韓進海運破綻の影響と今後は? / コンテナ市況レポート 2016年10月

  • by 中尾 治美

8月31日の韓進海運の倒産は荷主、港湾業者、ターミナル会社、傭船主だけではなく、コンテナを提供しているリース会社に対しても大きな被害を与えている。特に大手リース会社は韓進海運に大量のコンテナを貸し出してきた。世界7番目の大きな規模を誇っていた船会社である。その結果、韓進海運貸し出し最大手リース会社は20万TEU近くのOn-leaseコンテナの回収に走ることになる。その回収費用は、韓進海運の未払いリース料を含めて被害額は100億円近く見込まれている。リーマンショック後、一度韓進海運不安説が出たが、韓国最大手船会社である。その不安の影を掻き消すような資金力のあるリース会社は既存大手リース会社が躊躇する隙間を埋めるように韓進海運のリース数を増やしていった。数社を除きほとんどの大手リース会社が甚大な被害にあっている。長期リース、マスターリース料金が歴史的低下の中での韓進海運の倒産は大手リース会社のさらなる再編をもたらす結果になるのではないか?

世界をリードする船会社、マースクラインが買収先の船会社を探しているとのこと。2Mに現代商船が加わった時、マースクラインが現代商船買収の噂が流れたが、マースクラインは別の船会社を買収対象にしているとのこと。彼らの戦略は、意中の船会社が倒産寸前まで待って買収交渉するので買収価格を最小限度に抑えることができ、またシェアの拡大も狙えるのである。大型コンテナ船による1スロット当たりのコスト削減、他船社買収による規模拡大で生き残りをかけるにしても、かなりの資金力が必要である。船会社は、それ以外に生き残る道はないのか?今一度、コンテナそのものに注目してみてはどうであろうか?以前に提案したことがあるが、現在のコンテナの形状(後ろドアからの荷物の積み下ろし)は、コンテナ構造上、安全、安価で船倉内で、7~9段積を可能にしているが、実際の荷物の積み下ろしは、狭くて暗くて、特に重いものを積み込むのに問題がある。時間もかかる。その点、弊社が代理店をしているFuture Box社のSliding Door ContainerはSide Openなので荷物の積み下ろしはフォークリフト2台~3台を使用することで積み下ろしの効率を飛躍的に上げることができる。しかも全体が一目瞭然で見渡せ安全な積み付け作業ができる。もし全てSide Open Containerを提供する船会社が現れたら荷主に対して大きなインパクトを与えられるのではないか?コンテナ船の大型化投資よりはるかに安いコストで競争力を高めることができるのではないか?

多くの船会社は高運賃が期待できる冷凍コンテナにその比重を移している。熾烈な競争環境下、冷凍コンテナの投資意欲は衰えず、この9月だけでも次の船会社が冷凍コンテナフリート増強(代替分含)を図る。

 Hapag-Lloyd     5,750 units(5,000x40f HC, 750x20f) 10月投入
 Maersk Line     14,800 units (年内の投入)
 NYK     4,700x40f HC(今年から来年初めの投入)

ここに大きな問題がある。現在使用されている冷凍機の冷媒はR134aが主流であるが、R134a Unit Maker(Daikin, Carrier, StarCool)はその代替冷媒を模索中である。例え代替冷媒を提案できたとしても、既存のUnitは使用できない。使用する場合は新たなUnitを購入する必要がある。R134aの購入費用は製造が規制されているため徐々に値上がり、Maintenance費用が上がることが予想される。

一方、弊社が日本代理店を引き受けているThermo King社のMagnum Plusは冷媒R404aを使用。その代替冷媒としてR452aを勧めている。何故なら、冷凍能力はR452aもR404aと同じくマイナス40℃冷やす能力がある。R134a unitはマイナス30℃が精いっぱいである。R404aはCop21の規制の適応外である。そのため急いでR404aをR452aに入れ替える必要は無い。R404aとR452aとの相性が良く、既存のMagnum PlusでR452aをそのまま使用でき、R404aとR452aのMixでの使用も可能である。R452aはトラック部門で使用されているので製造が増えると値段が下がる利点がある。

Magnum PlusのUnitが構造上シンプルで頑丈にできているので修理費用が少ない。アルミ製コンプレッサーは錆に強く長期使用に耐えうる。R404aのガス充填回数も少なく済む。これは多くのReefer container service dealerが証言している。

Magnum Plusの特徴>

  1. Highest Cooling Capacity   → 冷凍能力は外気温が高いところで発揮され、10年物のBoxを6時間でマイナス40℃まで冷やす能力がある。
  2. Widest Operation(+30℃から-40℃)  → アイスクリームメーカーから高い評価、信頼を得ている。
  3. Tight & Accurate Temperature  → Chilled Cargoについても -0.1℃の温度管理ができる。
  4. Fast Pull-down  → 力があるため短時間で設定温度到達し、そのあとは余裕で指定温度を保つため結果として省力である。
  5. Lightest Machinery Weight  → 他社と比べ1台当たり約80㎏軽い。船の大型化に伴い軽量なUnitは非常に重要である。船の省力化に大いに貢献する。
  6. Lowest Energy Consumption  → 究極的に、上記の点からMagnum PlusはReefer Containerの一生を通じ省エネである。

結論から言って、軽量で繊細な温度維持、パワフルな冷凍能力を持つMagnum Plusを採用することで、Reefer業界で他社を圧倒的な競争力で制し、Magnum Plusを採用すると言う小さな挑戦で将来会社の収益に大いに貢献すること間違いないと確信する。

現在の中国新造コンテナ価格は、$1400 per 20f、水溶性塗料の場合は$100 程高い。中国メーカーの新造コンテナ在庫は、64万TEUである。行き場を失った韓進海運使用分のコンテナが市場から一時的に消えた状態のため、コンテナ市場では少しタイト感が出ている?しかし北米でのクリスマス商戦の峠は既に越し、コンテナ不稼働期の冬場に向かうためリース会社にとって引き続き苦難の時代が続く。

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