目次
- 1 「America First」の裏側:支持層の期待と国際情勢の狭間で揺れるトランプ大統領
- 2 FRBとトランプ政策:パウエル議長が見据える4つの判断材料
- 3 EU130兆円の再軍備の背景とECB利下げ
- 4 中国24兆円の財政出動:民間企業が握る経済復活の鍵
- 5 前倒し輸入の落とし穴:NRF予測が示す物価上昇の連鎖
- 6 海運アライアンス再編の勢力図と運賃競争
- 7 ONEの快進撃:A格付け獲得と300万TEU戦略の全貌
- 8 コンテナ運賃はコロナ期比75%減、コロナ前比85%増
- 9 スエズ再開後の問題:リース会社は古いコンテナ売却が急務
- 10 2025年2月の新造コンテナ情報
- 11 コルビー氏の防衛費増額要求:日本の憲法改正への道
「America First」の裏側:支持層の期待と国際情勢の狭間で揺れるトランプ大統領

毎日、トランプ米大統領の話題が新聞の見出しを賑わしています。彼の真意は“America First!”、“Make America Great Again!”の2つに尽きる訳ですから、それに反することは彼の政策から外れるということになります。その良い例が、米自動車業界からの反発で、3月5日、メキシコ、カナダへの25%関税に1か月猶予期間を設けることになりました。一方、もともとは営業マンですので損得で計算されると思います。しかし関税が報復関税を生み、決して米国民及び米国経済活動に良いとは思っていないと考えます。
8年前の政権第一期目は安倍さんと旧知の仲となり、二人は性格的に馬があったのか、良い関係を築かれたようでした。当時、欧州首脳からトランプ大統領と上手くやるには安倍首相を見習えとの話があったとか?
2月28日、ワシントンでトランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と、会談した時、ロシア停戦協議の話題で両首脳が前代未聞の口論に至ったことはご存知であると思います。トランプ大統領は民主党の前バイデン大統領を良く思っていません。そのことは、3月4日にトランプ大統領が連邦会議の上下両院合同会議で2期目の施政方針演説を行った時、バイデン前大統領のことを“アメリカ史上最悪の大統領”と呼びました。そのバイデン前大統領からゼレンスキー大統領が3500億ドルの武器弾薬援助を出させたことについて非難し、その二人の親密な関係を根に持っているように思います。“坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い!”の論法で、ゼレンスキー大統領に同情を禁じ得ません。
その後、トランプ大統領はウクライナ支援を凍結したために、ロシアのプーチン大統領の思う壺で、ロシアは停戦どころか今も領土拡大に邁進しています。この点でプーチン大統領が戦略的にトランプ米大統領より一枚上手であると言わざるを得ません。トランプ米大統領には、“木を見て、森を見ず”、にならないようにして欲しいと思います。トランプ米大統領は共和党支持者、特に貧困層の支持者からの期待が大きかった故に関税がもたらす物価高で物の値段が下がらないことに対して、トランプ米大統領への不満の声も聞こえて来ているようですのでトランプ米大統領もウカウカしていられないと思います。
FRBとトランプ政策:パウエル議長が見据える4つの判断材料
3月7日、米労働省が発表した2月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から15万人増加でした。市場予想より1~2万人下回りました。失業率は4.1%で、1月より0.1%悪化しました。しかし歴史的にみて低水準にあります。平均給与は前月比で0.3%上昇しています。米国経済はトランプ大統領の関税政策で減速する可能性がありますが、まだ労働市場は安定しているようです。
一方、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は3月8日の講演で、追加利下げはトランプ大統領の関税などの通商政策、移民、財政政策、規制の4分野での政策を見定めて決めるとしています。市場関係者は次回、3月18日に予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは無いと見ています。
EU130兆円の再軍備の背景とECB利下げ

