邦船3社は来期も黒字見込み。次の一手は? /コンテナ市況レポート/2015年5月

  • by 中尾 治美

短い人で土、日を挟んで5連休。有給休暇を2日取ると9連休と久しぶりの大型連休となった5月初旬。長期の休み疲れを癒すためにもう少し休みが欲しいと希望されている方もいるのではないだろうか?その昔、渋滞の高速道路でトイレに行きたくても行けず家族が大変な思いをしたことを思い出す。休憩所についてもトイレは長蛇の列。トイレの順番待ちに更なる苦渋の経験を強いられた。特に女性に深い同情を禁じ得ない。その結果、我が家では連休中、車で遠出することは無くなった。現在は休憩所数の増設、大型化でトイレも拡充され、高速道路でのトイレ難儀は少なくなっていると推察する。しかし今年は連休が長いので渋滞も分散化され少しは治まるのではないかと考えていたが、連休の始め、終わりはビックリするような数の車が早朝、深夜を問わず各高速道路を何十キロと埋め尽くすTV映像を目のあたりにした。小中学校が休みの家族旅行はこの時期必須である。車を使わなければ飛行機、新幹線。しかしあらゆる交通機関に乗るのもこの時期は、それなりの覚悟がいる。これもこの国の風物詩、年中行事と考えればこの国がいかに平和であるかを感じる。一方、都市の居残り組もこの連休中は街中に人が少なく、いつもと違う開放感を楽しめる。

日本は徐々に復活している。3月の有効求人倍率は1.15倍、完全失業率は3.4%。日本経済新聞が2015年度の中途採用計画数は前年度実績に比べ、8.7%増えると予想。非製造業は11.1%増、製造業は4.0%増とみる。日経平均株価は15年ぶりに2万円台を回復。2014年4月から15年3月の国の税収、39兆6796億円は前年同期比12.3%増、15年5月に収める3月期決算の法人税を足すと52兆円を見込む。これはリーマンショック前の07年を上回ることになる。日本企業の海外子会社の2014年の収益は6.5兆円と過去最高を記録。円安をうけて、トヨタ、日産を始め国内大手の自動車会社が、今年後半から来年に向けて輸出の国内生産回帰に力を入れる。観光庁によると2015年1~3月の訪日外国人の消費額は前年同期比64.4%増の7066億円。四半期として過去最高を記録、初めて7000億円台に乗せた。2020年東京オリンピックに向かって訪日客、2000万人誘致目標の観光業は地方活性化の切り札でもある。

日本製品の品質、Made in Japanの信頼性はもとより、それをもっと進化させたMade by Japanese companyの信頼のブランド化を更に推し進めることも必要である。海外同業社も日本企業から多くを学び飛躍したいと願っている。海外の消費者も日本製品の品質だけでなく、おもてなし文化、こだわり文化、お客様を満足させてくれるサービス文化に大いに期待を寄せている。その意味で、日本の企業はもっと自信をもって海外進出をしてもいいのではないか。今までは日本文化の現地同化であったが、これからは本物の日本文化の独自性を根付かせることも必要であろう。

新造コンテナ価格は$1800 per 20f。中国の新造コンテナの工場残もまだ80万teuを上回っているようである。そのため大手のリース会社も値段が下がっているが、投機的な新規発注は控えているのが現状のようである。邦船3社が2016年3月期の見通しを出した。3社とも定航部門の黒字化を見込んでいる

 

  邦船3社 定航部門 2016年見通し (単位:億円)

    15年3月期 実績 16年3月期 見通し 為替見通し
日本郵船 売上高 6,963 7,720 $1.00=115円
経常利益 98 275
商船三井 売上高 7,870 8,330 $1.00=118円
経常利益 -241 50
川崎汽船 売上高 6,774 7,200 $1.00=118円
経常利益 206 120

日本船社の日本船社でなければできないサービスのブランド化を図り、その中でまた日本郵船ブランド、商船三井ブランド、川崎汽船ブランドを前面に打ち出して差別化を図ってほしいと願っている。おもてなし文化、こだわり文化、お客様を満足させてくれるサービス文化のDNAを引き継ぐ100年を超える歴史を持つ邦船3社に期待したい。きっと世界の荷主からの日本船社に対する好感度、期待度が上がると考える。

今年の12月、10か国からなるASEAN経済共同体(AEC)がスタートする。一人当たりのGDP、$56,000のシンガポールから、一番貧しい$1,000のカンボジアまでの経済格差がある大きな経済圏である。その上、社会主義国であるベトナム、ラオスの政治体制の違い、イスラム教、仏教、キリスト教の宗教の違い、それに伴う文化の違いに基づく人口6億を抱える経済圏となる。ある意味で、日本はこの複雑な経済圏のそれぞれの国の成長を手助けできる最も相応しい国の一つであると考える。この点でももっと多くの日本企業がAECに出て行って彼らとともに、おもてなし文化、こだわり文化、お客様を満足させてくれるサービス文化で世界経済に貢献できると確信する。但し、単独での進出は止めて現地企業と組むか、現状をよく把握しているタイあるいはシンガポールの企業と組んで進出することをお勧めする。

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