コンテナ市況レポート 2013年12月

  • by 中尾 治美

11月中旬、駆け足でシンガポールと香港を回ってきた。何度か訪ねているうちにその街が身近に感じられてくる。香港空港でバゲージクレームを抜けてゲイトの外に出ると目の前に鉄道、エアポートエクスプレスがある。いつもは空港からタクシーで香港、九龍に行っていた。今回は鉄道に初めて挑戦。車内は新幹線並の快適さで申し分ない。約30分で九龍に到着。そこから無料バスでホテルへ。帰りも同じ方法で空港まで行った。気持ちは香港人である。鉄道は往復券でHK$180。タクシー料金はHK$300ぐらいなので3分の1の料金である。タクシーの薄汚れた、狭苦しい室内に比べ九龍まで外の景色が満喫できる。これはお勧めである。空港から九龍まで2駅である。

今月で2013年も終わりである。毎年、痛感することであるが、我々が生活している一日、一週間、一ヶ月と過ぎてみると実に早い。楽しいこと辛いことも一瞬の出来事である。しかし、その時間の早さの中で問題解決の真摯な取り組み方が自分の長い人生に影響を与えるように思われる。投げやりにならず一生懸命取り組む態度が必要であろう。そんなちょっとした気の持ちようが、人生の方向を決定づけるように思われる。直ぐに報われることは少ないかもしれないが、めげない前向きな姿勢が人を強くし、成功に導くものと確信する。

米国の非農業部門の11月の雇用者数は前月比、20万人増えた。失業率は7.0%、前月比0.3%下がり、2008年11月以来の低水準である。米国経済は順調である。欧州経済はドイツが牽引している。第3期メルケル政権は法定最低賃金、時給8.5ユーロを打ち出し内需拡大を図る。英国経済の7~9月期のGDPは前期比年率換算で3%を越えた。これも英国政府がカナダ中央銀行総裁のカナダ人を7月に英国中央銀行総裁に抜擢した結果に違いない。英国政府の国を超えた人事が英国政府に新たな経済成長をもたらした。これから安倍政権に求められていくのは各企業を賃上げに導く手腕である。物価は既に上がっている。商品の値段は同じでも分量が減り、実質値上げになっている。東日本大震災の被災地、東北は人手不足。日本全体でも来年4月の消費税8%の値上前の駆け込み需要が日本経済を押し上げている。政府は増税後の景気を支えるために、5.5兆円の経済対策を打ち出した。但し来年4月の消費税増税により年約5.1兆円を我々は支払うことになる。3%の増税、アベノミクスが2%のインフレ目標としたら、どうしても個人消費に力強さをつけるには最低6%以上の基本給のベースアップが必要である。来年の春闘の組合活動に期待したい。

日本郵船調査グループが11月28日公表した年次報告書によると、今年8月末時点の船腹発注残は、669隻、4.9 million teuで、既存船腹規模の29%に当たる。また、今年の竣工船腹量は267隻、1.4 million teuで、増加率は6.5%。一方、来年の船腹量増加率を最大9.0%増と見込み、コンテナ船の竣工が最大となると予測する。船会社にとってまだまだ気が抜けない状況となる。その上、来年の5月に誕生する巨大アライアンス、3P (Maersk, CMA-CGM, MSC) の市場占有率が38%に及ぶことに対して、英国の荷主協会(GSF),北米東岸港湾労組(ILA)等から懸念が表明されている。一方、Hapag-LloydとCSAVが提携について協議していることが明らかになった。実現するとコンテナ船腹量で99万teu以上となり、Maersk, MSC, CMA-CGMに次ぐ世界で4位の船会社となる。船会社の巨大化、アライアンスの巨大化は時代の流れである。そのためにはお互いに理解でき同じ価値観を共有する船会社であることが必要である。それなら邦船3社(NYK, MOL, K Line)で定航部門を統一したらどうであろうか?その規模(1.3 million teu)は、世界第3位のCMA-CGM (1.5 million teu)に迫る。世界で活躍している日本の企業にとっても安心して、日本流サービスの物運びに信頼を寄せる荷主も多いのではないか?

中国の新造コンテナの工場在庫は40~50万teuである。現在新造価格は$2,000~$2,100 per 20f。資材の値上がり、人手不足による人件費の高騰。閑散期の注文減少による工場稼働の難しさ。そのため中国の大手コンテナメーカーが来年、1~2ヶ月工場を止める噂が出ている。売値の値上がりは避けられないかもしれない。しかし旧正月の時期を入れて長期間工場閉鎖となることが予想されるので、その後旧正月明けの労働者がどのくらい戻ってくるか?また熟練工の確保が出来るかどうか?今度は工場閉鎖後のコンテナの品質の問題になる可能性がある。

主要リース会社の稼働率はまだ90%を維持しているようである。各社スペキュレイションで造った工場在庫の出が悪く、Dryコンテナの投資効率が悪いため、需要が高いReeferコンテナの購入に力を入れている。船会社からの返却コンテナの場所による偏在が顕著になっている。中国、韓国、台湾、東南アジアでの在庫が増える傾向にある。古いコンテナの売却をできるだけ早め、在庫費用の軽減を図ることが望ましい。

日本人には何か大きな目標が必要であると誰かが言っていた。それがあれば国民全体一丸にになって頑張ることができる。2020年の東京オリンピックはその意味で我々日本人にとって大きな意義がある。常に将来に希望を持ち前向きに物事を考えることは人の人生を大きく左右するし、国も同じことが言えるのではないか。全ての人が同じ意見であることはありえない、それは生まれ育ち、極端なことを言えばそれぞれのDNAを尊重するということかもしれない。それをお互いが認めつつ一緒に生きることを模索する努力が必要であろう。そこには民族、国、宗教の枠は無い。人と人との繋がりに”思いやり”、”気配り”があれば人の輪は広がっていくはずである。平和無しには各国の繁栄は無い。人類の発展もないことは明らかである。少し説教じみてきたがこれも年の終わりなのでお許し願いたい。そして来年が皆様にとり良い年になりますように祈っております。

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