夏になると今も微かに記憶にのこっている。それは60年ぐらい前、小生が小学校に上がるか上がらない頃の話である。父親の実家がある長崎県の外海に面した寂れた半農半魚の村に母親に連れられて帰省した時の話である。その当時住んでいた島から定期船とバスを乗り継ぎバス停を降りると薄暗くなっていた。そのバス停で降りたのは母親と背中に背負われた弟と小生の3名。バス停からは20分ほど畑道を歩かなければならない。辺りには人家は全く見えない。電灯は無く月明かりだけがこれからの行き道を照らしていた。畑道を黙々と2人で歩いたのを覚えている。すると生い茂った野菜畑の畝の何箇所がざわざわと動き、何かが我々の方に近づいてくる。道の際まで来ると盛土の上に腰を下ろし、足を組み薄いタオルみたいな物を頭から被り、腰のあたりからキセルを取り出し、父の祖母がやるように刻煙草を丸めてキセルの先に押し込んでタバコを吸う仕草をしている。
大きさはよく見ると小生と同じぐらいで顔はタオルで頬被りをしているのでよく見えないが仕草はまるで祖母が刻煙草を吸う時そのものである。そのことを母親に言うと「見るんじゃない!」と叱られた。母親は小生の手を強くグイグイ引いて急ぎ足になっていた。手を引かれながら恐る恐る好奇心で振り返り、振り返りその様子を見ていたのを思い出す。そこはよく狸が人を化かす評判の場所とのことであった。それは小生にとって最初で最後の民話に出てく狸、狐が人間を化かすと言う体験をした遠い、遠い昔の貴重な夏の夜の話である。その時代は利口な狸がいて人を化かして人間に対して縄張りを主張していたのかもしれない。人間と動物が微妙な関係で共存していた時代だったのかもしれない。今の世の中は野生動物には住みづらいに違いない。
日本の3月決算上場企業1298社(金融を除くー全体の85%)の2015年4~6月期決算は連結経常利益が前年同期比24%増、その株式時価総額で97%を占め、純利益は28%増。それは原油価格の下落(8月6日現在で$44.66 per barrel)と円安($1.00=124円)がもたらしたものである。2016年3月期通期の経常利益は前年度比8%増え、前期に続いて最高になると予想する。その中でもトヨタは群を抜いている。2015年4~6月の販売台数は250万2000台。同時期の連結決算は、純利益6463億円。これは前年同期比10%増で四半期ベースの最高を記録した。但し、1~6月の世界販売台数ではVWに4年ぶりに首位の座を明け渡した。但し、トヨタの純利益、6463億円はVWの3642億円、GMの1366億円をはるかに凌いでいる。販売はアジア、欧州、中近東で伸び悩んでいるが北米がその穴を埋めている。
今年1~7月の世界の企業が株式、社債発行からの調達金額は約1兆9600億ドル(約240兆円)。その内訳は株式で約5600億ドル、社債発行で約1兆4000億ドル。このペースで行くと過去最高額を記録した2014年の3兆ドルを超える可能性もある。企業は米国の金利が値上がる前の成長資金の確保。投資家は安全な投資物件に、資産を移し始めている。
日本、中国、アジアからの輸出は9月にピークを迎えるが、欧州航路の不振が影響し今年は大きな改善が見込めないようである。それに伴い 邦船3社は7月31日に定航部門の今期の業績見通を引き下げた。
邦船3社定航事業部門業績
15年3月期実績 | 16年3月期見通 | ||
7月末発表 | |||
NYK | 売上高 | 6,963 | 7,720 |
経常利益 | 98 | 275 | |
MOL | 売上高 | 7,870 | 8,330 |
経常利益 | -241 | 50 | |
K Line | 売上高 | 6,774 | 7,200 |
経常利益 | 206 | 120 |
単位:億円
中国コンテナメーカーの新造価格は$1650 per 20f と先月と変わっていない。工場在庫は110~120万teuを抱えている。そのためコンテナメーカーはコンテナ価格を維持するために8月、9月の見積もりを控えている。これだけの新造コンテナの在庫があれば何か起こっても十分船会社の需要に対応できる。
一方世界一の保有量(330万teu)を誇るリース会社、Textainerの4~6期業績が発表された。リース料収入は1億2.830万ドル(前年同期比3.8%増)、税引前1億1.100万ドル(前年同期比5.0%増)、当期利益4.030万ドル。コンテナ稼働率は2Q平均97.3%、現状で96.6%とまだかなりの高率である。他の大手リース会社も同じような結果と考えられる。
今年からリーマンショック後のコンテナ価格が値上がりした高価格のコンテナの5年長期リースが満期を迎えてくる。船会社が2010年に長期リースとして仕込んだ新造コンテナ価格は平均$2.500 per 20f である。そのため船会社は長期リースを入れ替えてコスト削減を図ることが予想される。リース会社にとって買い手市場の長期リースの入れ替えになるため、長期リースの条件もかなりリース会社に取って厳しい物になることが予想される。この夏の需要が不発に終わると既にスペキュレイションで購入した新造コンテナの投資資金回収に支障をきたすことになる。船会社の長期リースの入れ替えは、リース会社にとってデポ在庫を増やすことになる。それはリース会社に取って稼働率の低下の要因になる。