3月6日、トランプ米大統領は、NATO加盟国で国防費支出が不十分と判断した加盟国について米国は守らないと断言したため、欧州連合(EU)は防衛強化、再軍備に最大8000億ユーロ(約130兆円)の確保することで合意しました。ロシアなど域外の脅威は米国抜きには考えられないため、トランプ米大統領の防衛費積み増し要求に応えたためです。一方、それは独力でEUを守るためでもあります。しかし、EUが強力な戦力を築き上げるには10年単位の時間と莫大な費用がかかると言われています。
一方、欧州の国債市場で再軍備政策が長期金利の急上昇をもたらしています。財政支出の拡大が経済成長を促すと見られ、軍需関連銘柄を中心に株価上昇が見られました。欧州中央銀行(ECB)は3月6日、政策金利を0.25%引き下げる決定をしました。利下げは5会合連続となりました。インフレが落ち着いたので欧州経済を強化するためのものです。最新のユーロ圏の実質経済成長率は2025年が0.9%、2026年が1.2%としました。物価見通しはエネルギー高を反映し、2025年が2.3%、2026年は1.9%で推移すると予想しています。
EUの自動車産業の域内総生産(GDP)は1兆ユーロ(約160兆円)で、域内の研究開発投資の3分の1を占める基幹産業です。2024年に前年比6%減と失速したEV需要回復のために支援・補助金を拡充し、規制緩和を行い、自動車産業を救済する政策を3月5日発表しました。
中国24兆円の財政出動:民間企業が握る経済復活の鍵
中国の全国人民代表大会が3月5日、北京で開催され、2025年の実質経済活動報告の目標を3年連続で5%前後と決めました。そして一般公共予算の歳出を前年より1兆2000億元(約24兆円)に増額し、30兆元近くまで増やしました。しかし不動産不況から立ち直っていない現状、またデフレを防ぐためにも、国内需要を早急に喚起する必要があります。その解決策として、民間企業の活用が欠かせません。DeepSeekに見られるように民間企業の活躍は想像以上です。そのためにも、一層の財政出動が望まれます。
前倒し輸入の落とし穴:NRF予測が示す物価上昇の連鎖
全米小売業協会(NRF)が2月7日に小売関連の輸入コンテナ取り扱い実績と最新予想を公表しました。米トランプ大統領の追加関税、各国の報復関税の影響があるとしながらも、今年も小売り輸入物量は単月で200万TEUを上回る高水準で推移する見通しを立てています。1月211万TEU、2月196万TEU、3月214万TEU、4月218万TEU、5月219万TEU、6月213万TEUと予想しています。
但し、小売企業が追加関税の影響を抑えるために行なう前倒しの輸入は、在庫スペース不足、取り扱いコスト上昇で、物価上昇を招く要因になります。トランプ米大統領の追加関税はサプライチェーンの多様化による混乱を引き起こす可能性があります。物価上昇は米国消費者の買い控えを引き起こし、米国経済の停滞を招く恐れがあります、更には、米国輸入貨物の減少に繋がり、世界経済に大きな影響を与えることは避けられません。
海運アライアンス再編の勢力図と運賃競争
2月1日からアライアンス再編となりましたが、デンマークの海運調査会社、Sea-Intelligenceによるアライアンス間に変化が出ているとしています。北米航路ではOcean Allianceが若干シェアを落とすものの、最大シェア(35%)を維持し、ONEが主導するPremier AllianceはHapag Lloydが抜けた後も同じ市場シェアを堅持、Maersk、Hapag Lloydが構成するGemini Cooperationのシェアが最も小さいと指摘しています。
一方、単独サービスを提供するMSCは、北欧州航路と中東航路でPremier Allianceと、米国東岸航路と北米西岸北部航路でZIMと提携し、4つの主要航路でGeminiを構成するMaersk Line、Hapag Lloydより多くのWeekly便数を提供でき、より大きなマーケットシェア獲得することになるとしています。しかし、各船会社が新しい環境に適応するにつれ競争圧力で運賃下落の可能性が出て来ると見ています 。
ONEの快進撃:A格付け獲得と300万TEU戦略の全貌

Ocean Network Express(ONE)は、格付投資情報センター(R&I)により、2月12日に発行体格付けを“A”、格付け見通しを”安定的”とされました。2024年3月末の純資産は200億ドルを超え、純資産比率は約70%と高く、実質無借金の強固な財務基盤がA格付要因です。
