新造コンテナ価格の上昇も一服か? / コンテナ市況レポート 2017年5月

  • by 中尾 治美

気象庁が、ゴールデンウイークの最後の日曜日、5月7日の午前中に、九州から北海道にかけて黄砂を観測したと報じていた。東海・北陸地方から東の地方での観測は今年初めてとのことである。5月6日(土)の朝、女房が明日、黄砂が来るので今日中に洗濯を済ませたいと小生寝起き時に、無理やりパジャマを脱がされた。確かにこの時期、主婦にとり黄砂は悩みの種かもしれない。屋外の駐車場に止めてある小生の車も何年か前に茶色の土埃に車全体が覆われ洗い落とすのに苦労したことを思い出す。

しかし、この茶色の砂が、ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠から1万メートルの上空を約6000kmの距離を偏西風(ジェット気流)に乗ってやってくるのかと思うと、甲子園球場で熱戦を繰り広げた高校球児が甲子園の砂を記念に持ち帰るように黄砂が愛おしくも感じる。しかし黄砂は放牧、耕作地の拡大などの農業問題、生活のための環境問題、地球温暖化に関わる問題である。また、改善されたとはいえ中国から大気汚染物質、PM2.5も黄砂と一緒にやって来ることを考えると感傷的な気分に浸ってもいられない。

世界経済は回復基調である。米国の4月の雇用統計は非農業部門の雇用者数は前月比211,000人増加、失業率は4.4%、約10年振りの低水準となった。ユーロ圏の今年1~3月期のGDPの速報値は前期比0.5%増、年率換算で、1.8%の成長である。東南アジア主要6カ国の新車販売台数は前年度比14%増、316,736台、2ヵ月連続の2桁増。中国は資本規制による国内投資の過熱で景気に勢いが出てきている。バブル懸念はあるが、鉄鉱石等の資源輸入が増加し、その結果、資源国の景気回復を促している。

商船三井の世界最大の積載能力20,170TEU船、“MOL Triumph”が4月に就航した。しかしその世界最大積載能力はマースクラインの’Madrid Maersk”, 20,568TEUによって1ケ月後に塗り替えられた。そのマースクライン船も5月に出てくるOOCLの新造船、“OOCL Hong Kong”, 21,394TEUによって世界最大積コンテナ船の載能力は更新される。今年、20,000TEU超えのコンテナ船の就航数は、22隻を見込んでいる。そのためスペースの余剰感は否定できず、船会社の運賃修復はまだ難しそうであるが、新造コンテナ船の竣工は今年を境に2018年、2019年と減っていくため、今後の荷動き次第では運賃修復は大幅に改善されることが見込まれる。

邦船3社、NYK, MOL, K Lineの定航部門が邦船1社に統合され、来年4月から新会社のオペレーションがスタートする。今年の7月には新会社が設立され名前が発表される。資本金3,000億円(郵船38%、商船三井31%、川崎汽船31%の出資比率)。コンテナ船運航規模は約140万TEU、世界シェア7%で世界6番目の規模の船会社。世界の船会社のリーダーとして大いに期待したい。

4月から始まったアライアンスメンバー組み換えの混乱が、まだ船会社による需要地へのコンテナ空回送に支障をきたしているようである。中国の新造コンテナ(水性塗料)の価格は、$2,200 per 20f と落ち着いている。コンテナメーカーの水性塗料の生産システムが本格的に稼働してきているようである。現在の新造コンテナの工場在庫は60万TEUを超えている。世界一の規模を誇るコンテナリース会社は既に30万TEU近い新造コンテナを発注してこれからの需要に備えている。ここでどのくらいの投機的発注ができるかはコンテナリース会社にとってこれから大きな差が出てくるものと思われる。新造コンテナのほとんどがリース会社の投機的発注であるが、一方、船会社の発注も30%近く占めている。今年のコンテナ需要予測が見えてくる。

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