中国では9月29日(土)から8連休の国慶節のゴールデンウイークに入る。例年国慶節前の輸出の駆け込みラッシュが見込まれる。但し、今年はコンテナ需給バランスがとれているようで、船会社の持ち帰りのコンテナ、一部長期リースの消化分で国慶節前の駆け込み輸出は乗り越えられそうである。欧州経済の不振により、9月の中国からの輸出は例年の勢いは無い。コンテナは例年11月から冬場のコンテナ不需要期に入る。そのため今年、船会社はその時期を1ケ月早め、減船、サービス航路の休止、更なる減速航行(13ノット以下)を実施し苦境を乗り越えようとしている。
その上、9月は船会社にとってかなり頭の痛い月になるであろう。それは米東岸港湾労組(ILA)が、10月にストに入る可能性が出て来たからである。現在、使用者団体(USMX)と労働協約の改定期限の9月末までの労働協約改定に向って交渉をしている。ここに来てほとんどの船会社がスト回避は難しいとみている。ストが起こった場合、米国東岸及びガルフ沿岸の揚げ積みが止まることになる。その量は北米輸出入の貿易量の大体3割を占める。船会社としてはその物量を北米西岸から持ち込むことも考えられるが、既に北米西岸の港湾設備、北米横断鉄道の輸送能力に限りがあり全量を扱うことは無理がある。そのためストが起こるとかなりの量のコンテナが滞留、それが更なる混乱を引き起こすことが予想される。船会社はそれを見込んで既に手を打ち出している。米国内陸向けの一部引き受け中止やサーチャージ(例として、$800 per 20f, $1,000 per 40f or $1,000 per unit)の設定を決めている。またサーチャージは北米西岸に限定に止まらず、米国全港湾の出入りする全コンテナに適用される見込みである。いずれにしても船会社にとって予想出来ないコストを見込まざるをえないため、このサーチャージはコストの一部負担として避けることができないのが現状である。
10年前、2002年9月27日から12日間に及んだ西岸港湾労働者(ILWU)による北米西岸29港の封鎖をご記憶の読者も多いのではないか? ブッシュ前大統領がTaft-Hartley 法を適用しスト解除を行った。船会社はスト中、北米から自社コンテナの持ち帰りができなかったため、中国、アジアでのコンテナ需要に応えられなかった。その結果、需要地、中国、アジアでコンテナ不足の大パニックが起こった。その時の教訓もあり、米東岸港湾労組(ILA)の労働協約改定の交渉に目が離せない。
船会社は運賃修復にある程度成功している。フランスのAXS-Alphalinerによると、今年に入り 93万teuの船腹量の増加(世界総船腹量の5.7%に相当)。これは年初と比較すると30%増となる。この30%の船腹量増加を減速航行で取り込み運賃維持に努めている。航海速力14ノット以下で運行。2007年の運行期間との比較で見るとその違いが良く分かる。
中国のコンテナメーカーにとっても深刻な現状に変わりは無い。工場在庫はまだ40万teuもあり、その上、リース会社からの注文が止まっている。新造コンテナ価格は$2,300 per 20f に下がり、コンテナの鋼材の値下がりを受けて、実際に発注をする場合は、$2,300 per 20fを切ると言われている。しかし現在、各大手リース会社も2~3万teuの工場在庫を抱えて困っている。リース会社の稼働率は船会社からの長期リースのコンテナの返却で、90%に近いところまで下がって来ているようである。船会社の需要が冷え切っている現状では値段が下がっても、投機的新規発注は控えざるを得ない。
悲観的な話ばかりではない。9月7日に中国政府が公共投資1兆元を認可したとのニュースが飛び込んできた。それらは、鉄道、港湾、高速道路などのインフラ整備への投資に充てられる。その効果に期待したい。リーマン・ショック時に中国政府が行った4兆元の景気対策が世界の経済回復に大いに寄与したことは記憶に新しい。
この厳しい環境下、邦船3社もコンテナ部門の2013年3月期は黒字を見込む。運賃の値上げ、コンテナ船の減速航行による燃料費の削減による業績回復により、日本郵船は15億円、商船三井が30億円、川崎汽船30億円の経常利益を見込んでいる。
米東岸港湾でのストライキが起こる場合、現状の工場在庫を掃くためにリース会社にとってプラス要因となる。それに船会社のコンテナ船の一層の減速航行もコンテナの使用量の増加に繋がるためプラス要因となる。中古コンテナの世界的な需要の底辺の広がりは、今後もリース会社、船会社の退役コンテナの捌け口として彼らを支える。引いてはリース会社が船会社の自社コンテナを買い取るリースバック方式は現在では船会社に対して大きな資金的支柱になっている。リース会社との相互依存関係を高めている。この関係は当分崩れないと考えられる。