コンテナ船の業績、黒字予想から一転か?/コンテナ市況レポート/2015年7月

  • by 中尾 治美

7月初旬から弊社が代理店を引き受けている米国メーカーの欧州Topが息子さんの大学入学前の休みを利用して1週間ほど日本に来られた。彼の希望で広島、京都旅行のスケジュールのお手伝いを承った。弊社が利用している旅行会社に彼の意向を伝え、広島はビジネスホテル、京都は日本の生活文化を知ってもらうために日本旅館にしてもらった。値段は彼の意向も有って、華美でなく通常我々日本人が泊まる旅館を予約してもらった。一方、半ば強制的な夕食、朝食付きの日本旅館の日本食が口に合うか心配であったが、これも日本文化を理解してもらう良い経験になると考えてお勧めした。

一番心配したのは新幹線を使っての移動である。驚いたことに日頃から利用している新幹線の切符に英語表示が無いことに気がついた。日本の新幹線の主要駅での乗り換えは我々日本人でも容易ではないので、旅行社から新幹線の切符を彼に送る時、そのままでは理解が難しいので移動日毎に、親子二人の切符をコピーし、そのコピー用紙に切符の内容を英語で手書きして少々説明を加えて切符と一緒に送ってやることにした。これだけ外国人観光客が新幹線を利用しているのに切符に英語表記が無いのは不親切である。多くの外国人観光客が新幹線の切符を見て途方に暮れているのではないかと想像する。JRに早急の解決策を願わざるをえない。

東京でお会いした時に聞いたら、新幹線も問題なく乗り降りでき感謝してくれた。また、夕食、朝食付きの日本旅館と畳の部屋の異文化に非常に滿足していた。横浜に来られたので鎌倉の鶴ヶ岡八幡宮と大仏を案内した。あいにくの雨であったが好奇心旺盛に質問をし、シャッターを切っていた。こんなに喜んでいただけるとは思っても見なかった。鎌倉はかなりの雨にも拘らず多くの外国人で賑わっているのに驚かされた。中国語、韓国語、英語が飛び交っていたし、欧米、東南アジア人も多く見受けられた。いつも思うのは彼らから日本のことについて詳しくて教えられることが多い。我々も日本の歴史、文化を再認識する必要がある。

鎌倉3

政府は2020年の東京オリンピックに合わせて訪日外国人客(インバウンド)2000万人の目標を掲げている。日本政府観光局(JNTO)によると2014年度の日本全体のインバウンドは1341万人。2013年に比べ3割増加。京都市内の主要ホテルの稼働率は14年度は88%と1年前から1ポイントの改善である。名古屋は2013年9月より12月まで連続で前年同月実績を上回った。札幌市の2014年の稼働率は83%、前年度80%を上回った。和歌山県では14年の外国人宿泊者数は30万人超え。13年に比べ10万人増え過去最高。2014年の外国人の延べ宿泊者数は47都道府県の内40都道府県で増加した。客室単価も上昇している。2014年度の都道府県、市町村の地方税収は38.4兆円と13年度より1.7兆円増えている。5年連続の増加。訪日外国人客の3割増加が貢献している。インバウンドを地方に取り込むことで地方の活性化ができることは間違いない。

今年、2015年第一四半期のインバウンドの消費額は約2兆3000億円でGDPを0.1%押し上げている。1~3月期の東京都のビジネスホテルの稼働率は85.5%。名古屋は8ヶ月連続で前年同月実績を上回り、4月は88%の稼働率を達成。外国人比率は36%で、前年同月比5ポイント増である。

中国のクレジットカード、銀聯カードの日本国内の2015年1~6月累計取り扱い額は3600億円、前年同期の3倍、2014年の年間取扱額、2800億円も上回った。中国、韓国、アジアの人をいかに日本に来てもらうかがインバウンド、2000万人の鍵である。日本の魅力は東京でなく地方にあることをもっと訴える必要がある。円安が海外投資家の日本の不動産投資を誘い、マンション投資、賃料の上昇を見込んでオフィスビルの購入で東京都心の海外の投資家の投資が盛んになっている。海外投資家の目を地方に向けさせることも必要である。

7月9日、IMFは2015年の世界の経済成長率を4月の3.5%から3.3%に引き下げた。それに伴い米国を3.1%から2.5%、日本を1.0%から0.8%に引き下げた。一方、ユーロ圏は1.5%、中国は6.8%と据え置いた。英国の海運コンサルタント会社、Drewryによるとコンテナ船業界全体の今年の業績は年初80億ドルの黒字を予想していたが、ここに来て収支ゼロか、一部船社は赤字になると予想の見直しを行った。それはグローバルな平均運賃の下落率のスピードが早く、主要4航路の運賃は前年比で32%の下落を見込んでいる為である。その背景には1万TEU以上のメガコンテナ船の新造発注、93隻+オプション10隻がある。その中の2万TEU船は49隻+オプション10隻である。そのメガコンテナ船が四半期毎に10~15隻アジア・欧州航路に投入され、既存船はところてん方式でその次に規模の大きい航路に順繰りに回される。コンテナの荷動きに関係なく大型船が既存船を押し出し、その大型船のスペースを埋めるために無用な運賃競争に陥る危険性をはらんでいる。

これは今の中国のコンテナメーカーにも当てはまる。現在の新造価格は$1,650 per 20fに下がっている。中国の新造コンテナ工場在庫数は百万TEUを超えている。コンテナメーカーは自社工場のスペースを埋めることを最優先に安売りしているとしか考えられない。船会社、リース会社の注文は値段を下げたから増えるものではない。リース会社は先を読み、需要が見込めない場合はいくら新造価格が下がっているとしても注文は控える。これは過去の苦い経験から学んだことである。需要の読み違いとコンテナ値段の底値でいい買い物をしたと考えたが、実際需要は起こらず、1年以上在庫として寝かした痛い経験がある。結局かなりの期間工場で寝かした後、新古品としておまけ付きで安くリース市場に出さざるをえなかった。これでは単に安いからと言って飛びつくと高い買い物となってしまう。しかしコンテナ工場側にも事情がある。簡単に労働者をレイオフして工場の稼働率を下げるわけにはいかない。それは次回の工場再開の時に良質の労働者の確保が難しくなる。その上コンテナ品質の維持が難しい。そんな長い期間でなければ安売りして工場を稼働させてコンテナ品質を維持したほうが長い目で見れば得策と考え力のない競争相手が店じまいするのを待つ戦略とも取れる。

競争は必要であるが、しかし何事も過ぎたるは危険である。単なる価格競争から抜けだし付加価値で勝負する。我々もお客様に対してお客様が抱えている問題を共有し、その解決の提案が出来る会社でありたいと常に考えている。

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