気象庁発表によると6月9日(土)に関東、甲信越、北陸地方が梅雨入りした。一応例年並みの時期である。これから約1ヶ月、7月始まで雨の季節である。曇天、雨の日が多く晴れ間が少なくなり心も湿りがちである。但し、春の季節に終止符を打ち、夏を迎えるための準備期間と考えるとこれまた楽しい。梅雨は日本の稲作農家になくてはならない季節である。我々は自然の変わり目を季節で知り自然を享受してきた。我々の生活自体が自然の一部であることを知ると、庭先の雨にぬれた鮮やかな紫色のアジサイが愛おしく見えてくる。
上海輸出コンテナ運賃指数(CCFI)によると、コンテナ船の平均消席率は、欧州航路が85%, 北米西岸、東岸航路はそれぞれ90%を維持している。但し、待機コンテナ船の数が運航コンテナ船の2.6%、251隻、41万teuあり、今後の荷動き如何では船舶供給過剰感が船会社を運賃競争に走らせることも考えられる。多くの船会社が夏場のコンテナ需要期に向けてPeak Season Surcharge(PSS)の導入を予定しているが、コンテナ運賃値上げは梅雨の曇り空と同じですっきりしない。ちなみに現在の中国の新造コンテナ価格は先月の$2,700 per 20fとほとんど変わらない。
邦船3社の強みは、コンテナ船だけでなく、ばら積み船、タンカー、LNG船、自動車船と多角化している事である。日本郵船は2013年3月期の純投資額を2300億円から500億円減額し1800億円、商船三井は1100億円から243億円減額し857億円、川崎汽船は832億円から332億円減額し500億円にそれぞれ圧縮する。新規投資の見送り、保有船の見直し、リースの活用に力を入れる。それに船舶の耐用年数(特にLNG船,大型タンカー)の延長で減価償却費軽減により営業増益を確保する。一方、自動車船が好調で、商船三井は2012年度の完成車輸送を前年度比16%アップの過去最高422万台、川崎汽船も12%アップ、370万台、日本郵船は14%アップの332万台を見込んでいる。
邦船3社の歴史は長く、今年で商船三井が134周年、日本郵船が127周年、川崎汽船も93周年を迎える。邦船3社のように長い歴史を誇る船会社は世界広しといえどそう多くは無い。世界一のコンテナ船隊をもつマースクラインも創業は1904年の老舗である。勿論ただ古いことが良いことではないが、その歴史に刻まれた熾烈な競争の中で勝ち抜いてきたたくましい生命力のDNAはその中で働く人々に受け継がれていると確信する。世界のリーダーであることを再認識し邦船3社に世界の海運界を元気づけてほしい。資金があればコンテナ船を安く用船し、必要なコンテナをリースしていつでも船会社を始められる。しかし、百年の歴史を持つ船会社は百年経たないとできないと言う事実。それは信用、信頼、実績を基にしたリーダーの証である。リーダーは情報の発信者であると確信する。それを百年のDNAを引き継いでいる邦船3社に再度望みたい。情報は待っていては得られない、情報を取りに行き情報の発信者になることが必要である。非常に簡単なことである。あらゆる人が興味を持っていることに対して情報の発信者になれば人は寄ってくるものである。お客様から積んでくれと頼みに来るはずである。情報の発信者になるにはとにかく世界のいろいろな会合にまず首を出すことから始めたらどうであろうか。COA(Container Owners Association)もそのひとつである。10th COA Members Meeting が6月12~13日とソウルで開催されているが、そこに日本の船会社の名前は無い。ルールは人が作るものである。必要とする人が集まると自然とルールが決まり、それがいつの間にグローバルスタンダードになるのである。
安いは別にして、早い確実はコンテナ船社のモットーである。勿論既に邦船3社はグローバル企業であるので、本社機能を何処に置こうとかまわない。自社だけが生き残るのだという利己的、内向な考え方を捨てて、世界の船会社と協力し、世界の荷物を効率良く運ぶ方法を見つけ出すことに専念して欲しい。そのために世界の規格、ルール設定に参画して欲しい。日常の仕事に追われその余裕もないと言うかもしれないが、時間は何とか創りだせると確信する。世界の規格、ルール設定に参画することでもっと邦船の存在意義が出て来る。良い意味で邦船3社は切磋琢磨すべきである。世界に邦船の仲間を増やすことである。世界に多くの仲間を増やすことが結果として生き残る道であると考える。競争に勝つとは一人勝ち残ることではなく、多くの仲間と共存するということである。
商船三井が7月から定期船の本部を香港に移管する。川崎汽船も4月に大部分をシンガポールに移した。日本郵船は2年前に定期船部門を完全にシンガポールに移管している。日本に事務所を構えるコンテナリース会社にとっては邦船の存在がますます遠くなる。邦船に対して各リース会社のアプローチが興味深い。昔の様なコンテナリース会社同士の熾烈な競争は無い。寡占化の中である程度住み分けされている。その中で日本のTextainerの活躍は目覚ましい。日本郵船を除き商船三井、川崎汽船にそれぞれ100,000teu以上の長期リース、スポットリースの実績を誇り、川崎汽船に至ってはそのシェアNo.1である。台湾、韓国をカバーしその日本事務所の守備範囲は広い。他のリース会社が東京に事務所を置くが彼らは横浜に事務所を構えて久しい。事務所経費削減のためでもあるが時代を先取りしている。他のリース会社と一線を画し、常に独自路線を貫き、現在は世界一のコンテナリース会社に成長した。運用数は2.5百万teuを超える。二位との差が百万teu以上あるメガコンテナリース会社である。2007年にニューヨーク証券取引所に上場も果たした。上場後、彼らの存在感はさらに大きくなった。今一番注目に値するコンテナリース会社である。今後の動きに目が離せない。