コンテナ市況レポート 2010年11月

  • by 中尾 治美

11月に入ると大体来年の事が大まかに見えてくる。それでは、来年をどのような年と見るのか?
米国 ― 米GDPの7割を占める個人消費に支えられた緩やかな回復基調。
昨年経営破綻したGMが1年後の今年に再上場を果たすのは米国の底力、柔軟性の象徴である。また、オバマ大統領は2年後の再選のために全力を上げて景気浮揚に取り組む。
欧州 ― EUの結束力は捨てたものではない。
アイルランド、ポルトガル等の財政難の火種を抱えるも、持ち前の共同体の結束で難局を何とか乗り切る。報道されているほど深刻な状況にはならない。
中国 ― 2011年は変革の年であるが9.6%の成長。
外資の優遇税廃止。内需拡大で元の切り上げ圧力の回避、沿岸部と内陸部の経済格差解消の賃上げ容認。大国意識の台頭と国際摩擦の調整。政治改革と民主化の問題。
韓国 ― 李明博大統領のリーダーシップは健在。
EUと米国の自由貿易協定(FTA)は韓国製品に競争力を与え、11月11日にソールでG20の主催は、韓国の経済力、政治力、外交力を世界にアピールした。
東南アジア ― 着実な経済成長は東南アジアの時代を実現する。
中国に見習い外資企業を誘致し経済発展を図る。中国の覇権主義、自国優先主義を避けタイ、ベトナムに世界工場がシフト。
日本 ― 国としての存在感希薄
自民党から民主党に政権交代し1年以上が経っても、政治屋の政治から抜け出せず、経済の閉塞感は変化なし。 三流外交で世界の流れから取り残されて自信を失っている。中国にGDPで2位の地位を引き渡し、政治、社会はガラパゴス状態で有る。

来年は、2010年より経済成長の勢いは減速する。世界経済の米国頼みに変化無し。中国は引き続き経済的存在感を深めるが、中国政治で世界経済の安定、信頼与える影響は大きい。一方東南アジアの存在感は大きくなる。来年は飛躍の年である2012年の準備の年となるであろう。その意味であまり大きな変化は無いのではないか?

2010年の定期船会社の収益は大幅に改善し、今期は黒字を確保している。一方、中国からの欧米向け運賃は下落し始めている。12月から本格的に始まる不稼働期の冬場に、いかにして運賃の大幅な落ち込みを押えて行くのがカギ?今一度、船会社全社で知恵を絞り、適切な船腹削減、サービス網の見直しでコストを省いて不当な運賃値下げ競争は避けたい。世界経済はコンテナ輸送で成立。どんな状況でも利益確保ができる船会社への変貌、体質強化が望まれる。

邦船3社の上半期(4月~9月)は日本郵船、商船三井とも800億円の経常利益、川崎汽船は400億円を稼ぎ出している。但し、川崎汽船を除き邦船2社は、定期船から軸足を移しつつあるように見受けられる。しかし、定期船部門の縮小はロジスティクスを目指す会社であるなら避けてほしいものである。日本流のきめ細かいサービスを厳しい競争の中で上手く活かしてほしい。それを期待している日本の海外進出企業は多いはずである。

外船会社で、特に注目したいのは台湾の船会社、Evergreen Marine Corp.で有る。Evergreen は実に興味深い船会社である。世界一周航路を逆方向同時に始めるユニークなコンテナ船の運用を初めて試みた。本船スペースをコンテナの保管場所と見立て、本船の空きスペースの有効活用とコンテナを需要地に速やかに運ぶ、効率の良いコンテナオペレーショを始めた外航海運会社の革命児である。残念ながらその政策は現在休止しているが、世界の船会社のリーダーとしての独創性、先見性を持ち合わせている。そのEvergreenがまた、動き出した。韓国のサムスン重工業に7月、8,000teuのコンテナ船を10隻(2011年引き渡し)、11月にまた、8,000teuの船を追加10隻(2013年までの引き渡し)と立て続けに発注した。その先には、今後のマーケットの確かな動向が見据えられれているはずである。 他の台湾船社、Yangming、Wan Hai Lines, T. S. Line もそのグローバル経営のセンスの良さで着実に成長し、今後台湾船社の動向は注目に値する。

