5月は木々の新録が輝きを増し、一年の内でも一番自然に力強さを感じる時期である。この美しい自然の力強さは被災地の東北地方にも遅ればせながら届いていることであろう。日本人は自然をそのまま受け入れ、自然とともに生きて来た。人間もその自然の一部であると考える。そうした日本人の自然感は四季の自然が何千年の時間をかけて日本人のDNAを形作ってきたのである。それは我々が住んでいる日本が地震国でいつまた巨大地震、津波の襲われるかと言うことを改めて認識させた。その自然の破壊力は我々の想像を超えている。我々人間がコントロールできると思うのは間違いである。
津波で被害を受けた福島の第一原発はまだ完全に制御しきれていない。福島原発からの放射能漏れは近隣諸国に迷惑を掛けている。我々は日本を見捨てることは出来ない。だから我々はこの問題に責任を持たなければならない。原子力は人間が造り出した理想のエネルギーかもしれないが、日本は全世界の10%の地震が起こる地震国である。原子力発電所は日本には不向きである。日本に50基以上の原発が稼働している。毎年莫大の放射能廃棄物の処理にも困っている。菅首相は、その中で30年以内に震度6以上の地震が起きる確率が84%ある静岡の浜岡原発の停止を決定した。その英断にエールを送りたい。
その結果、今年の夏のピーク時の電力供給力不足が7~10%被災地及び東京で予想されている。政府はその地域の企業、家庭に一律15%の節電目標を求めた。企業も家庭も協力的である。各企業は自主的、防衛的に夏場の電力不足で操業停止を避けるために今から始業時間を1時間早めたり、不必要な電気を消し、6月からの季節の衣変えを1カ月先取りし5月に実施し、ノーネクタイでやっている。5月のゴールデンウイーク中も休ます工場を動かし、その分、夏の電力不足の時に工場の稼働を止めたり、自家発電設備を増やしたりしている。コンビニは全ての照明をLEDに変えている。デパートも照明を落とし、電車も運行本数を減らし、各駅はエスカレータ運用を最小限しぼった。家庭では家電の買い替えは省エネの家電を買う。このことは日本人の協調性を象徴している。
一方で、政府の反応は鈍い。政治決断できず民間任せである。廃棄物と化した大量の自動車、船舶の所有者を確認しながら撤去、処分作業を進めている政府である。平常の廃棄物量の16年分の瓦礫の量は速やかに処理すべきである。既に2カ月が経つのにほとんど手が付いていない現状を見ると歯がゆい。日本政府に望まれる事は迅速な政治決断、行動である。これは世界の国と交渉する時にも要求される。
世界の株式時価総額は4月末時点でリーマン・ショック直前を2割上回るまで回復したとのこと。日本株も海外からの投資マネーが入ってきて一時的に10,000円台を付けたが現在は9,700円台で推移している。
被災地の復興は日本の再生のカギを握る。最後は政治決断しかない。国の栄枯盛衰は政治である。多くの日本の企業は世界で活躍している。赤字を出せば経営陣が変わり、企業継続のためにいろいろな知恵を出しあって日本に貢献している。是非日本の政治も内向きで無く、世界の舞台で影響力を出してほしい。そうでなければ世界を相手に奮闘している多くの企業に申し訳が立たないのではないか。
日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船の11年3月期の結果は次の通りである。
11年度 | 12年度 予想 | |||||
船会社 | 売上高 | 増減 | 経常損益 | 売上高 | 増減 | 経常損益 |
日本郵船 | 4,621 | 22% | 302 | 4,850 | 5.00% | 50 |
商船三井 | 5,866 | 26% | 398 | 6,200 | 5.70% | 220 |
川崎汽船 | 4,450 | 22% | 290 | 4,800 | 7.90% | 0 |
Remark: 単位は億円
11年度は円高、燃料高の中アジアの好調な荷動き、運賃修復が貢献。
12年度は燃料価格の高騰、過剰スペース、運賃の下落を予想し減益予想。
過去2年改善されてきた欧州向け運賃交渉(SC)で09年/10年に引き渡しが延期された大型船の投入のスペース増のため下落した。10年末で4,989隻(前年比5%増)積載量は10%増で、今年1-5月累計で688,000teu のスペース増加をもたらした。今年の新造船引き渡しは合計で1,350,000teu を見込み、船舶の伸び率は8.6%と予想する。
一方、ユーロ圏の経済成長率は年率3.3%を見込み、輸出が好調な北部欧州がユーロ圏の経済を牽引している。年後半物流が旺盛になる可能性もある。米国もドル安で輸出が改善し個人消費が伸びる可能性も期待できる。
国名 | 4月の米国向け輸出 | 前月比 |
日本 | 50,341 teu | 13.1%減 |
中国 | 621,738 teu | 26.9%増 |
韓国 | 119,567 teu | 4.0%増 |
香港 | 86,941 teu | 9.0%増 |
台湾 | 72,603 teu | 1.0%増 |
4月末現在の中国新造コンテナ工場在庫は前月比44%増の600,000 teu台に増加。製造ラインに少し余裕が出て来て新造コンテナの価格は6月分で$2,850 per 20fが出ているとのこと。 日本の震災の影響は少なからず荷動きに出て来ているようである。日本の船会社が昨年の秋口にリース会社と決めた長期リースのピックアップに遅れてが出ている。リース会社も稼働率を0.5%~1%落としているが、まだ97~98%の高い稼働率を維持している。
中古コンテナ(ドライ、リファー)は震災復興のための資材保管用として需要が出て来ている。外地から手を尽くして送り込んでいるが追いついていない。 日本での値段が中国、韓国に比べ安いことも日本へ回る数を少なくしている。時間的に余裕が無い買い方が多いためドレイジ費用がかさんだりして高い買い物をしているようである。
5月のコンテナ市場は停滞気味であるが、6月に入るとまた潮目が変わるように思う。船会社は古いコンテナをまだかなり使用している。それはコンテナ価格が上がっているために購入価格が安かった古いコンテナ、自社コンテナ、リースコンテナ(リース料が安い)を含めてを返却できないでいる。しかし修理代等の運用コストはそれなりに高くなっているはずである。最低限の修理で延命されたコンテナが近いうちに大量に中古市場に出て来ることは予想できる。
コンテナリゼイションが始まって40年以上が経つ。Simple is bestでコンテナ構造にほとんど変化は無い。しかしここにきて使い易さを求めた現場の声を反映しコンテナ仕様に変化が出て来ているように思う。FBC社(Future Box Corporation)のHybrid Open Top Container, Sliding Door Containerはその象徴的なコンテナで有る。コンテナ仕様の変更が特定の荷主、重要な荷主を取り込むことで他社との差別化を図り、単純な運賃競争から一歩抜け出せるはずである。その変化に荷主が気付くのにはあまり時間は掛からないかもしれない。しかしいつの世でも最初は新しい事にだれでも慎重で有る。ましてや莫大な費用を初期投資している船会社にはかなりの抵抗が出て来ると予想できる。但し、その動きが一旦動きだせば誰にも止められないし船会社の変わり身も早いと考える。