好調な輸出貨物増加に伴い積み残しが生じるようなスペース不足を背景に船会社はアジアからの2010年度の運賃値上げ交渉に臨び、4月からの欧州は3割、5月から米国西岸は6割、北米東岸は4割の値上げに成功した。それでも北米運賃はリーマンショック前の9割まで回復に止まっている。 此の値上げは、各アライアンスがコンテナ船の数を減らしスペースを調整した結果がもたらしたものである。一方、各船会社はスペース解消のために係船していた船をこの半年で100万TEUも投入している。その船舶数はこれからも増加の一途である。 しかし、懲りないのが歴史であるのかもしれない。 荷物の増加にくらべ船のスペースの投入が多くなり、せっかく値上げに成功した運賃をまた運賃競争で下げるようなことは極力避けるべきである。
船会社はもう一つの問題を抱えている。それはコンテナ船の超減速航行での運用である。燃料節約から始まり、リーマンショック後の新造船の受け皿、係船を減らす目的で始められた。これは不稼働船と不要コンテナを極力減らし活用する名案である。しかし、コンテナ運用面からするとコンテナの運用個数の増加をもたらす上、需要地に戻すのにかなりの時間的制約を受ける。 船会社が新造コンテナを調達しないで既存の在庫で運用しようとすると、どうしても箱回しに有る程度の目途がつくまで、需要地であるアジアでリース会社からコンテナの供給を受けざるを得ない。このことが現状のアジア(日本も含め)でのコンテナの大ショートを生み出している。リース会社のアジアでのデポ在庫を空にし、工場で長期に眠っていたリース会社の新造コンテナ長期在庫問題を解決し、さらにリース会社を新造コンテナの発注に駆り立てている。
一方、中国のコンテナメーカーは徐々に生産台数を上げてはいるものの鋼材の値上がり、工員不足、熟練工不足からくる工賃の値上がりで生産コストの予測が難しく思うように需要に応えられていないのが現状である。その結果コンテナ価格は8月デリバリーで歴史的高値である$2,800/TEUを更新し、$3,000/TEUも視野に入ってきてる。ますます船会社は新造コンテナの発注を手控え、長期リースで当面様子を見るであろう。
その反面なリース会社の力があるところは出来るだけ新造コンテナの発注量を確保しようと中国のメーカーを巻き込みリース会社どうしの確執が起こっている。リース会社は95%以上の稼働率を謳歌し、有るリース会社は97~98%の稼働率に達しているようである。コンテナリース史上始まって以来の高い稼働率である。リーマンショック前の高い稼働率をも超えている。誰が全世界を巻き込んだ100年に一度と言われた経済大不況のわずか1年半後にこのような未曾有のコンテナの大不足を想像しえたであろうか?
欧州はもう少し越し時間が掛かるにしても、米国は確実に経済回復の中にある。中国は労働争議で賃金の値上がり、中国政府の覇権主義的政策、自国企業優先主義が進出企業に不安を抱かせ、世界の工場としての経済的優位性は近い将来薄れてくると考えられる。一方、インド、東南アジア、の成長は目覚ましく、中国元の切り上げ、賃金の上昇、それに伴う労働争議の多発で工場がストプするような事態が多く見られるようになると、中国から製造業のシフトを早めることになる。台湾、韓国企業は既に軸足を中国からインド、東南アジアに移し、10年後を見据えた動きをしていると言わざるを得ない。いつか来た道で、コンテナ製造場所が、日本から台湾、韓国、中国と安い労働力をもとめてシフトしたことを考えるとこれも時間の問題である。まだ、当面は中国の優位性は続くのが、中国を中心としたアジア域内の製造業のシフトでコンテナの動きがさらに増えると考えられる。
船会社、リース会社はどうしても12~14年のサイクルでコンテナを入れ替える必要があり、どんなコンテナ大不足であろうとも中古コンテナは市場に出てくる。今では、船会社、リース会社の中古コンテナの売買益はその簿価をはるかに上回り、収益の一つの柱となって来ている。一方、中古コンテナの需要もかなり底堅いものがある。船会社、リース会社が提供出来ない返却場所、船会社が積みたくない荷物をNVOCC業者がSOCとして使用する。また、国内あるいは輸出先での倉庫使用としても適している。コンテナ価格は需給バランスの市場価格によるところが大きいが、新造コンテナの価格によって変動せざるを得ない。これからの中古コンテナ価格の動向を考えると、マーケット価格で有ると判断される場合は買いである。