ONEの2月1日時点のコンテナ船隊は256隻、197万1680TEUです。ONEの中長期戦略、“ONE2030”によるとコンテナ事業に250億ドル以上投資し、コンテナ船運行規模を300万TEUに拡大、2030年に38億ドルの利益達成を目指しています。今年1月末時点で、2025年3月期の税引き後利益を40億ドル3400万ドルと予想しています。
ONEは2月14日、HD現代重工業蔚山造船所で、自社保有による新造コンテナ船、1万3800TEUを、“ONE SPARKLE”と命名しました。ONEは同型船20隻を整備し、2026年までに全船が竣工します。Reefer plugを2550 units備え、環境面では、スクラバー(排ガス浄化装置)を搭載し、将来はメタノール、アンモニア燃料にも対応し環境負荷軽減に貢献します。
ONEは2025年2月時点の欧州域内サービスの配船成隻数は686隻、船腹量は約119万TEU、平均船型は1773 TEU、前年同月比3.9%増加で、欧州域内サービスで市場ランキングを9位に拡大させています。三国間サービスにも力を入れています。
コンテナ運賃はコロナ期比75%減、コロナ前比85%増
コンテナ船運賃指標(WCI) 2025年2月27日 ※Drewryより参照 | |||
航路名 | ドル/FEU | 前週比 | 前年比 |
総合指数 | 2,629 | -6% | -25% |
上海/ロッテルダム | 2,586 | 1% | -34% |
上海/ロサンゼルス | 3,477 | -11% | -22% |
上海/ニューヨーク | 4,593 | -10% | -21% |
総合指数は、コロナ期2021年9月時点に比べると75%低く、2024年5月以降最低となりましたが、コロナ前の2019年の平均水準から比べると約85%増となっています。年初から現在までの総合指標の平均値は3372ドル/FEUとなり、過去10年間の平均水準と比べて489ドル高くなっています。今後も船腹増加により運賃は下落すると予想しています。2月28日に公表したCancelled Sailings TrackerによるとWeek10(3月3日~3月9日)からWeek14(3月31日~4月6日)までの東西航路(太平洋、大西洋、アジア/欧州・地中海)は往航全体の欠航率は6%となる見通しです。
スエズ再開後の問題:リース会社は古いコンテナ売却が急務

コンテナリース会社は当面新造コンテナの購買はトランプ米大統領の関税問題の様子見となっています。2025年1月、2月のコンテナリース会社の新造コンテナ発注量は、全体の24%で、船会社の50%の半分となっています。スエズ運河の安全が確認され再開となった場合、船会社の余剰コンテナの数は半端な数ではないと考えています。その大部分がコンテナリース会社に返却される可能性があります。その対策のためにも古いコンテナの売却をできるだけ早く済ませて身軽になるように務めることが大切であると思います。
2025年2月の新造コンテナ情報
2月の新造コンテナ価格は$1850 per 20fでした。先月より$50、2.6%下がりました。1月の鋼材、木材の値下がりに加え、塗料代の値下がりが原因です。
2月の新造コンテナ生産量は、363,623 TEU(Dry: 334,906 TEU, Reefer: 28,717 TEU)でした。新造コンテナ工場残は、先月に比較して、総数で-216,206 TEU(Dry: -215,929 TEU, Reefer: -277 TEU)となりました。前月比で見ますと、総数-37%(Dry: -39%, Reefer: -1%)となりました。工場出荷数は、総数、337,976 TEU(Dry: 408,471 TEU, Reefer: 29,505 TEU)でした。
2月の新造コンテナ製造数の落ち込みは、旧正月後の需要落ち込みを反映していると考えられます。一方、出荷数は、30万TEU以上となったため、工場残数も5%近くマイナスとなりました。
コルビー氏の防衛費増額要求:日本の憲法改正への道
トランプ米大統領が国防総省ナンバー3の政策担当次官に指名したエルブリッジ・コルビー氏は、日本に対して防衛費をGDP比3%超への増額を要求しています。現在のロシアのウクライナ侵攻のように、強いものが力で弱小国を占領し、我が物顔でウクライナ領土を自国領土として拡張し、それを正当化しようとしています。日本もこの機会を失わず、日本国憲法を改革し、自衛隊を正式に軍隊と改組し、自国防衛に備える必要があるのではないでしょうか?誰も日本を守ってくれません。石破総理大臣、今、歴史に貴方の名前を残すときではないでしょうか?この機会を逃すと日本という国は50年後に無くなっているかもしれませんよ?