中国のコンテナメーカーのコンテナ価格の設定は、製造ラインが埋まれば値段を上げ、一方、埋まらなければ値段を下げるやり方を取っているように見受けられる。製造能力を以前のように大幅に増やすことは、現在の状況かからは出来ない。労働者が3K (汚い、きつい、危険)を避けるため必要な労働者を確保できないのと、中国政府が08年に労働契約法の導入で、期間を区切った雇用は2度目の更新時に解雇か無限の雇用契約が義務付けた。また、中国の地方政府によるエネルギー消費量削減目標達成の電力供給削減が鉄鋼産業に影響を与えている。当面年内いっぱいの規制のため年明けには電力供給問題は解除されるものと考えられる。しかし、どうも、2011年の旧正月、2月3日までラインが埋まったことで、製造価格も$2600台に値上がりしているのが現状。そのため旧正月後の価格がどうなるのか注目するところではあるが、もし船会社、リース会社が注文を入れると値段は上昇基調となることは避けられない。

各コンテナリース会社の稼働率は相変わらず高く、95~98%を維持している。ほとんどが長期リースでの運用のため稼働率が大きく下がり、在庫を抱えることは当分ない。全世界で動いているコンテナ総数、27,000~28,000teuの50%近くがリースコンテナである。リーマンショクの2008年から過去2年、船会社、リース会社は賞味期限切れのコンテナを修理しながら使用し続けて来ている。しかし必ず物理的に使用できない時期が来る。当面コンテナの中古市場は相変わらず高値で推移している。中国での販売価格は、$1,800~1,900 per 20f, $2,800~2,900 per 40f, $3,100~3,200 per 40f Hi cubeである。 需要地では地元の中古販売業者が価格協定を結び安売りを避けているようである。リース会社は高値で売れる場所では売却し、コンテナ売却益を出している。船会社はどうしてもコンテナが無いと商売にならないためか、また、コンテナの需要地でコンテナの確保が保証されない現状下では、長めにリースコンテナを使用する傾向が見受けられる。ここは思い切ってコンテナが無ければ集荷しないと言う方針に切り替えてみてはどうであろうか。賞味期限が切れている自社コンテナを高値で売れる場所で躊躇せず処分し、コンテナ売却益を確保することで、不必要なコスト、保管料、修理代、運搬費用等々の削減でかなりのコストが軽減できるのではないか?また、この方法を採ることで、回り回って運賃の下落に歯止めが掛かるのではないか。

今年の確定新造船引き渡しは、142万teu を予定している。これは08年の157万teuに次ぐ過去2番目の多さである。但し、実際は今年引き渡しが予定されていた新造船、65隻、43万5,000 teuが来年に延期、遅延されたため、2011年は140万teuの新造船が出てくる。はたしてこれを十分運用するだけの荷物が出てくるのか?出てこないとなると船どころか現在抱えている不稼働のコンテナも行き場を失うことになる。そのためにも賞味期限の切れたコンテナの処分を、中古市場で高く売れるうちに処分することを特に船会社に勧めたい。一方、蛇足ではあるが理論的には、コンテナは高い時に購入しようと、安い時に購入しようと、毎年ある程度の量のコンテナを入れ替えて行くと、例えば10年間の平均では購入価格は10年間の平均購入価格になるはずである。とすれば毎年ある一定のコンテナを購入するなら高い安いはあまり問題にならないはずである。また、毎年一定のコンテナを購入し、使用コンテナの平均年齢を若く保つことが、船会社、リース会社にとって重要ではないか? 購入年で歪にゆがんだコンテナ構成を避け、船会社は荷主、リース会社は船会社からの品質に対する評価は高くなるはずである。但し、リース会社はかなり投機的にコンテナを購入していかざるを得ないために、出来るだけ安い時に大量に購入しようとする力が働く。購入したい時に大量に購入できるかどうかは、リース会社の資金力、其の時に勢いが有るか無いかと言うことになる。また、マーケットが悪いと判断すれば投資資金が有っても購入を見送る決断も必要である。

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