邦船3社の2010年第一四半期(4-6月)の定期船の決算が発表になった。
売上高 前年同期比 経常利益 前年同期比
日本郵船 1,231億円 +249億円 103億円 +289億円
商船三井 1,464億円 +425億円 85億円 +286億円
川崎汽船 1,123億円 +261億円 89億円 +289億円
運賃修復(南北航路の収益改善を含む)、積み高増、減速航行、船隊の適正化等のコスト削減の貢献で黒字化した。通期業績予想についても不透明感はあるものの大幅な増収増益を期待している。定期船部門のシェアが邦船社のなかでも一番大きい(4割を超す)川崎汽船も早くから多角化を図ってきた。邦船社の強みは、オールラウンドプレーヤ―であるということである。バルク、タンカー、カーキャリアー等々多角化が進んでいてどんな状況にあっても強いと言える。その結果、リーマンショックからの立ち直りも他国の船会社より危機脱出は早かった。その上、リース会社にとつてありがたいのは現状でも支払いは、30日以内、長期リースは前払いしてくれる。そのため、昔からリース会社は争って邦船社と取引をしようとしてきた。 一方、邦船社はコンテナの品質についてもそれなりのこだわり(邦船スペック)をもっている。 このことは業界では周知の事実である。特にコンテナが生産される前の部材、生産中のインスペクションで妥協をしないため、コンテナ製造業界では煙たがれる存在である。それ故、古いコンテナの状態も良いため、邦船社からの中古コンテナの売却は積極的に買いたいものである。残念ながら、現在、新造コンテナがかなり高くなっているために邦船社がリースコンテナに頼り、買い控えているのは残念である。 また、邦船社は使用しているフリートの平均コンテナエイジング(コンテナ年齢)にもこだわり、できるだけフリートを若く保ち、荷主に若いコンテナを提供し他の船会社との差別化を図っている。そのため、コンテナのリタイヤ―年齢も従来は、10~11年前後のサイクルで行っていたが、今年の異常なコンテナの需要に遭遇し、長期リースの満期切れのコンテナも継続して使用せざるを得ない現状であるため、使用している平均コンテナエイジングは需給バランスがとれるまで、あるいは邦船社が自分で新造コンテナを発注出来るまではその使用年齢はしばらくは高くならざるを得ないであろう。
リース会社の発注動向は、Lloyd’s ListのJuly 15号によると、各リース会社の2010年央の所有本と2010年のFirst Quarterの発注量は次の通りである。
c) | d) | |||
リース会社 | Fleet数 | 2010-1H | 2010 予想 | Fleet数 |
Mid 2010 | 発注量 | 総発注量 | End 2010 | |
1) TEX | 2,215 | 70 | 133 | 2,245 |
2) FLO | 1,610 | 50 | 95 | 1,632 |
3) TRI | 1,580 | 350 | 286 | 1,644 |
4) TAL | 1,100 | 100 | 190 | 1,143 |
5) GES | 900 | 40 | 76 | 917 |
6) CAI | 780 | 25 | 48 | 791 |
7) CRO | 635 | 15 | 29 | 641 |
8) GOLD | 500 | – | – | 500 |
9) SeaCube | 420 | 15 | 29 | 426 |
10) Dong Fang | 360 | 30 | 57 | 373 |
11) UES | 240 | – | – | 240 |
12) Beacon | 240 | 90 | 171 | 279 |
13) Other | 760 | 45 | 86 | 779 |
Total | 11,340 | 630 | 1,200 | 11,610 |
Remark: a) Lloyd’s List dated July 15, 2010による。 b) teu per 1,000 c) 2010 予想総発注量120万teuとし、各リース会社の発注量は当社予測値 d) End 2010予測総数、11,610万teuに基づき各リース会社のFleet数は当社予測値 |
Llyd‘s Listは2010年の年間を通したリース会社の総発注量を120万teuと見込んでいる。船会社が80万teuで全体で200万teu。リース会社の比率は60%となる。一方55万teuが船会社、リース会社のフリートから消え、2010年末の総Fleet数を2,764万teuと予想する。
今年はさておき、今後仮に毎年10%前後, 200~300万teuのコンテナが中古市場に出てくることになると頼もしい限りである。船会社の運用個数が安定しだすと、新造コンテナとの入れ替えで中古市場に出てくるコンテナの数は今年の1年の反動を含めて、かなりの量増えると予想される。現在、コンテナメーカーは1か月前にならないと製造価格を出さないようであるが、どうしても発注量確保したいリース会社は、製造価格がメーカーから提示される前にラインを押えているようである。しかしながら、第4四半期以降はコンテナ価格は現状より下がると予想されている。船会社の発注は案外早くやってくことが予想される。
日経新聞は、2010年度の日本の全産業の海外設備投資は前年度比、35.1%増、2兆7,642億円となり、海外での現地生産が一段と進み、上場企業の2010年4~6月期決算の収益は前年同期比の5倍の増加で新興国需要の拡大がこれに寄与していると報じている。行き場を失った海外の政府系ファンドが円買い、国債を買い円高に振れている。これは日本からの中古コンテナに対する需要を喚起するもので、その上円高となればますます日本での中古業者、エンドユーザーにとっても朗報であろう。
今のところ、中古マーケットに売りがほとんど出てこないため、アジアで船会社、リース会社から出る中古コンテの入札において、中古業者同志が無理な競争で値を釣り上げたり、売りが出ると投機目的で売却コンテナを見境なく手に入れるような状況が見受けられる。投機的な中古業者からの購入は極力避けるべきである。また、船会社、リース会社から購入する時でも、異常に古いコンテナ(15年以上?)を購入するのは極力避けるべきである。どうしても購入したい場合は、現物を一本一本見てから判断とすべきである。現在のコンテナの寿命から言って、そんな古いコンテナが国際間輸送の何の問題も無く使用に耐えうる(Cargo Worthy Condition)とは考えにくいからである。多分ボロボロの状態で、だましだまし使用していたとしか考えられないので購入すべきではない。中古業者として、購入するコンテナの品質が分からいものは避けるべきである。 コンテナ年齢が一つの目安になると思われる。自分が扱う商品(中古コンテナ)についてある程度の自信、誇りを持って販売すべきである。 少なくとも、誰が使用し、何年物、外観、ダメイジ状況を把握した上で売却に供すべきである。そうでなければ、中古コンテナ売買がコンテナ産業の一環としてこれから大いに成長してくためには、安かろう悪かろうの無責任な態度では、その地位も危なくなる。