コンテナ市況レポート 2013年6月

  • by 中尾 治美

5月末の1週間シンガポールに滞在した。昨年9月以来である。街の様子は少しずつ変わっているのが分かる。埋立地であったところにビル、道路ができ、車、人の流れが変わってきている。毎日変貌しているのがシンガポールである。但し、その中で古いシンガポールの建物を残している。ラッフルズホテルもその一つである。30年以上前に新婚旅行で来た時とほとんど変わっていないのは嬉しい限りである。今回、滞在中誕生日を迎えることになった。その日は、友人に夕食を御馳走になった。シンガポールで一番高いビルの一つであるリパブリック プラザの最上階のレストランである。ユニークな形をしたマリナベイサンズホテルを遥か下に見ながらシンガポール港の夜景での食事は格別であった。良い思い出を作ってくれたやさしい友人に感謝している。

シンガポールのタクシー事情で気が付いたのは、タクシー料金は、距離でいえば3km~5km、シンガポールドルで$3.00~$5.00(240円~400円)位である。タクシー代はそんなに高くない。 しかしタクシーを捕まえることが難しい時間帯があることが分かった。昼過ぎ、雨時、ラッシュ時は極力避けるようにした方がよい。2時半の約束で、ホテルのタクシー乗り場に2時前に行くとそこにはすでに5人のタクシー待ちの人がいた。結局、30分以上待たされた。お客さんにお会いできたのが2時50分、20分の遅刻である。お客さんの場所はホテルからタクシーで10~15分の距離である。タクシー運転手曰く、昼過ぎの時間帯は運転手が昼食をとるため、街を流すタクシーの数が減るということである。雨時は街でタクシーが拾われてしまうため、ホテルに来るタクシーが少ないとの返事。ラッシュ時は言わずもがな混雑でタクシーの稼働率が悪くなるためということが分かった。

それから小生が泊まったホテル(4星ホテル)の室内清掃の人達が全て英語がしゃべれるわけではない。シンガポールのホテルで働くためには英語は必須ではないかと考えたが、かなり緩やかに海外から労働者を受け入れているようである。多分、国内で嫌われる3Kをやってもらうためであろう。日本ももっと海外労働者の活用を考える必要がある。いろいろな意味で国に活力を与えると考える。

お客さんとの交渉次第では、何が起こるかわからないので、シンガポールに日曜便にはいり、平日、5日間丸々仕事に充て、帰りの便を金曜日の真夜中、土曜日の朝、0:45発の便を利用した。到着が朝の9時なので所要時間6時間を睡眠に充てればその日が有効に使えると考えた。思った以上に利用する人は多くほとんど満席の状態であった。 いつも慣れているエコノミー席なので全然問題ないと考えていたが、思ったような睡眠の爽快感は得られなかった。これも慣れればもっと快適に利用できるかもしれない。実際、平日シンガポールで仕事をし、週末は日本で過ごすことも可能ではないか?シンガポールも通勤圏内になってきている。

円安は$1.00=JPY100前後に収束感がでている。日経平均株価はここにきて外人投資家の利益確定売が出て大きい値動きをしている。日本企業は$1.00=JPY80でも利益を出せる体質を作り上げている。上場企業の52%が無借金経営で、財務体質はしっかりしてきている。その手元資金は66兆円になる。権威ある国際研究機関によると2013年の日本の競争力は前年の27位より24位にランクが上がった。あとは企業が自信をもってその資金をどのように成長戦略、海外戦略に有効に使うかである。

アベノミクスの効果は、第一の金融政策は円安、株高では今のところ成功であろう。第二の財政政策は、第三の成長政策を助ける金の使い方をしてほしい。一方、日本の製造業の国内設備の老朽化の問題がある。日本での雇用が確保、創造されるような将来性のある産業・企業に設備投資を促すような減税、特別融資をお願いしたい。日本の貿易収支の赤字の原因は原油やLNG等のエネルギー資源の輸入である。日本近海に日本が必要とするエネルギーの100年分が眠っているといわれるメタンハイドレードの実用化にできるだけ早く目途をつけることである。 風力、太陽光、地熱エネルギー、バイオエネルギーは世界的な観点から見ても将来にわたり必要であり、日本が率先して技術開発し、世界に貢献していかなければならない分野である。IT関係企業も昔の力、勢いを取り戻す努力をすべきである。これからもIT企業が世界の流れを変えるのは間違いない。

米国の景気は順調に回復している。株の値上がり、住宅市場の回復、緩やかであるが失業率も下がってきている。中国経済は国内過剰生産設備の調整期に入り、次の飛躍に備えて一服気味である。一方、アジアは元気である。フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナム。今年の第一四半期のGDP成長率は4~7%を超えている。日本はこれらのアジアの国の成長を手助けし繁栄を共にする道を選ぶべきである。

各船会社はコスト削減に努力してきた。巨大コンテナ船もその一環である。しかし巨大コンテナ船のスペースを埋めるために、運賃を下げる。さらに、コストを下げるためにもっと大きな巨大船を造るという悪循環に陥っている。どこかでこの悪循環を断ち切る必要がある。船会社が一番必要なのは運賃の修復である。船会社は米国向け荷主企業と5月から1年間適応契約料金(SC)で12年度に比べ5~10%の引き上げで決着をみた。しかし、値上げが目標値を下回ったため、太平洋航路安定化協定(TSA)メンバーは7月1日発効で西岸向け$400/FEU,その他向け$600/FEUの運賃値上げを実施する。

中国の新造コンテナ在庫は、100万teuを超え、値段も$2,100 per 20fまで下がつているようである。船会社は既存フリートでやりくりできる状態で、リース会社の長期リースを工場より引き取る状況にはない。余剰在庫は極力返却しているため、リース会社のデポ在庫は増えている。多分稼働率が90%を割り込んでいるリース会社も出ているのではないか。いずれにしてもこれからの夏に向かって中国、アジアから北米、欧州向けの輸出が例年通り戻ることを期待したい。

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