seaco, Textainer, Florens, Seacube)で全体の80%を占めていると考えられる。船会社にしてみるとリースする時にこれだけの大手リース会社があれば供給能力は十分であると考えられるが、ある意味、かなり危険であると言わざるを得ない。現状のような売り手市場でのリース条件は船会社にとりかなり厳しいものとならざるを得ない。長期リース料金の高止まり、返却条件がRound Use使用で、中国、アジアへの返却限定傾向。Leverage Leaseの併用で、北米、欧州からの抱き合わせリース。ある大手のリース会社がリース会社にとり有利な条件を船会社から引き出すと、他のリース会社もそれに追随し、同じような厳しいリース条件にならざるを得ない。それを飲まなければコンテナの手当ては難しくなる。これが現状であろう。
そのような状況を極力避ける意味でも、また、大手船会社が、大手リース会社に対して健全な競争原理を働かせるためにも、大手船会社が、中小リース会社を育てる余裕を持つことが必要である。何故なら、中小リース会社は、大手リース会社と競争するために、それなりの柔軟なリース条件を提示することで生き残りを図り、ある程度の規模の大手リース会社への成長を図る。そのような中小コンテナリース会社をうまく活用し、船会社もできるだけリース会社に競争原理を導入させるように図ることは船会社にとって重要である。現在, 世界No.1、No.3の規模を誇るTriton、Textainerが1980年前後に生まれた頃、船会社は中小リース会社を育てる余裕があったと言える。その結果、その当時名もない会社であったTriton, Textainerが既存の大手リース会社と競争し、現在の大手リース会社に成長することができたのである。その意味で、船会社が、大手リース会社をより良きパートナーとするためにも、中小リース会社を無視すべきでないし、敢えて、彼らを成長させることが、今後の船会社の成功の大きなカギを握ると苦言を呈しておきたい。